星降る夜に
はぁーっ!!はぁーっ!!
僕は息をあげながら、真夜中の坂道を自転車で登っていた。
あたりはとても暗く、見えるのは自転車のライトで照らされる光しかみえない。
何度も空を見上げ、星が出ているかを確認しながら自転車を漕いでいるせいか、ふらふらしながら走っているので危なっかしい運転になってるんだろう僕自身でも思う。
こんなふらふらした状況で真夜中の坂道を登っているのはある場所を目指しているからだ。
僕は何度も今日ここに来るはずだった父のメモを見ながらある場所に向かっている。
なんでこうなったのかと思ったが、それと同時になんでこうなったのかを何度も思ったことを思い出す。
さっきから出る息をあげながら、坂道を登る息の上がりとは違い、後悔か来る吐息なんだと思ってしまう。
「やっぱり、頼みごと聞くんじゃなかった!!」
そう大声を上げるけど周りには家などなく、田んぼしかないのが田舎の特徴ではないだろうか?
僕はさっきから蘇る朝の光景をもう一度思い出してみようと思った。
それはいつも通りに朝のニュースを見ていた朝食の時間帯、僕は寝ぼけ眼で、朝のニュースを見ていると、父さんが、「おおー」と声を出してさっきまで動いていた箸が空中で止まるのを僕の寝ぼけ眼見ていた。
なんとなしに予想はついていたが、予想が違う時だってあると思い、寝ぼけ眼をこすりながら朝のニュースを見てみると、僕の予想通りやはり星のニュース。
なんで予想ができたかといえば、毎度毎度何かことがある度に星の話をしてくるような父さんなのだ。
僕は毎度毎度聞かされているのでうんざりしているところがあるが父さんはそれでも構わず僕に星の話をしてくるのだから困ってしまう。
僕がそんな十中八九当たっている予想を当てた頃合いに朝のニュースは終わりを告げた。
それと同時に父さんは僕に星の話をまたし始めるので軽くうんざりしながら朝食の味噌汁を口の中に注ぎ込む。
それでも、父さんは僕に星の話をしてくる。
「よし、今夜行くぞ!」
言うと同時に立ち上がり父さんは自分の部屋に向かう。
食べ終えた僕は歯を磨いていると二階から、ドンっドンっと激しい音がした。
流石に驚いた僕はすぐに二階の父さんの部屋に行ってみると、部屋が色々なものが散乱してあってとても汚い状況になっている。
そして奥にある天体道具の山から何かがもぞもぞと動いているので何かなと思いつつ天体道具をどけてみるとそこからは腰を抑えている父さんが出てきたのであった。
どうやら押入れから天体道具を出そうとしたら、押入れの中に無理やり入れていた天体道具が雪崩の如く降ってきたのだろう。
そして、天体道具がちょうど、父さんの腰に直撃してしまって腰を痛めてしまったのだろう。
「頼む。代わりに行ってきてくれ」
そう、父さんは僕に言って目に前にあった天体望遠鏡を僕の前に出すが、その望遠鏡は壊れていた。
どうやらさっきの雪崩に巻き込まれて壊れてしまったのだろうと僕は思った。
「父さん 、これ壊れてる」
そういうと父は目を大きくして
「マジか!!直せばまだ使えるはずだ。じゃあここに行ってみて来い」
そう言って父さんは左手で腰を抑えながら、右手で何かメモをとって僕に渡してくる。
「ここが穴場だから、行ってこい」
何度思い出しても、なんで素直に行ってみようと思ったのか自分でも謎だから困ってしまう。
左ポケットからメモを出して、自分の位置と目的地の位置を確認してみると目的地が近いということに気がついた。
