装備を買いに行こう
「じゃあ、行ってきます」
「はーい。いってらっしゃい」
ハルとアリスは、ハルの装備を買いに行くことになった。やはり前回のゴーレム戦でもそうだったようにただの装備では、壊れる確率が高いのだ。そういう話になったので昨夜、
「ハル君、君専用の装備を買いに行きなさい」
クレアがそう言ってきたのだ。最初はハルも渋っていたのだが、
「いいから行ってきなさい」
クレアのこの言葉に逆らえるわけもなく・・・・
「で、今この状態と」
「クレアさん目が本気でしたよね・・・」
街中を歩いているハルとアリスはクレアの説教モードを思い出して若干びくびくしていた。
「でも、本当にいいですかね・・・」
「お金に関しては大丈夫。というより今の装備のままだと将来的にはもっとかかることになる」
「え」
「本当のこと。まだ、今までダンジョンに行くこと少なかったからあんまり気にならなかったかもしれないけどあの剣必ずここ最近は壊してなかった?」
「う・・・!確かに・・・」
アリスの言う通りであった。1番最初にアリスといった時はダンジョンにいる時間が少なかったから壊れることが無かったのだが、今では一回ダンジョンに入るたびに剣を壊している。というよりは剣がハルのステータスに追いついていないのだ。
「あの剣は1本250ギルで今のところもう1本以上壊れている。このままだと1年も経ったら多分千本を超えちゃうと思う」
「そんなにですか?」
「うん。それにもっと下に行こうと考えているならあんな剣じゃ1撃で折られちゃうよ。ミノタウロスとか知ってる?」
「はい。確か第十階層のダンジョンボスで第十一階層以降は普通にダンジョン内にでてくる上級モンスターですよね?」
「その通り。あいつは生半可な状態で戦ったら、絶対に死ぬ」
真剣な目でアリスはそう言った。
「ミノタウロスはあの巨体でものすごく動きが速い。その上あのパワーと耐久力・・・・ダンジョンこうあいつにやられただけでこのダンジョンというものができてから数十万人が犠牲になっている」
「そんなにですか・・・・!」
ミノタウロスの強さを改めて感じ、若干怖くなったが、それと同時に装備の重要性が分かってきたハルであった。
「そういえば、これから行く店って大丈夫ですか?」
「・・・大丈夫。行きつけのお店。なかなか曲者なんだけど」
「曲者・・・」
(曲者かあ・・・まあ、僕も人のこと言えないだろうし・・・)
そんなことをハルが考えていると・・・
「ついた」
「ここが行きつけのお店ですか?」
少し大通りより外れた場所にこじんまりとした家があった。
「イシュいる?」
「やあ、アリス、今回は何のご用件かな」
扉を開けるとカウンターのところにニコニコと小さな少年がいた。その周りにはたくさんの剣や杖、防具が大量おいてあった。
「この子の武器を買いにきたの」
「それが噂の『オールゼロ』君か」
「え・・・」
「なぜかって?愚問だね。あんな有名になった3人を僕が知らないわけがないだろう」
そう今度はケラケラと笑っている。よく笑う人であった。
「まあ、アリスの近くにいる人は個性豊かな人物だからね。僕も含め」
「あなたはいつも通りね。さあ、ハルに合う剣を教えて」
「え?」
ハルは驚いた。アリスは普通にハル専用の剣といったのだ。今初めて会ったのに、そんなことがあるわけない。しかし、そんなハルの考えを裏切るように、
「はーアリス君。君はなぜ先にネタばらしをしちゃうのかな。ハル君?」
「は、はい?」
「さあ、これをどうぞ」
イシュはカウンターの上に置かれたのはロングソードとは言えず、両手剣に近いような中間のような剣であった。手に取って持ってみると片手でも持ち上げられるような軽さであった。しかし、その特徴はそれだけではなく、
「なんでこんなに色がはっきりと分かれているんですか?」
イシュに渡された剣は刃の部分が真っ黒く、そして、剣の中心は真っ白な白黒がはっきりとしている剣であった。
「イシュ、こんな剣もらってもいいの?」
「おいおい、アリス君、誰があげると言ったんだ?」
今度はにやにやしながらアリスに向かってそう言った。
「・・・条件は?」
「うーん・・・どうしようかなあ。例えば、ハル・クラリスのステータスとかどうかな」
「「!」」
「なんだい?安いものじゃないか。その剣はかなりレアなモンスター2体を使っているんだ。いいだろう?一回見てみたいんだ。『オールゼロ』と言われている所以をね」
イシュはハルを見てそう言った。
「それはできないって言ったらどうする」
「そうだねえ。渡すかどうか悩むか、適した金額で売るかどっちかかな。でも、不思議だねえ。ステータスゼロなら別に見せてもいいだろうに」
「それは・・・」
イシュが言った言葉は確かにそうであった。もう知れ渡っている情報の開示で武器をもらえるなら問題がないはずだ。しかし、ハルの今のステータスはもう0ではなく、そして、ユニークスキルがばれる可能性もある。そんな考えがアリスとハルの頭の中によぎった時、イシュは、
「それとも・・・それは昨日のゴーレムソロ撃破に関係があるのかな?」
「!なんでそれを」
「僕は色々と知っているのさ。たくさんのダンジョン攻略者の事やアリス君のこと、そして、クレア君の事もね」
「クレアさんのこと・・・?」
「あれあれ、ハル君は知らないのかな。だってあの子は」
「イシュ」
ハルが違和感を覚えた瞬間隣で魔力が増えていくのが分かった。
「イシュ、これ以上私たちをからかうな」
「おーおー怖いねー分かったよ。それ以上は言わないよ。ハル君」
「はい」
「君はこれからもっと強くなる。けれど必ず君の前には壁が出てくる。君にはその壁を壊していけるかな」
イシュの顔が獰猛な顔になっていた。そして、見つめてくる。
「・・・もちろんです」
「どんなに無理そうな壁でもか?」
「当たり前です」
イシュのさっきに満ちた目をハルははっきりと見つめていった。
「・・・・あははははは!いいね!やっぱりいいね君たちは!」
「・・・・」
「いいよ。それはあげよう」
「条件はいいの?」
アリスがまだ緊張を緩めずに、聞いてみる。しかし、イシュは、
「うん、ただ、こうやってたまに話に来てくれよ」
「話す・・・」
「そう、話すだけでいい。そして、君たちは僕に楽しみをくれよ」
「・・・あんまり話したくないような感じ。相変わらずだね」
「まあ、そう言うなよ。アリス君」
「・・・ハル君」
「はい」
「その剣で私たちを守ってくれる?」
ハルは剣を持ち上げてこう言った。
「この剣に誓って」
「ではでは、その剣ブライトバスターをハル・クラリスに授けよう」
満面の笑みでイシュはそう言った。




