勝利、注目、気をつけろ?
「ハル君やったね!」
ハルが叫んだ後クレアはハルに駆け寄っていた。治癒魔法をかけるためである。ほとんどダメージは受けていなかったが、それでも少しはダメージを受けている。今はダンジョンだ。いつまた、モンスターが出てくるかわからない。
「ヒール」
クレアがそういうとハルの身体は光に包まれて細かい傷が治ってきていた。
「本当にすごいですよね、クレアさん」
「え?」
「だって、治癒魔法って人によってはここまですぐに直せないらしいじゃないですか」
「あーまあ、アリスの傷とか治すこと多かったしそれでかもね」
そう少しだけ笑って言うクレアさんにハルは気になってしまうことがあった。
「前までは一緒にダンジョンに潜っていたんですか?」
「・・・そうだよ。でも、ちょっとあることが起きて・・・」
さっきの顔とは真逆に暗い表情になってしまったクレアにハルは焦っていた。
「すみません。僕余計なことをまた聞いてしまって・・・」
「ううん、ハル君のせいじゃないもの・・・ねえ、ハル君?」
すごく不安な顔をしているクレアはハルを見つめて聞いてきた。
「なんですか?」
「ハル君は、私がどんなやつでも怖がらない?」
「急にどうしたんですか?当たり前じゃないですか」
「・・・いや、なんでもないの。それよりも傷の具合はどう?」
ハルの身体は全部治って、また完全に動けるようになっていた。しかし、
「剣が・・・」
「あ・・・」
さっきのゴーレムとの戦闘でハルの安い剣はもう使い物にならなくなっていた。
「僕が剣を持っていない状態じゃ、今二人だけじゃまずいんですが・・・アリスはどうだったんだろ」
「私も終わったよ」
「アリス!大丈夫だった?」
ハルが状況を考えてアリスがどうなったか気になっているとアリスは何事もなかったかのように横に来ていた。
「・・・ゴーレム倒したんだね」
「はい」
「おめでとう」
「はい!」
ハルが自分の壁を破ったことにアリスはとても喜んでいた。
「その事は確かにうれしいんだけどハル君の剣がもうボロボロで・・・」
「じゃあ、まずはダンジョンから出よう。そのままはやっぱり危ないし、それにさっきので私たちはまた注目されちゃってる」
さっきの戦闘は周りでダンジョンの探索を行っていたダンジョン攻略者にとっては異常な光景であったためにいつの間にか人が集まってきていた。
「なんだ、あの少年は・・・」
「ゴーレムをあんな装備で・・・しかも見たことない顔・・・・もしかして今年のやつらの一人」
「それに隣にいるのって・・・〔魔王姫〕じゃない・・・今まであんなに派手なことしてなかったのに・・・」
「声かけてみるか・・・チームに入らないか聞いてみよう」
ガヤガヤガヤガヤ!
アリスたちが周りに気づくと同時にあたりは騒がしくなっていった。そして、声をかけようか悩んでいるものまでいた。
「・・・これ、まずいですね。さっさと帰りましょう」
「そうね。アリス、エンチャントお願い」
「了解。エンチャント[疾風演武]。ハル、帰るまでは私の剣を使っていて」
「わかりました」
アリスが詠唱し、囲まれないように周りの人をよけながら三人はダンジョンを抜け出すために走った。
「・・・なあ、あれって」
「キシシ!ああ、〔魔王姫〕もいたんだ。あいつとつるんでる奴なんてあいつしかいないだろ!キシシ!」
「おいおい、そんなのラッキーだなぁ。今までどこに消えてたんだろうな」
そんなハルたちを見ていた中でハルの異常性とアリスの事が気になっていなかった男たちがいた。その男たちは牙のようなマーク、それは最近目立ってきているチーム・バイスの一員を表すマークであった。一人は、顔がオオカミのようになっているいわゆる獣人、残りの二人は人間であった。
「キシシ!どうする?」
「そうだなあ。おいウリフェア。あいつらのにおい覚えたか」
「人を犬と同じにするでない・・・もちろんもう辿ってある」
「キシシ!さすがだなあ。本当にラッキーだな。俺たちは。キシシ!」
「では、行こうか」
その言葉を聞いて歩き始めていく3人は笑ってある人物の名前を言った。
「「「さあああああああて、いい子で待っていろよ、
クレア・ローズ
」」」




