集中出来ない
そのまま門の前で震えている訳にもいかないので清一と俺は仕方なく教室へと戻った。
三時限目の授業が始まる。
授業中俺はずっと花について考えていた。
噂が本当だと杏子が見た時間から二時間目終了の間に誰かが死んでいるという事になる。
だが朝、田中さんが見た時は花壇の花に異常は無かったらしい。
つまり、杏子が見たのが田中さんより早かったらその間に誰かが死んでいる事になる。
じゃあ死んだのは一体誰だ?
いや、そもそもあくまで噂だ。本当に人が死ぬはずが無い。
「…………ら」
だが、本当に死んでいたら?
あー。頭がこんがらがって来た。
「お………ら」
とりあえず杏子に頼んで今日欠席の生徒を調べてもらおう。
「おい……ら」
女子テニス部にも一応水やりの時花に異常が無かったか聞いてみるか。
「おい古村!」
突然の大きな声に体がビクリとする。
なんだ⁉︎
声がした方を見ると先生が怒った顔でこっちを見ている。
「おい、何回呼んだら気がつくんだ?仮死状態になるのは勝手だが授業中になるんじゃない!」
皆がこっちを見ている。どうやら俺は一時的に現世からいなくなっていたらしい。
「どうせ昨日夜遅くまで起きていたんだろ。授業が終わったら職員室に来るように」
そう言うと先生は授業を再開した。
違うんです先生。原因は花の幽霊にあって、むしろ昨日の俺は倉庫整理をしたおかげで快眠でした。
そんな事は思っても言わない。どうせ笑われるだけだ。
俺は「ふー」と息を吐く。
ダメだ。今考えるのはよそう。
俺は授業に集中するようにしたが結局三時限目の授業は全く集中出来なかった。
三時限目の授業が終わり職員室に行くと清一がいた。
俺と清一は違うクラスだ。
どうやら清一は俺とは違う先生に呼ばれたらしい。
なんでも、授業中に清一から「ガタガタ」という音がずっとしていたらしく。
携帯のバイブレーターと勘違いした先生が清一を注意したらしい。
だが、そうではなく清一自身が携帯のバイブレーターのように震えていて、それに気づいた先生は心配になって保健室に行くように言ったのだが、「一人で居たくない」と言って行かなかったらしい。
清一が先生に呼ばれたのはどうして震えていたのか理由を聞くためのようだ。
俺と清一は背中合わせに立つ。
俺と清一の目の前にはそれぞれ別の先生が座っている。清一を呼んだのは女性の先生だ。
「何で授業中にぼーっとしてたんだ?」
「どうして、授業中に震えてたの?」
幽霊がといっても馬鹿にされるだけだ。
「昨日の晩遅くまで起きてまして…」
「実は幽霊がいたかもしれない現場に居合わせまして…」
「全く、学生だから遊ぶのも仕方ないが授業に影響が出るまで遊ぶんじゃない!」
「幽霊?そんなのがいるわけないでしょう。全く、高校生なんだからもっとしっかりしなさい!」
俺と清一はうなだれる。
「「はい、すみませんでした」」