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狂王戦(4)

 

「あっはっは!」


「はああああ!」


 斬撃が鳴り響く。赤い剣と白剣がぶつかり合う。アリスは今残っている力を振り絞り、剣撃をヴァンに当てるために必死になっていた。


「おいおい、この程度かあ!さっきの黒いの出せないのかあ?」


「・・・マジックボール[ファイア]」


「!」


 突如目の前に出てきた火の玉に驚き動揺するヴァン。火の玉は直撃するが全く動揺を見せていない。アリスは隙をついて攻撃を仕掛けるが、それを軽々と避ける。アリスはかなり動揺していた。図星であったのだ。もう魔力も闇の極大魔法を使い、ほとんど魔法は撃てなくなっていた。


(・・・今打てるとしたら上級まで・・・こうなったら)


「エンチャント」


「!?」


「[戦姫の加護]」


 ヴァンは、一瞬聞き間違えたかと思った。おなじエンチャントは重ねがけすると負担が大きいと聞いていたからだ。そしてその効果は本人の意思と関係なく切れてしまうとされている。しかし、その効果は


「おいおい!そんなこともできんのかよ!!」


 絶大である。アリスはヴァンの視界から一瞬のうちに消える。そして、右腕を切り落とそうとした。しかし、その剣撃は右手の指を1本切り落とす。アリスの体はエンチャントで光に包まれた体はさらに光り輝く。ヴァンは、その様子に驚きを見せたが、楽しそうに余裕がある様子でもあった。


(もっと早く)


 いつエンチャントが切れるかわからない中でアリスは願う。この男を1秒でも早く倒す、それだけを考えていた。少なくともみんなが起きて逃げることができる時間を稼ぐために。


(早く・・・早く・・・誰でもいい。起きて逃げて)


 しかし、その思いはまだ届かない。クレアたちは全く動く気配がなかった。


(早く早く・・・・!)


 ヴァンの一撃一撃を防ぐので手がいっぱいになっていた。しかし、ヴァンの動きは止まらない。


(もっと早くもっと速く)


 どの一擊でもいい、ただ当てるだけでいい。その思いでアリスは剣を振るう。だが、


「この程度か」


「な!」


 もうヴァンにはアリスの姿は使い終わったおもちゃ見る目になっていた。常人には捉えられないような剣撃の嵐の中で淡々とそう言う。


「まあ、なんていうの?ここまで面白くしてくれたお礼?あー敬意を表していいものを見せてやるよ」


「!!!!」


「《狂鬼招来 レベル2》」


 その声とともに黒い魔力に包まれるヴァン。その姿は既に悪魔のような姿をもっと凶暴化させていく。黒い鎧を身に纏い、腕には鋭い爪を宿す。そして、頭には黒い兜を身に纏う。


「何・・・それ」


「・・・《狂鬼招来》は1番最初に覚えたものなんだよ。お前も☆を持っているから知っているはずだよな。☆がつくことに自分のスキルは」


「・・・進化する」


 ヴァンの言うとおりであった。アリスの6重詠唱も3重詠唱の進化した形であった。その強さは☆がつくごとに増す。


「だからさ」


「・・・?」


「まだ《狂鬼招来》はあと4段階ある」


「・・・そ・・・んな・・・!」


 現実を見せ付けられるアリスはその場で崩れ落ちた。


(そんなの・・・そんなの・・・)


 絶望の淵に立たされたような感情にアリスはもう立ち向かうことができそうになかった。そんなアリスに静かにヴァンは迫ってくる。その時アリスのエンチャントは光を失った。


「・・・おいおい。もうギブアップかよ。あーあ・・・お前もそうなのか」


(・・・ハル、ごめんね)


 傷つけてしまった仲間のことを思う。そして、ヴァンはその感情とは関係なくアリスの目の前に立つ。そして、


「面白かったよ、じゃあな」


 悪魔のような右腕でアリスを切り裂く。


「あ・・・・?」


はずだった。


「え・・・?」


アリスは全く傷つけられていなかった。その代わりに


「アリス、ごめん遅くなった」


その悪魔のような右腕は、アリスが思いこがれたあの剣士の手にあった。

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