7 Memoriae storage
その日の夜、泣き疲れた葵は銀の服を握りしめたまま寝てしまった。
銀があるその手を外そうとしても、固く握りしめたまま、離さなかった。
「あの頃に逆戻りか……」
あの頃とは、葵が銀と出会ってから約二年の間のこと。
銀以外、誰にも心を開かず、銀の影に隠れていた。
(過去のことはあまり、思い出さないんだがな。俺も、疲れたのか?)
明日は忙しくなる。
銀も、今夜は珍しく零時を回る前に寝床につくことにした。
* * *
「銀!?どうしたの、その子!」
その日は土砂降りの雨の日。
銀が抱いて連れてきたのは、衰弱し今にも死にそうな少女だった。
「そんな子拾ってきてどうすんの!育てらんないでしょ!?あの二人のこと、克服できた訳でもないのに!」
「あいつらとは関係ない。大丈夫だ」
あいつら、とは銀の母親と妹のこと。
この二人は、銀の実の父親に殺された。
それぞれの名は、母親、妹、父親の順に、沙羅、架夜、深夜。
深夜の仕事は官僚。政府関係者である。
二人が殺されたのは、侑李にとって“邪魔”だったから。
七年前、政府は銀の存在――――銀の才能の存在を知った。
きっかけは、深夜が風邪をひいたとき、飲んでいた薬を官僚仲間の一人が見かけたことだった。
* * *
「深夜〜、その薬どこで買ったんだ?」
「ああ、これか?これは息子の手作りだ」
「ホントか!?お前の息子くんスゲェな!俺が風邪ひいたとき、頼んでいいか?」
「息子くんってなんだよ……。大丈夫だと思うぞ」
この時の深夜はまだ普通だった。
Memoriae storage=記憶の記憶