僕はなんとなしに周りを見てみると自動販売機があったので、寒いしなんか暖かい飲みものでも買うかと思い自動販売機に近づき何があるか確認してみると、ほとんどが売り切れ。
さすが田舎と僕は心の中で思ってしまう。
僕は売り切れにはなっていないココアを買った。
今ここで飲もうと思ったが流星群が来た時に飲んだほうがいいだろう。
なぜなら綺麗なものを見ながら飲んだらココアだって美味いはずだと思ったから、僕は暖かいココアをポケットに入れて、もう一度メモを確認して自転車を漕ぐ。
漕いでいると父さんが渡したメモに書かれた場所に着いた。
丘はとても暗く、街灯はまったくといってもいいほどなかったので、僕は、ケータイの明かりをつけて周りを確認していると
「あのすみません。明かりを消してもらえませんか?」
と女の子らしき声が聞こえてくる。
僕はすぐに電気を消して
「すみません。」
どうやら先客がいたらしく、星を見ているらしい。
でも暗くて、どういう顔をしているかがあんましわからなかったがなんとなしに中学生くらいの背に見える。
「ありがとうございます。もしかしたら、あなたも星がお好きなんですか?」
あんまり星が好きではない僕はここであんまり好きではないとか言っては相手を傷つけてしまうのではないかと思い
「少しね。君は好きなの星?」
そういうと彼女は嬉しそうに声を少し大きくして
「そうですよね。こういう星がよく見える穴場を知っているから星が好きなんだなって思いました」
「まぁー父さんに教えて貰ったんだよね。」
「あなたもなんですか。私もなんですよ。今はお爺ちゃんの家に旅行で来ていて、お父さんがここが穴場だから行ってみるといいよって言われたんですよ。ところで、あなたは大学生さんですか。」
僕はなんとなしに少しショックを受けてしまった。
背が大きすぎるから高校生以上に見えるんだろう。
「一応僕は、高校生です。」
そういうと彼女はびっくりしたのか、声をまた少し大きくして
「嘘!!高校生なんですか。なんか大人っぽい雰囲気があったので、間違いちゃいましたよ。じゃあ私はどう見えますか?」
僕はここですぐに
「中学生?」
と言うと、彼女はショックを受けたような声を出して
「あなたと同じ高校生ですよぉー」
驚いた。
こんなに中学生みたいな高校生がいるのかと疑ってしまう。
「ごめん。ごめん。これでお互い様ってことで」
僕はそう言ってフォローを入れると彼女は少し満足しないようだったが。
「いいよ。許します。」
そう言うと、彼女は黙り出す。
流石に、会って初めての相手にこれ以上話すようなことはないだろうと、僕は思っていたのだが。
「あの~。流星群が流れるまで時間があるので、雑談でもしませんか?」
意外だった。
会って初めての相手に雑談をしようなんて言ってくることが、意外でならない。
「そうですね。流星群が流れるまで何か話でもしましょう」
でも、その後になんの会話をすればいいのか僕にはわからいので、少しどうしようと思っていたら
「やっぱり、高校生なら恋愛話ですかね」
一瞬頭の中が真っ白になる。
彼女は今、僕になんといったのか、もう一度言った言葉を思い返してみるけど、おかしいと思ってしまう。
流石に今日会った相手に恋愛話って?
こういうのは、女では当たり前なのか、僕は普段からあんまり女の子とは喋らないのでわからなかった。
「う、うん。い、いいねぇ~。そういうの」
完全に頭が真っ白すぎて、自分でも何を言いたいか整理ができなくなってしまう。
「ですよね。じゃあ私は後でって事で」
なんでだ?
僕からなのか、流石に彼女から先ていうのは男としてなんかダサい気がするが?
嘘つくか?
