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調査

清一が昼食を食べ終わると原田さんは持って来た物を片付け台車を押しながら中庭から出て行った。


俺も食べ終わった食器を食堂に返した。


「さて、グズグズしているわけにもいかないからさっそく校務員室に向かおうか」


清一が立ち上がる。


いつもなら食べ終わって一息入れるのだが今回はそうもしていられない。


しぶしぶ俺はマグロに対してのツッコミを封印し校務員室へと向かうことにした。



校務員室に着くと以前と同じように清一が扉を叩く。


中から田中さんが顔を出した。どうやら田中さんも昼食を今食べ終わったようだ。隙間から空の弁当箱が見える。


「おや、君たちか。どうしたんだい?」


田中さんが優しい笑顔で尋ねる。


「実は田中さんに聞きたいことがあるんです」


俺は突然の訪問に申し訳なく思いつつ言った。


「まあ、扉の前で話すのもなんだから中に入りなさい。お茶でも出すよ」


俺と清一は校務員室に入りテーブルに着いた。田中さんは空の弁当をしまい。お茶を持って来てくれた。


俺達は礼を言い、田中さんに訪問の事情を説明した。


どうやら田中さんの話によると花壇の花を見たのは女子テニス部が水をあげた後らしい。


つまり、花が消えたのは少なくとも女子テニス部が水をあげた時よりも前ということになる。


清一は顎に手を当てて何かを考えている様子だ。


「すみません、田中さんは夜学校の見回りをしていますよね。その時に異常は無かったのですか?」


なるほど、確かに夜間のうちに無くなっていた可能性も考えられる。


だが、


「いや、夜に異常は無かったよ。花壇の花もその時は全てそろっていたと思うし。朝、校門を開けるときもチラッと見たけど異常は無かったと思う」


どうやら夜の間は花があったようだ。


「そうですか、わかりました」


清一はまた何かを考え始めた。


話すことが無くなったので、校務員室は静まり返る。


俺は場を繋ぐためあたりを見回し言った。


「ところであの時飾っていた花はどうしたんですか?」


昨日校務員室に入った時に飾ってあった花が今は無くなっている。


「ああ、それならほら外に出してるんだよ」


田中さんは校務員室の窓の外に向かって指を向けた。


見るとあの時部屋の中に入れていた花が外に出してある。


「天気がいい日はああして外に出してるんだよ。いつまでも室内に入れておくのもかわいそうだろう?」


なるほど、今日は梅雨時期にもかかわらず快晴だ。こんな日は外に出しているのか。


あれ?


俺は花を見て妙な違和感を覚えた。だが、感じた違和感の正体が何なのかわからなかった。


気のせいか…。


いよいよ話すことも無くなり、特に長居する理由もないので俺達は切り上げることにした。


いつものように田中さんに礼を言い校務員室を後にした。



昼休みも終わりに近づいている。


ほとんどの生徒が五時限目の授業の準備をしている。


廊下の人通りはまばらだ。


清一と廊下を歩いていると、正面から杏子が何やら紙を持って近づいて来た。


「いたいた、今日の欠席者のリスト持って来たわよ」


杏子は手に持った紙をヒラヒラとさせる。


さすが生徒会長仕事が早い。いや、早すぎるだろ。


俺は心の中で改めて杏子の凄さに舌を巻いた。


杏子は俺達にリストを見せる。


「見て、この中で花に水をあげてた生徒と関わりがありそうな子がいるの」


杏子はリストにのっている一人の生徒を指差す。


「一年生の新井結子〈あらい ゆうこ〉よ。この子は最初に水をあげていた女子テニス部の藤木香織〈ふじき かおり〉と同じクラスで女子テニス部にも所属してるわ」


噂通りだと藤木香織は誰かにいじめられていた事になる。もしや新井結子からいじめを受けていたのか?


「とりあえず、女子テニス部に話を聞かないといけないみたいだね」


清一は顔を上げるとそう言った。


その後、三人の話し合いで女子テニス部には俺と清一が部活中いっぺんに話を聞く事に、杏子は新井結子がどういう理由で学校を休んでいるのかを調べる事に決まった。


昼休み終了のチャイムが鳴る。


俺達は教室へと戻った。

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