怒り
「復讐の夜に」5話です。
いつも大量に本を読んで勉強してます。
その成果が生かされればなと思います。
では楽しんでください。
「待たせたな」東条は大して悪くないというような調子で言った。
「先に注文しちゃいました。すいません」オレも大して悪くないというような口調で言った。
それから東条はウォッカを注文し、オレはまたビールをたのんだ。
「東条さん、最近顔色悪いですね。何かあったんですか?」オレは少し酔い始めてきた東条に聞いた。もちろん理由は知っているのだが。
「実はよぅ、1か月前から変な手紙が送られてくるようになってうっとうしいんだ。何かオレを監視しているみたいでよぅ気持ちわりいんだよ」東条は語気を荒くして言った。
オレは心の中で東条を嘲笑った。そのうちお前は犯人から電話がかかってきて首吊ふ頭に呼び出され、殺されるんだよ。
手紙のことをオレに話した東条は自分の武勇伝を語りだした。
「その時オレはこう言ってやったんだ。オレのダチに手を出すなってな。そしたらそいつらしっぽ巻いて逃げちまった。あの時のあいつらの顔を見せてやりたいよ」
このわけのわからない話が長引きそうなのでオレは適当に相槌を打ち、話を核心に近づけることにした。
「東条さんに1年前死んだ友人はいませんでしたか?」オレはさりげなく聞いてみた。それは一か八かの賭けだった。そのまま真相を語るか、変だと思い、話題を変えられるか。
オレの心臓は高鳴りだした。
「ああ いたよ。まあ友人とは思わなかったけどな」
ビンゴ!
「名前はなんて言うんですか?その亡くなった友人の」これで桜木太陽という名前がでればオーケーだ。
「桜木太陽という名前だよ」思った以上にサラサラとしゃべるので拍子抜けしたが東条の口からその名前を聞くことができた。
「どうしてそんなこと聞くんだ?」東条は聞いてきた。やはり来たか。
オレは前から用意していた理由を言った。
「オレの友人の先輩が亡くなったという話を聞いたので知っているかどうか訪ねたんです」
東条はふん、そうかという感じで納得してくれた。
あとは殺したかどうか聞くだけだ。だがオレがそれを聞く前に東条が自ら語りだした。
先輩のお兄さんを殺したときのことを。
「実はな、あいつを殺したのはオレなんだよ」かなり酔っているらしく、顔を真っ赤にさせてしゃべりだした。
オレは驚いた顔をする。
「あいつとは中学の時からの幼馴染だった。だがオレはあの男が大嫌いだったんだ。あいつとつるんでやったのはテストを教えてもらったりするためだった。あいつ頭だけはよかったからな。それが一番むかついた。いつもいい気になって、オレのことを親友とでも思っていたらしいがオレはそんなこと一度も思ったことは無かった。そして大学生になってその思いはどんどん強くなっていったんだ」そこまで言うと東条は残りのビールを一気にのんだ。そしてお代わりを頼む。
オレは体が沸騰するような感じがした。話を聞く前は冷静に対処しようと考えていたがそれはできなかった。次はたぶん、殺した時のことを言うのだろう。もう少し我慢しなければ。今日は真相が知りたくて東条を誘ったんだ。
東条は続きを話し出した。
「そんな時オレにチャンスが来た。あいつが一人で自殺名所で有名な海岸に釣りに行ったんだ。オレは早速友人にアリバイ証言を頼んで飛降り岬に言った。金があればアリバイ証言なんて簡単だったよ。そしてオレは桜木を突き落としたというわけだ。あいつがオレと同じ大学に入学したと聞いたときは吐き気がしたね。どうして志望校を言ったんだろうと後悔した。あいつがいなくなってせいせいしたよ。ああそう、あいつにはたった一人の肉親の妹がいるらしいな。お気の毒に最愛の兄を亡くしてさぞ悲しいだろうな」そう言って東条は大きな声で笑った。オレはそれが許せなかった。
オレはすごい勢いで席を立ち、自分の分の勘定をテーブルに叩きつけた。
「今日はありがとうございました」ぶっきらぼうにそう言い、「ウミガメ」を後にした。
東条は驚いたようだ。
10月の夜は肌寒い。半袖で来てしまったのは間違いだった。
オレは自転車を漕ぎながら携帯のボタンを押した。アドレス帳の桜木陽子という所を選択し、かけた。
コール音が鳴っている。東条は最低なやつだ。あんな奴生かしておく意味がない。今日の話でよく分かった。いままでは殺すことに迷いを感じていたが、今は吹っ切った。
ガチャという音がして先輩が出た。
「もしもし先輩。夜遅くにすいません」時間は10時を超えていた。
「どうしたの?」先輩が心配そうに聞いてくる。
「オレ、オレやっと決心がつきました。東条を殺します。あなとのお兄さんの仇を討ちます」オレは静かな声で、一音一音確かめるように言った。
「そう。ありがとう」先輩も静かな声だ。
「じゃ、明日の講義頑張ってください」オレは暗くなった雰囲気を打破するようにわざと明るい意声で言った。
「なにかあったの?」先輩はそう言ったが、オレは電話を切った。それが良かったのだ。
オレは10月の夜空を眺めながら坂を駆け下りた。髪がなびく。爽快な気分だった。先輩に言ったことで少し楽になった。
「あー 腹減ったな」
オレは家からかなり離れたコンビニに向かった。




