1ルート目 ⑦屋敷での暮らし その二
漏れ出る朝日、上質な枕。 気持ちのいい朝を迎えられた。
久しぶりにきっちり寝れた気がする。もとの世界ではオンラインゲームをやっていて夜の12時までは普通に起きていた。
「お目覚めですか、御客人様」
凛とした声が部屋に響く。扉の方を見るとそこには一人の美しい女性が立っていた。年齢は二十歳を越えるか越えないかくらいだろう。
身長は俺より頭一つ小さいくらいで、ボブカットの髪は美しい金色をしている。胸は千尋よりもあるだろうか。
「どういたしましたか?」
「いや、なんでもないっす。てか、俺のことは奏多でいいですよ。えーっと」
「セシリア·アズベルト、セシリアでよろしいですよ」
とのことなので
「お、おおセシリアさん。それと一ついいっすか?」
「えぇ、なんなりと」
「俺の体のサイズに合う服とかありません?」
と聞いてみる。
おっと!ここで俺のパーフェクトな外見の紹介だ!!
まず身長は最後に測った時178センチ。体格はまぁそれなりに良いと思う。
はい終わり。本題に戻ります。
「そうですね。奏多くんのサイズに合う服ですか……」
「うん。流石にこの服だとさ」
というのも今まで着ていた服は患者の着るような服だったのだ。
飛び出した病院?の時から同じ服だ。
「残念ながら、この屋敷にはありません」
「そうなんすか………。どうすっかなぁ…」
と、困り果てていた時。
「わかりました。行きましょう」
「えっ??どこへですか?」
「買い物ですが?」
「えぇぇぇぇぇ!?」
人通りの多い街並み。
そこでなぜか手を繋いで歩く俺とセシリアさん。
「えっとぉ……なぜ手をつなぐ必要が?」
「大事な客人ですからね。いなくなってもらっては困ります」
「そんな子供に見えます?おれ?若いだなんてやぁ〜ねぇ」
と軽口を叩く。
「嫌ですか?私と手をつなぐのは」
「いえ!ぜんっぜん!!嬉しいですよ逆に」
と他愛のない話を続けていると
「着きましたよ」
見ると若者感が溢れ出る洋服屋だった。正直元の世界ではこういう所に行ったことが無いに等しい俺は入るのに躊躇する。
「どうしましたか?」
「こういうとこ入ったことなくて、緊張するんすよ」
「でしたら私が選んで差し上げますよ」
なんと心強いことか!!
「よろしくお願いしますっ!!」
数十分後ーーーーー
「随分と時間がかかってしまいましたね」
「そうっすね。今日のお仕事良かったんですか?」
「ええ、屋敷の使用人は全員優秀ですから」
とのことなので、
「少しゆっくり帰りませんか」
と提案する。
「良いですね。付き合いますよ」
少し歩くと、噴水がある。そこには恋人が沢山いる。
「なんか、俺は恋人っぽいですね?」
「そう………ですか?」
前にも言ったが女子耐性のない俺はもうすでに辛い。
帰りたい。今すぐ帰って、寝てしまいたい。
「そろそろ帰りましょうか?」また提案する。
提案した俺が、言うのもなんだが、もう辛い
取り敢えず帰って寝ます。
とまぁここまでいいのだが、不運な俺はここでは終わらない。
「おいコラァ……。てめぇどこに目ぇつけとるんやぁ?あぁ??こらぁ?」
TI☆N☆PI☆RA
不運の極みだよ本当に。
「いや〜そのすいません。できれば話し合いで解決しません?」
「おぉ、いい度胸やないかぁのぉ??」
[Theチンピラの典型]だなと思う。
「どうしましょ?セシリアさん?逃げます?」
「いえ、戦いましょう。神崎家の上人が逃げるなど言語道断です」
「好戦的なのはいいんすけど、殺さないでくださいね?」
「なんや??やるんか?いいねぇ、いいよそういうのぉ!!!」
瞬間ーーーーーーー
男の背後から巨大な影が現れる。
「くっ……!こいつ化身使いです!!」
「それって異能力の一つ?」
「えぇ!そうです!」
「そうなんすねぇ!」
「ぶっころぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉす!!!」
男が叫ぶとともに後ろの化身と呼ばれる巨大な影がこちらを攻撃するモーションを見せる。
ーーーーーが、
ひどく化身の動きは緩慢に見える。無論俺の動体視力が良すぎるせいだが。
化身の右ストレートを避け、男の前に滑り込む。
「んなっっっっっ!!!!」
驚愕するチンピラ男。名付けてチン·ピラ雄。
「よぉ。さっきのお返しだっ!!!」
本気で右の拳を振り抜く。振り抜いた右拳は男の顔目掛けてぶち当たる。
「ぐふっっっっっ!!!」
男は3メートルほど吹っ飛ぶ。
そして、周りにいた取り巻きに連れて行かれた。
「お、憶えとけよぉぉぉぉぉ」
捨て台詞すらチンピラだ。
「なんとかなりましたね」と安堵の息を漏らすセシリアさん。
「お強いんですね」と笑顔で言われる。
その時なぜか自分より幼い少女に見える。ふと、
「失礼ですけど、セシリアさんっておいくつ??」
「私は15ですけど?」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
驚いた。まさか自分より年下だったとは。
「ですので、セシリアでいいですよ?」
「お、おう。よろしくセシリア」
と新たな事実を知り驚いて一日を終えた。
これから来る激動のために。