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そんな馬鹿な!

一時限目の授業が終わり、二年の女子テニス部に話を聞こうかと思っていると教室で一人の生徒が俺を呼び止めた。


話の内容は俺と清一を田中さんが探しているらしく見かけたら校務員室に来るようにという伝言だった。


俺は清一を見つけ校務員室へと向かった。



校務員室の中に入ると田中さんが妙なものを片手に持っている。


よく見ると昨日清一がはめていたガスマスクだ。


「昨日君たちこれを忘れて行っただろう?」


田中さんは俺達にガスマスクを差し出した。


「ありがとうございます!僕としたことがすっかり忘れていました」


清一は笑顔で礼を言いそれを受け取るとすぐに被ろうとした。


すぐさま俺が止める。


清一がどことなく悲しそうな顔をする。


その光景を見た田中さんは苦笑いだ。


「あっそうだ。田中さんちょっと聞きたいことがあるんですがいいですか?」


俺は思い出したように尋ねる。


「うん。どうしたんだい?」


「実は花壇の花を毎日見ている生徒がいて、その生徒から今朝アサガオが一本足りないと言われたんです。それで何か事情を知らないかなーと」


田中さんは眉をひそめて不思議そうな顔をする。


「え?今朝は私も一応花壇を見たが何もおかしな所は無かったよ?」


何?話が矛盾している。


「その生徒は見間違えたんじゃないかい?アサガオは結構植えているからね。本数がわからなくなってもおかしくないよ」


田中さんは笑う。


田中さんの話によるとアサガオは花壇に10本植えているらしい。


確かに10本もあれば杏子の見間違いの可能性もあるな。


そうこうしていると二時限目の予鈴がなり出した。


「ほらほら急いで戻らないと遅刻するよ」


田中さんは優しく言った。


俺と清一はガスマスクの礼を言い急いで教室へと向かった。



二時限目が終わり俺と清一はアサガオの本数を確認するため正門横の花壇へ向かった。


花壇には太陽に照らされ綺麗に花開いた青やピンクのアサガオが咲いている。


他の花もとても綺麗だ。


清一が指を指しながらアサガオの本数を数える。


「1、2、3…。どうやら確かに10本あるようだね」


俺も確認してみると確かに10本揃っていた。


「どうやら杏子が見間違えたみたいだな。全く人騒がせな奴だ」


俺は腕を組んで言った。


清一はまだアサガオをじっくり見ている。


「いや、どうやらそうでもなさそうだよ」


清一が突然言った。


「なんでだ?10本ちゃんとあるだろ?」


すると清一は俺を手招きする。


「正信よく見て見な」


清一は一本のアサガオの根元を指差した。


「ここだけ若干土の色が違う。これはアサガオを一度引っこ抜いてまた植え直した後なんじゃないかな?」


確かに土の色が他と違いその部分だけ濃ゆい。


「それにほら、土のあとがかなりわずかだが門の方に向かっている」


本当だ。花壇から門までの道のりに土がわずかに点々と着いている。


土の後をたどり門まで歩いて行くと門の前に一番大きな土の後が残っていた。


一番大きなと言っても2センチほどの大きさだが。


俺と清一は何の事かわからず門の前で考えた。


「なあ正信、確か学校の噂で花に関する事があったよね」


「ああ、あったな」


「僕が知っているものと違うかも知れないから一応正信が知っているのを教えてくれないかい?」


俺は清一に学校で噂される花の噂を詳細に説明した。


「昔花を凄く大切にする一人の女子学生がいて、その子は毎日学校に早く来ては花壇の花に水をやり、雑草が生えるとすぐに抜いて花を大事に育てていたんだ。その子は学校でいじめられていて。その事を花の手入をしながら花に向かって話していたらしい。ある日その子がいつものように花に水をあげていると花が一本無いことに気がついた。その子は不思議に思ったが朝の朝礼が始まるから探すわけにもいかず仕方なく教室に戻ると、自分をいじめていた学生の一人が学校に来ていない。先生も連絡を受けてないらしく来てない生徒の家に電話をかけてみた。すると家の人はうちの子は家を出た、と言っている。不審に思った先生はその子がいつも使う通学ルートを逆走してみた。すると…」


俺はためる。清一は喉をゴクリとさせる。


「いじめをやっていた生徒の死体が見つかった。しかも手には朝消えた花壇の花を持った状態で」


清一が両手で体を抱きかかえるようにしてガタガタ震え出す。


「先生はすぐに警察に電話した。だが少し目を離した隙に手に持っていた花は消えていた。その後花を大切にしていた子が改めて花壇を見ると花は元の本数戻っていた。という話だ」


清一はもはや残像が残るほど震えている。


そこまでビビるなら聞かなきゃいいのに。俺はいつも清一に振り回されてばかりだから少し気分が良くなってニヤッとした。


すると清一が震えながら絞り出したような声を出す。


「な、なあ正信、今回の状況。どうもその話にそっくりじゃないか?」


ん?そういえば…。確かに…。


俺はだんだん血の気が失せてくる。


「あ、ありえないだろそんな事。う、噂だろ?」


俺は清一を馬鹿にしていたのも忘れ途切れ途切れ言う。


「でも門に向かって土の後がついてるだろう?つまり、花が勝手に出て行って…」


「用を済ませた花が元の場所に戻った…」


俺達は言葉に出した事を後悔した。


俺と清一はここだけ地震が起きてるんじゃないかというほど震えた。


「何やってんだあいつら?」


事情を知らない通りすがりの先生はそんな二人を不思議そうな目で見ていた。

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