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幼馴染みだよ  作者: 塔子
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【9】おまけ①

本編終了後のお話は

サコのマタニティライフです。


注:妊娠ついての表現等は全て想像内のものです。


「え?もう一回、言って!省吾!」

「……――――」


「だから、聞こえないって!大きな声で!」

「…か――が、――た」


「いい加減にして!相変わらず、気の小さい男ね!!」

「…彼女が、出来た」


「……はあ?」



こういうのを、青天の霹靂って言うのよね?


あの、省吾に、彼女!?



「だれ?いつ?どこで?どんな風に?告白したの?美人系?癒し系?年上年下?同級生?」


「そんな矢継ぎ早に質問しても、ショーゴは答えられませんよ」



今、夕ご飯を小神殿内のキッチン横のテーブルに座り、3人で食べている。


私と旦那さんと幼馴染みと。



「だって!ラウル!気になるじゃない!この省吾に彼女だよ!」



食事中に大きな声を上げてのお喋りは行儀が悪い。


分かってるけど、これが落ち着いていられますか!


ラウルは「ゆっくり、食事をしながら、話を聞かせて下さい」と優しい笑顔を見せる。


何が、ゆっくり、食事をしながら、よ!


これだから、聖職者は!


万人受けする笑顔をするなー!


その笑顔も、私だけのものなんだから!


ぷっと頬を膨らませ、不機嫌です!をアピールすると、省吾は「胎教によくない」と真顔で注意してくる。



「だったら、もったいぶってないで、早く教えて!」



本当に言葉を選びながら、ゆっくり話す省吾。


それは、脳内で再現ドラマが出来るぐらい的確なストーリー展開。


私は身を乗り出して、幼馴染みの初カノちゃんの話を聞き、ラウルは静かに黙って聞いている。


こうして、異世界での週末の夜が更けていった。







この異世界に勇者として召喚された省吾はこの国の姫を救出し、魔王を倒し、世界を救った。


そんな勇者が、私の下に毎週末元の世界からこの異世界へ渡ってくるようになった。


私と省吾は幼馴染み。


今までも、そして、これからも――。













私が考える幼馴染みとは、家族よりも長い時間を共に過ごし、お互いを誰よりも知っている仲だと、私は思っている。


だからと言って――。



「さ、智美。乗って」

「…嫌だ!!」

「ちゃんと乗らないと」

「嫌だ!」

「誰にも言わない」

「!!!」



いくら幼馴染みだと言え、お互いの全てを知っているとは言え、私は省吾の前で乗る事は出来ない。


しかも、元の世界からわざわざ持参してくる?



「早く、乗って」

「だ、だから!どうして、乗らなくちゃいけないの!」

「妊婦の体重管理は大事だって、言っただろ!!」

「省吾は、見ないって言うなら乗る!」

「それじゃあ、意味が無い」

「………」



私は妊婦だ。


そんな私の為に週末毎に、省吾は妊婦に必要な衣類やグッズや知識までも、持ち込んで来てくれる。


有り難い。とても、有り難い。


でも、省吾、そこまでする事無いんじゃないの!



「私の体重を知って、どうする?」

「急激な増加は良くない」

「………」

「妊娠前の体重と、今の体重を比べて増加具合を知りたい」

「!!!」



諦めた。


普段はヘタレなくせに。


最近の省吾は、なかなか引かない。


私は体重計に乗り、素直に妊娠前の体重を告げた。



「はい、これ、今月号、読んでおくように」



渡されたのは“はじめての赤ちゃん”という妊婦さん向けの雑誌。



「いつも、誰が買ってるの?」

「俺」

「一人で?」

「いや、友人と学校の帰りに本屋に寄った」

「!!!」



もう少し、人の目とか気にした方がいいよ。



「智美、食事はカロリーオーバーしないように。それと、塩分は控えて」

「…うん、分かった」

「疲れたら、すぐ休む」

「うん」

「重い物は持つな。立ち仕事は無理するな。あと、段差のある所は――」

「分かった!分かってるってば!!」



私は省吾の背を押した。


さっさと、元の世界に帰れーーっ!!



「じゃあ、また」

「うん」



私の目の前で、省吾は消えて居なくなった。



「ショーゴは帰りましたか?サコ」

「…うん」



本当に少し、ほんの僅かだけ、私は淋しさを感じる。


“じゃあ、また”って省吾は、いつもと変わらないセリフを言って帰って行くけど、もしかしたら、今回が最後になって二度と来ないんじゃないかっていう気持ちが浮かんでくる。


例え、結果的にそうなっても、私は受け入れる。



「次の週末まで、サコを独り占め出来ます」

「ラウル…」

「あまり、ショーゴに触れさせないで下さいね」

「…そんなつもりは」

「僕は出来た人間ではないので、我慢の限界を越えたら爆発するかも」



ラウル!何を言うの!


爆発って、いくら何でも。


つまり、その爆発の矛先は私になるんでしょう!



「――という訳で、今夜は一緒に居て下さいね」



だ~、か~、ら~。


その笑顔は狡い。


小さく頷くと、ラウルは「大好きです、僕の奥さん」と言って、私を優しく抱き締めた。
















次の日。朝食後、村の子供達が小神殿にやって来る前に礼拝堂を掃除する。


小さな村の小さな神殿なので、私一人で十分だ。


綺麗になった礼拝堂を見て、私は満足する。


午前中は、ラウルが先生なって子供達と一緒にここでお勉強タイム。


お昼になれば、昼食を食べに子供達は家に帰り、午後は自由に遊ぶ。


その間に、私はお菓子作り。


料理はイマイチだけど、お菓子作りはそれなりに自信はある。


今日はプリン。


この異世界に電気は無いので、当然、冷蔵庫なんて無い。


なので、省吾にクーラーボックスを持って来て貰い、ラウルの氷の魔法で冷やす。


私って、頭いいー!!魔法、便利~!!


という事で、プリンを蒸す、冷やす、カラメルも作る。


子供達が「サコ!美味しい!」や「サコ!最高!!」って言われたら、もう、頬が緩みっ放しだよ!!


大きなクーラーボックスを両腕に抱え、子供達の元へ。



「あっ!!!」



クーラーボックスで足元が見えなかったのがいけなかった。


あれほど、口が酸っぱくなる程、省吾に言われていたのに「段差には気を付けろ!」って。


クーラーボックスは守った!プリンは守った!


でも、私が…。



「あいたたた…」



思い切り、尻餅を付いてしまった。
























「だから、ラウル!ちょっと尻餅付いただけなんだし、産婆さんだって、大丈夫だって言ってるんだから大丈夫なんだって!!」



私の訴えも、ラウルは少しも聞く耳を待たない。



「今回は、たまたま大丈夫だっただけです!反省も込めてしばらくは安静です!」

「……ち」



軽く舌打ちものだ。



妊婦は病人じゃないっていうの!


別に、体調だって悪くないし、散々省吾に体調と体重管理されていて、すこぶる順調なのに。


ベッドで一日中、ゴロゴロなんて、退屈だよ。


私は仕方なく、省吾が持って来てくれた雑誌を読む事にした。





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