白い子
手のひらに乗せたキラキラ光る細かい泡。つまんでもすぐに元通りの球形を保っています。
その白い泡が縦に揺れ動き出したかと思うとペンギンのような形の小さな小さな足がはえてきました。
続けて横に揺れ動くと今度はこれまた小さな小さな白い翼が申し訳のように出てきました。
カオルが驚いて見ていると白い泡はカオルの左手から腕を登って肩まで行くとコロコロ転がって精油の子がいる
ポッケに飛び込んだのです。
それはそれは素早いこと。
カオルは電車の時間がないことを思い出して走り出しました。
「確かこっちの方を指差したわよね。」
すると、行き先が赤や緑、紫やブルーの宝石を所々に散りばめたモザイクのようになって光り始めたのです。
カオルはそれらの光に導かれて駅の中に入りました。
「改札口はどこよ! 」
走りながら見渡すと、駅員さんが立っている奥の方に人々が流れて行くのが見えます。
「切符を買わないと!」
虹色に輝いている壁の間を走りながら探しました。
「えーー! 切符売ってない? 切符はどこー?」
「そうだ! 駅員さんに聞いてみよう!」
「すみませーん! 切符はどこで買ったらいいのでしょう?」
駅員さんは血相をかいて駆け寄るカオルが来る事を知っていたかのように微笑んで
「あちらの電車が松本行きです。出発の時間が近づいていますので急いでご乗車を」
カオルの質問には答えずに言いました。
「あ、ありがとうございます!」
取り敢えず、駅員さんが指さした電車に向かって急ぎ、一番近くの開いているドアから乗り込みました。
さっきは大勢の人が流れていたのに少女が一人座っているだけ。
カオルが座席に座るのを待っていたように電車は走り出しました。
「やっと会える! 本当は何色なの? どんな姿なの?」
カオルは見たくて見たくてウズウズしていた濃い緑色の動物と白い子がいるポッケにそっと手を入れました。