風紀委員相談科
その日の放課後。
俺は生徒会室へ向かった。
俺は現在、生徒会の風紀委員長をしている。学校の風紀を正すのが俺の仕事だ。
だがやる気のある俺は小さな違反は見て見ぬふりをする。
正直めんどくさいのだ。
もともと今の生徒会長に無理やり生徒会に入れさせられたのだから、モチベーションを保つのはなかなか難しい。
流石にタバコなどは注意するが、小さな事は見て見ぬふりをする。
だが、最近見て見ぬふりをするのも仕方ない状況になった。
その理由が、生徒会に新設された新しい「科」にある。
「相談科」というのが新しく出来た。
内容は生徒が抱えているトラブルを生徒会の力を使い解決の手助けをしようというものだが。
聞こえはいいが要は便利屋のようなもので、美術部のモデルをやってくれと頼まれたり。部活動の応援に来てくれだったり、中にはいなくなった猫を探してくれといった依頼もあった。
7月7日に学校で開催された七夕祭りの後に新設され、最初は物珍しさから様々な依頼が飛び混んで来た。その度に大忙しだったが、人の飽きというものは案外早く来るもので今ではやっと依頼の数に落ち着きが出て来ている。
相談科は風紀委員に作られた科なので実働隊は俺と一般生徒から選ばれた清一の二人だけだ。
何故清一なんだと思ったが、決めたのは生徒会長。逆らうことは出来ないのだ。
「校務員の田中さんから依頼がきてるわよ」
生徒会室に入るなり椅子に座ったままいきなりそう言ってきたのは俺と同じ2年生にして美貌の生徒会長。鳴海杏子〈なるみ きょうこ〉だ。
通称「クイーン」。
「なんでも倉庫整理を手伝って欲しいんだって。校務員室にいるからそこに来てくれだってよ」
生徒会室に入るなりすぐ依頼か。俺は、げんなりした顔をする。
とうとう校務員からも依頼が来たか。最近依頼は無かったからこれは久しぶりの依頼だ。
「ほらそんな顔しない。あんたどうせ風紀委員長だけだったらまともに仕事してないでしょ」
う、それを言われると反論出来ない。
「わかった。清一を連れてすぐ行って来る」
諦めた俺は生徒会室にバッグを置いた。
「よろしい。いってらっしゃい」
杏子が他人事のように笑いながら言う。
くそ、こいつには面倒ごとを押し付けられてばかりだ。いつか仕返しをしてやろう。
と思ったが…
こいつにそんな事したら「やられたらやり返す……」といったテレビで流行りそうな事を言いながら強烈な反撃を食らわされるのが落ちだ。
俺は革命の炎を一気に沈め、清一を呼ぶため生徒会室を後にした。