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花の行方

「質問したい事もあるだろうからその前に、詳細に説明しよう。まず、田中さんは夜倉庫から植木鉢を一つ取り出し花壇のアサガオを1本その植木鉢に移し替えた。そしてそれを門の前に置いた。正信も見たと思うけど花壇から門までの道のりにあった土はこの時に植木鉢からこぼれた土だったんだ」


なるほど、そういう事か。清一が倉庫で確認していたのは植木鉢の数だったのか。


「ちなみに門の前の土の後が一番大きかったのは植木鉢をそこに置いたからなんだ」


植木鉢の底に開けられた水はけ用の穴から土が落ちたんだな。


「夜は田中さんが学校の見回りをしているから女子テニス部員はどうしても田中さんの協力が必要だったんだ」


「その後女子テニス部員が門の前に置いた植木鉢を回収した」


「次の日、アサガオが一本無くなっていることなんか誰も気づかないと思っていた女子テニス部員と田中さんはその後何もしなかった。だが、一時限目と二時限目の間、僕達は田中さんにアサガオが一本減っている事に気がついた生徒がいる事を伝えた」


気がついた生徒とはもちろん杏子の事だ。


「田中さんはその生徒が花の本数を見間違えた事にして、僕達が授業を受けている二時限目の間に校務員室に咲いていたアサガオを1本花壇に植えたんだ」


清一がさっき校務員室の前で確認したのは外に出しているアサガオの本数を確認するためだったのか、これで俺が二回目にアサガオを見た時に感じた違和感の正体がわかった。


あの時アサガオは1本減っていたのだ。


「二時限目が終わって僕達が花壇を確認した時にアサガオが10本揃っていたのはこのためだったんだよ」


「あたしの勘違いでは無かったのね」


「ああ、登校して来た時点ではアサガオの本数は確かに1本減っていたんだ」


杏子は納得したようだ。


「僕たちは女子テニス部に花の事を聞きに行ったけどあの時事前に田中さんから話を聞かされていたんだ。だから僕たちに見間違えたんじゃないかと言った。だけどあの時一つミスをしたんだ」


「なんだ?そのミスって」


俺は清一に聞いた。


「実はあの時正信は山下氏に『花壇の花が無くなった』とは言ったけど『アサガオが無くなった』とは言っていない。だけど山下氏は説明をしていないのにアサガオが無くなったとあの時言った。それは山下氏がアサガオが無くなっている事を本当はわかっていて嘘をついた。ということになる」


なるほど。無くなったのがアサガオだということは犯人と俺達ぐらいしか知らないはずだ。


「そこから僕は女子テニス部が怪しいと思い始めたんだ」


清一の説明が終わると杏子が質問した。


「田中さんは花壇の花を見間違えた事にせず自分が抜いた事にすればややこしい事にならなかったんじゃないの?」


その通りだ。抜いた事にしていればそこで調査の手も終わっていたはずだ。


「それは、藤木氏や他の女子テニス部員と一緒に育てた大切な花だったからさ。田中さんは嘘でも花を抜いて捨てたなんてことが言えなかったそうだよ」


清一は悲しげに笑った。


そうか、清一が7時まで別行動をしたのはその間、田中さんに自分の推理を言うためだったのか。


そして田中さんは認めたんだな。自分と女子テニス部員がやったことを…。


「一連の流れは理解した。でも何で田中さんは女子テニス部員に手を貸したんだ?それに肝心の盗まれた花は今どこにある?」


俺は清一に聞いた。


「それには、今日学校を休んでいる女子テニス部一年の新井氏が関係している。今日新井氏は、学校を休んである所にアサガオを持って行った。田中さんはその計画の理由を知ったから協力する事にしたんだ」


清一がそう言うと車はスピードを緩め止まった。


どうやら話している間に目的地に着いたようだ。


杏子がその白い建物を見る。


「ここは、……病院」


目的地は七夕市にある病院だった。


「そう、新井氏が今日学校を休んでまでアサガオを持って行った場所。それは…」


清一が建物を見る。


「藤木氏が入院しているこの病院だったんだ」


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