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楽しかった思い出

生徒会室には誰もいなかった。


どうやら仕事が残っていない他の生徒会メンバーは帰ったようだ。


俺と杏子は自分の席に座る。


「家倉くん、何がわかったのかしらね」


杏子は椅子に座るなり机に置いてあるパソコンを起動した。


「毎度の事だが、さっぱりわからんな。前回の盗難事件の時も俺は寸前まで何もわからなかった」


俺は自虐を込めて笑う。


「だけどさっきも言ったがやる時はやる奴だ。きっと真相を解明して戻って来るだろ」


杏子がパソコンから顔だけ俺の方を向く。


「そうね。前回の事件の事もあるしあたしもそこは心配していないわ。ただ、持って来る真相がどんなものなのかわからないのが少し怖いわね」


流石に真相は選べない。良い真相かもしれないし悪い真相かもしれない。今回の事件の結末はどうなるんだろうか…。


俺は腕を組んで椅子に深くもたれかかった。


「そうだな」


しばらくすると杏子が突然「あった」と短く言った。


どうやらパソコンでお目当ての物を見つけたようだ。


杏子は俺を自分の近くに呼びパソコンの画面を見るよう示した。


パソコンには女子テニス部員がみんなで笑っている写真が映し出されている。


杏子が一人の可愛らしいショートカットの少女を指差す。


その少女はテニスラケットを持ち片手をピースサインにして、こちらに向かって満面の笑みを浮かべている。


「この子が一年の藤木香織ちゃんよ」


この子が…。


この子だけじゃない。写真に写っているテニス部員全員がとびっきりの笑顔を見せている。


「病気が発症する前に撮った写真よ。全ての部活動を新入部員を入れて同じように撮ったの。これはその時の一枚」


写真に写っている部員は皆幸せそうだ。


この時はまだ病気になるなんて思いもしなかったんだろうな。


毎朝女子テニス部員はどんな気持ちで水やりをしているのだろう。


もしかしたら死んでしまうかもしれない大切な仲間を思いながら水をやるのはどんな気持ちなんだろう。


田中さんだって同じだ。


皆この子が無事に帰ってくるのを待っている。


女子テニス部員や田中さんの気持ちを考えると胸が締め付けられる。


杏子も同じ事を考えているのだろう。


普段は滅多に見せない辛そうな表情をしている。


俺は自分の席に戻った。


杏子と俺は7時になるのを生徒会室で静かに待った。


俺達の気持ちを表すかのように、だんだんと日が傾いて来る。

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