突入
僕達は魔王城に突入した。
最前線こそ例のストーンゴーレムさんに任せているものの、討ち漏らしや奇襲には他のゴーレム達に必死に対処させている。より正確に言うならば、"瀕死の討ち漏らし"や"礫の投擲を受けて体勢を崩し死に体の奇襲"というおこぼれ相手に本気で挑んだ上での勝利ではあるが。それでも、ゴーレムゆえに疲労がなく、僕がいるので軽い損傷はすぐに修復できるのと、彼が「対処できる範囲」を見極めて戦闘を展開しているという点が大きいのだろう。
ただ、僕は魔王城の中を進んでいるのに、戦闘と休憩以外では一切歩みを止めることも、道を戻ることも無かった。ここ数日のところ疑念はあったが、ほぼ確信に変わった。「彼」は石化した冒険者だ。それも魔王城に突入するだけでなく、僕達という足手まといを抱えても問題ない程の凄腕の、だ。なぜあんな辺鄙な森の中にいたのかや、そもそもどうして"鏡の鎧"を纏っているのに石化状態なのかなど不明な点も多いが。
だが、そのような疑問を解消する間もなく、僕達は辿り着いた。辿り着いてしまった。豪奢で瀟洒ながらもそれらを台無しにする禍々しさを放つ両開きの大きな扉。ここが玉座の間なのだろう。その両脇にはあの"赤いサイクロプス"が控えていたが、どちらも先程、「彼」に撫で斬りにされていた。もしかしたら、僕を襲ったあの"赤いサイクロプス"は「彼」を探しだし、確実に止めをさす為に派遣されていたのかもしれない。あの状況は色々な意味で、まさに危機一髪だったのだろう。
僕はアイアンゴーレム達に扉を押させる。軋むことなく、ゆっくりと開いていく扉。その先には魔王がいた。
玉座に座り頰杖をつく魔王。片手には身の丈に僅かに届かない長さの赤褐色の杖を持ち、先端には拳程の深紅の魔石が付いている。その身体は月のない闇夜を思わせる漆黒のローブに包まれている。そしてその金色の両眼は、つまらないものを見るかのようにこちらを睥睨していた。
「よくきたな名もなき冒険者よ。石くれを操るとはなかなか面白い芸を見せてくれるものだ。我こそが第27代目魔王、タスムスルク。死を恐れぬのならば来るがよい!」
一旦ここまで。
戦闘シーンが難しい。明日18時には戦闘シーン部分を投稿できる筈……