僕はふと思ったが、どうせ彼女と会う事はないだろう。
では、貴重な女子の意見も聞いてみるというのもいいのかもしれない。
「はっきり言うと、好きな人って言うか、気になる人はいるね。」
自分で言ってて凄い恥ずかしい気持ちになってしまう。
彼女は僕を見ながらニヤニヤしている。
「どんな人なんですか?教えてくださいよぉ~。気になっちゃうじゃないですか。」
完全に面白がってるとしか思えなくなってきたが、気のせいだと思わせ、質問に答える。
「うーん、どんな人っていうか、やけに正義感が強いというか、困っている人を助けずにいられないないヒーローみたいな人かな」
「なんか、私のお母さんみたいな人ですね。」
「そうなんですか?」
僕は気になる人と同じようなタイプがいるから驚いたのではなくて、僕と同じようなタイプの人を好きになった人がいたということだ。
「そうなんですよ。いつも人助けしてて自分の事を忘れてしまうんですよ。だから、お父さんが気になって、告白して、付き合って結婚したらしいですよ。」
なんと心温まるような話なのだろうかと思ってしまうエピソードだなと思う。
「いい話ですね。そしたら、夫婦円満ですね。」
そういうと、彼女は少しがっかりしたような口調で
「そうだと、思いますよね。でも私のお父さんは星の事で色々問題が合って」
父さんみたいなタイプの人だなと心底思ってしまう。
「なんか、僕の父さんに似てますね。勝手に高額の道具を勝手に買ってきたりするんだよね。」
「それ、私のお父さんも同じです。そんなお父さんに色々な所に連れて行かれたから、私も星好きになったんだなと思います」
だから彼女は星が好きな訳がわかった気がししたが、僕はふとあることに気づいた。
なんか話が変わってないか?
絶対変わってるよね。
「そういえば、君は彼氏とかいるの?」
いきなり話が元に戻ったせいか、彼女は驚いたような声をだした。
「わ、私は.....」
彼女が言おうとした瞬間に、真っ暗な夜に一筋の光の線が流れていく。
その光は、どんな光よりも綺麗で何よりも明るく綺麗だった。
こういう場合は願いことが叶うように3回願いことを言うっていうけど、目の前の光景に圧倒されて言葉が出ない。
そして、気づくと、光の筋は何筋も現れ、流星群になっていた。
父さんはいつもこんなのを見ていたのかと僕は思っていた。
僕はふと横にいる彼女を見てみると、彼女は黙って上を向いているのがわかった。
彼女もこの流星に感動しているのだろうという事に、なんとなしに気づく。
もう一度、夜空を見上げ流星群を見上げる。
なんか、この光景がずっと続いてくれればいいのにと心の底から思ってしまう。
ふと、朝に父さんから望遠鏡でも借りてくればよかったと後悔してしまう。
まさか、星の事で後悔するとは思わなかった。
こういう事で後悔と思うようになったもは、多分んこの流星群のせいなんだろうと思ってしまう。
ガチャッガチャッ
なんかの音が聞こえるので、そちらの方に目を傾けてみると、彼女がしているのが分かった。
「よし、出来たー」
そういうと、一仕事終えたような感じを出している。
気になった僕は
「なにをしているんですか?」
そういうと彼女はさっきよりも大きく元気な声で
「祖父から貰った望遠鏡を組み立ててたんですよ!!」
望遠鏡持ってくるとか、準備がいいなと思っていると彼女は続けて
「でも、持ち運び簡単な簡易式なんだけどね。でも性能は、いい方なんだよ」
何を言っているのか、途中でわからなくなってしまう。
「この望遠鏡を光で照らし見てくださいよ」
やけにテンションが高いのに少し驚いてしまう
最初に会った時は、電気を切ってくださいと言われたのを思い出したが、本人がいいと言うならケータイを取り出し電気をつけた。
電気をつけた先を見てみると、何処かで見たことのあるような、望遠鏡が目の前にあった。
「この種類の望遠鏡、俺の父さんが持ってますよ」
「そうなんですか。この型はもうあんまりなくて珍しいんですよ。」
へぇー、そうだったんだ。
珍しいという事は、絶対に高いんだろうなと思い、どんな値段で買ったんだよと父さんに突っ込みを入れたいが、今ここに居ないから諦める。
「でも、この望遠鏡壊れてるんですよね。特に、問題はないんですけど気になった祖父はどうにか直そうとしたんですけどダメだったんで、壊れているところが見えないようにしたんですよ。ほらここ。」
僕はそこにケータイ電気で照らしてみると、そこには星のようなヒトデのようなイラストのキャラが描かれたステッカーが貼られている。
こっちに向かってアホ面のキャラがあっかんべーしているので、なんとなしに腹が立ってしまう。
「可愛いですよね」
「う、うん。そうだね。」
これが可愛いのか?
