6 Ira
「そろそろ落ち着いたか?」
帰宅し、銀が作った軽めの昼食をとった後、銀は椅子の上で丸くなっている葵に、話しかけた。
「元から落ち着いています」
「落ち着いてないことは分かった。これは俺の勘に過ぎないのだが、お前、政府関係者と会ったのか?」
「………」
「無言は肯定ととるぞ。……政府は本気ということか」
何も知らない葵は、クエスチョンマークを浮かべた。
「会ったのは昨日です。銀さんが、買い物に出かけたときに家に来たんです。『銀は生かす価値が出来た。当分の間、銀は安全だが……』」
「おい、待て。今、“家に来た”と言ったか?」
「はい、言いましたけど」
「政府の人間が、だよな?」
「はい」
「何人だ?」
言葉を遮られ、その上鬼気迫る感じで問い詰められれば答えるほか道はない。
誰に対するでもない、強いて言えば自分に対しての銀の怒りがその場の空気を一瞬で変えた。
「車で来てたから正確な人数は分かんないけど、家を訪ねてきたのは三人、運転手が一人いました」
「四人以上で来たってことは、俺がることも想定してたのか。……よし、明日引っ越すぞ。白咲に、今日は厄日だと言われたが、本当にそうだな」
「ごめんなさい」
「別に、葵を責めてる訳じゃない。今日はもう休め。大丈夫だから」
薄っすらと涙が目に浮かんでいる。
それどころか、その場から動こうともしない。
「どうした?」
「今は……、今だけは……、一人になりたくないです……」
Ira=怒り