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昼休みの会談

俺と清一は職員室を出て、教室を目指して歩るく。


「なあ、お前の幽霊嫌い早く直した方が良いんじゃないか?」


俺は清一を見る。


こいつは中学の頃から幽霊や心霊の類が苦手で、友達の家に集まって怪談話大会をした時は常に半狂乱状態で白目を向いて倒れた事もある。


はっきり言ってこっちの方がよっぽどホラーだ。


清一は落ち込んでいる様子だ。


「無理だよ。どうしてもこの手のものは慣れなくてね。前に克服しようと思って井戸から幽霊が出てくるホラー映画を見たんだ」


ああ、あのテレビから出てくるやつだな。


「幽霊がテレビから出てこようとする瞬間。僕は恐怖のあまりテレビ画面に向かって椅子を放り投げてテレビを壊してしまったんだ」


俺はギョッとした顔で清一を見る。


テレビが可哀想だ…。


どうやらまだまだ克服出来そうに無いらしい。


しばらく話しながら歩いていると四時限目の予鈴が鳴った。


教室の前の廊下まで来ていた俺達はそれぞれの教室に戻った。



四時限目は何事もなく無事に終わった。


清一も時間が経って落ち着いたのか先生に呼び出される事は無かったようだ。


昼休み俺と清一と杏子は中庭のテーブルに集まった。


中庭は二棟校舎と三棟校舎の間にある。


芝生が敷いてあり、真ん中には池がある。何本か細い木が植えてありその下にはテーブルが設置してある。


今日のように快晴の時は、七夕高校の生徒達にとって人気のスポットだ。


「なあ杏子。確認なんだが見間違えたわけじゃないんだよな」


杏子は首を振る。


「それはないわ、ちゃんと近くまで行って確認したもの。その時一箇所だけ土の色が違ってた」


土の色が違ってたというのは引っこ抜いた時に色が変わったのだろう。


俺と清一は顔を見合わせる。


「そうか、実は…」


俺は杏子に昼休みまでにあった出来事を話した。


「そんな、じゃああたしが見た時無かったのはその間花が誰かを殺しに行っていたからって事⁉︎」


杏子は目を丸くさせて驚く。


「あくまで噂だからそれは、無い、と、思うけど…」


俺はそう言ったものの自信がなく、だんだん言葉尻が小さくなっていく。


「鳴海氏は花壇を見た時間帯は覚えているかい?」


清一が尋ねる。


「あたしは毎朝人より少し早く登校してるから7時50分あたりてとこね」


「テニス部の水やりは何時から始まるんだい?」


「だいたい8時20分ごろよ」


つまり女子テニス部が水をあげている時にアサガオが10本全部あったら消えたのは7時50分から8時20分の間ということになる。


もちろんまだ田中さんが花壇を見た時間がわかってないから確定では無いし、杏子が花壇を見る前から花が消えていた可能性もある。


「わかった、あたしはとりあえず今日学校を欠席している生徒が誰か調べてみるわ」


「そうしてもらえると助かる」


俺は言った。


そう言うと杏子は席を立った。


「鳴海氏昼食はとらないのかい?」


清一が驚いた顔で杏子に尋ねる。


「こんなモヤモヤを残したまま昼食なんて食べれないわ。あたしはさっそく調べてみる。家倉君達も調査頑張ってね」


そう言うと杏子はロングヘアーの髪を揺らしながら歩いてどこかへ行ってしまった。


そもそもあいつがあんな事気づかなかったら俺達は先生に怒られる事も無かったんだがな…。


俺はぼんやり思った。


「とりあえず僕達がやらなくてはいけないのは田中さんが花を見た時間を調べる事だね」


清一が俺に言う。


「そうだな、昼食を食べ終わった後田中さんに話を聞きに行くか」


俺はそう言うと疑問を口にした。


「お前も昼食食べないのか?」


俺は食堂で買った焼肉定食をテーブルの上に乗せているが清一は弁当も何も持って来ていない。


「いや、食べるさ」


そう言うと清一はよく聞こえるように手を口に添えて「おーい、原田さーん」と叫んだ。


すると食堂の方から大きな台車を押しながらこっちにやってくるガタイの良い食堂のおばちゃんがやって来た。


ご存知の方もいるかも知れないがもちろん食堂のおばちゃんなんかではない。


食堂のおばちゃんの格好をした「家倉八百屋」の男性従業員原田さんだ。


ちなみにいつもは白のタンクトップにジーパン。腰には「家倉八百屋」と書かれたエプロンを着けている。


原田さんはおそらく30代後半と思われ、ボディビルダーのような筋肉にヤクザ顏で、清一が呼んだらどこにいても必ずやってくるのだ。


原田さんが持って来た台車の上には大きなまな板が乗っており、さらにその上に大きなマグロが乗せられている。


原田さんは刀のようなマグロ解体用の包丁を器用に使い、真剣な眼差しでマグロをさばいていった。


食堂のおばちゃんの格好さえしてなかったら、その姿は相当きまってただろう。


マグロを一口大の切り身にし、一緒に持って来ていた酢飯と握り合わせる。


それを木の器に盛り付ける。


完成した寿司が清一の前に運ばれた。


「坊ちゃん今日の昼食は大トロの握りで………」


俺は目と耳の機能をシャットダウンさせる。中庭で繰り広げられる非常識な状況を脳から消し去るためだ。


焼肉定食に集中し食べる。


おばちゃん。今日も焼肉定食おいしいよ。



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