2ルート目 21:優しさ
「君は頑張ったよ……ね?」
「そんな……こと……」
「君がどうして悩んでるのか……私にはわからない……。うん…わかるなんて軽々しく言っちゃ駄目だもんね」
優しい言葉。傷ついた心を癒やそうとする暖かい言葉。
「でも……わかることはあるの……。君が……まだ諦めきれてないこととか」
「諦めきれてない……?」
どういう事だろう……俺はもう全てを諦めている……だからこそ、こうやって嫌われようとしている……。
「君は諦められない。絶対に、何があっても……」
「そんなことない……俺はそんなに強くない……」
「ううん。強い、君は強い。私なんかよりもずっと……」
予想していた展開と違う。
こんな事になるはずなかった。嫌われて、それで終わりの筈だった。
「君は……どうしてあんな事言ったの…?」
「君に……嫌われれば……そうすれば……君に迷惑をかけずに……」
そう言って千尋の顔を見る。千尋は優しく微笑み、
「ほらね、君は優しい。私に嫌われてから消えれば、私の心に傷が残らないって……そう思ったの?」
「あ、あぁ……そう思った……だから……」
「優しいんだねカナタは。それに……まだ諦めきれてないんでしょ?」
「諦めてるさ……もうずっと前から……」
そうだ。自分にはできないと諦めた。しかしそれでも、
「諦められないよ。それがカナタだもん。」
「どういう……こと……?」
わからない……自分にはもうわからない…。
「カナタはやり出すと止まれない子だからね…諦めるのなんて嫌いでしょ?」
「なんで……そう……思ったの……」
「いつもの稽古を見てればわかるよ…いつも……見てるからさ……」
今まで死んでいたはずの感情が動き始める。
心が暖かくなっていく。
いつも見ていた…。
その言葉が心に響く。その響きは腐りきっていた心の中へと染み込む。
「それに、君は私のことも諦めなかったでしょ?深淵の使徒のときだって、無理だってわかっていながら頑張ったでしょ?」
「それは……ちが……」
「違わない……。何も……違わないよ……」
「どうして……そこまで……」
なんでそこまで信じる……。なんでそこまで……どうして……。
疑問が生まれる。しかしその疑問をかき消すように千尋の言葉が帰ってくる。
「どうしてって……。カナタは私を助けてくれた。だからさ…嬉しかったからさ……。今度は私の番かなって……。これじゃあだめかな…」
駄目じゃない……。それだけで良かった。それだけで心が生き返った。
「でも……俺は……狂気にかられてさ……この前だって……」
「間違えることはあるよ。人だもん」
「あの子を助けられなかった……。そんな俺でも……」
そうだ。助けられなかった。そんな俺がここにいても……。
「私はその子と話したことないから、わからないけど……。
でも、君は知ってるでしょ?その子の事」
「う、うん……」
「死んでしまった人を生き返らせるのは神様にしかできないこと……。
でも……忘れない事は人にでもできる……そうでしょ??」
そうだ。忘れないことはできる。
「そうだよな……。あの子の為にも……、死んでしまった……俺が殺してしまったあの子の為にも……俺は……」
決意。覚悟。
心が決まった。部屋の隅に、あの子が笑っているような気がした。
「クヨクヨしてたら……あいつに笑われるよな……」
「気持ちは落ち着いた??」
「あぁ。落ち着いたし、覚悟も決まった。
もう迷わない……。もう諦めない……あの子を忘れない為に……何をするべきか……」
そうだ。無力な自分にもできる事はあるだろう。そのとき声がした。
『覚悟は決まったのかい?ならいいものをあげよう』
どこからだろう。でも今はそんなことより……。
「おれ。行くよ」
そう言って部屋を出る。覚悟はもう決まっていた。