最近の女の子はよく分からん。
「そろそろケータイの電気を消して、望遠鏡を覗いてみてくださいよ。とても、星が綺麗に見えますよ」
僕は言われるがままに、ケータイの電気を消して、彼女の望遠鏡を覗き込んだ。
覗き込んでみると、さっきとは違う光景が見れる。
さっきは肉眼で夜空を見てたが、望遠鏡で見てみると一個一個の星が綺麗に見れ、星ごとに違うような感じがしている。
何にもわからない僕でもこんな感動してしまうとは、本日二度目の驚きだった。
「綺麗だ」
僕は無意識にこの言葉が口から出て行く。
「そうでしょ。星は一期一会で同じ星は滅多なことがないとあんまり見えないんです。だから心にその星が焼きつくまで私は星を見るんです」
やっぱり彼女は星が好きでたまらないんだ。
「そうなんですか。一期一会ですか、まるで人の出会いのようですね。その時に会えても、これから会えないかもしれない。本当にいいですね。」
そう言うと、彼女はちょっと笑いながら
「ロマンティストなんですね。この事はお父さんから聞いたんですよ。お父さんも誰かからの受けおりらしいですよ。」
そう彼女が言うと僕もちょっと笑いながら
「じゃあ、この事は、貴方からの受けおりですね。」
と言うと彼女は照れながら
「そ、そうですね。そういえば今は何時なんですか?私、時計とか持ってないんでわからないんです。」
すぐにケータイの電源を入れてみると時間はAM2:00になっている。
僕は時間を告げると、彼女は慌てて
「やっばい。明日も学校あるのにこのままじゃ眠れなくなる。私はこの辺で帰ります」
そういうと彼女は望遠鏡を片付け始める。
「はい、わかりました。これでお別れですね。色々、星のことを教えて貰ってありがとうございます。」
僕はそう彼女に告げると、彼女はまた照れながら
「いえいえ。それにまた会えますよ。また、星の降るような夜にこの丘にくれば、会えます。」
僕は今日一番の声で
「また会いましょう」
と言って、彼女にこの丘に来る前に買っていたココアをあげる。
少し冷めたが、少しくらいは暖かくなるだろうと思う。
彼女は僕に手を振りながら丘を下りていく。
僕もそろそろ帰ろうと思い自転車を置いた場所に戻り、もう一度、夜空を見上げるとそこには満点の星空がまだ広がっている。
僕はこの光景を心に焼けつけるように見て
また会える。
そう思いながら家に向かって自転車を全力疾走でかけ向けた。
家に帰ると、腰を痛めた父さんが居て
「どうだったか?こんな時間まで居たって事はかなり、星が綺麗だっただろう」
僕はニヤニヤしながら
「星って本当に面白いね。父さん今度星を見に連れっててよ」
それを聞いた父さんは少しビックリしたような顔をした後にさっきよりもニヤニヤした顔で
「わかったよ。でもこの望遠鏡を直さないとな。朝になったら直してるからお前はもう寝ろ。明日も学校あるんだろ」
確かにもう、眠たくてしょうがなかった。
「うん。じゃあ、おやすみ」
僕はそういうと自分の部屋に戻って、すぐにベッドに潜り込んだ。
でも、さっき会った彼女が言っていた一期一会を思い出していた。
その時に会えてもこれからは会えないかもしれない。
だから、僕は決心を決めた。
明日、告白しに行こう。
そして、それ以降の記憶はなく、目覚めたら、窓から差してくる日差しが眩しいということだけが早くに分かった。
僕の頭の上には、彼女と同じ型の望遠鏡が置いてある。
望遠鏡の近くには、父さんが書いたであろう置き手紙があった。
「それをお前にやる。星が好きになった記念だ。特に壊れた部分は問題ないから、まだ使える。」
そう書かれてあった置き手紙を読み終えると、望遠鏡を触ってみる。
そうすると、壊れた部分らしき場所に星のようなヒトデのようなキャラのがこっちに向かってあっかんべーしているようなステッカーが貼られている。
やっぱり、なんとなしに腹が立ってしまう。
もう一度、星の夜にあった彼女の事を思い出して僕は無意識に
「今度はいつ会えるかな?」
そうして、僕は自分の部屋のドアを開いた