計画
「復讐の夜に」第3話です。
この回は結構話が進むので苦労しました。
では楽しんで読んでください。
先輩と出会てから3か月経ったある日、オレはS大学の近くの喫茶店で先輩と話していた。東条雅俊を殺す計画について。
その喫茶店は人の出入りも少なく、マスターはいつも寝ぼけて小説を読んでいるので小声で話せば誰かに聞かれる心配はない。
「ここを選んだのは正解でしたね」オレはアイスコーヒーを飲みながら言う。
彼女は笑い、「これから作戦会議の場所はここで決まりね」と茶目っ気たっぷりに言った。
先輩は白いワンピースを着ていて、清楚な感じがした。白い肌も美しい。
「最近私たち、いっしょにいることが多いから付き合ってるとか言われないかな」先輩もアイスコーヒーを飲む。
「ほとんどそんな感じじゃないですか」
「やだあ もう」彼女は微笑む。
事実、オレと先輩は付き合ってはいなかった。あの夜に「ウミガメ」で先輩を抱きしめてからは何も発展はなかった。まあそれまで通りに話せるのはいいのだけれど少し残念だった。
オレは本題に移ることにした。
「先輩。オレあの事件のことを調べてきました」あの夜の翌日にインターネットで調べたのだ。
「どうだった?」先輩は優しいまなざしでこちらを見た。
「いろいろとわかりました。殺されたのは桜木太陽さん21歳。1年前の11月9日2時ごろに殺された。
場所は自殺名所で有名な飛降り岬。まあそれもあって記事には自殺と書いてありましたが」
先輩の顔が見る見るうちに険しくなっていく。
「あの日は忘れもしないわ。わたしはね兄が殺されたその日に東条を殺してやると決めたの」先輩はこぶしを握り締めている。その行為に先輩の怒りが暗示されていた。
「外傷はなし。釣りには一人で行ったので警察は自殺と判断。捜査は打ち切りになった。そうですね?」オレは先輩に確認した。
先輩はこくりと頷いた。
訪れた沈黙。
アイスコーヒーはもうなくなったらしく、吸うとガラガラと音を立てた。
そして先輩はすこし笑いながら言った。
「どうやって殺そうか?」
オレはどきりとした。
そうだ。今日はその打ち合わせをしにきたんだ。オレは思い出した。
「そのことなんですけど、道路で殺すとなると誰かに見られる可能性があります。できればそれは避けたほうが良いと思います」これは東条を尾行していたことからだった。
「そうね。流石進君ね」先輩は微笑み顔を横に向けた。
「じゃあ人目につかないところに呼び出す必要があるわね」先輩は言う。
「そうなんです。それが問題なんです」
「じゃあ進君が東条に近づき、呼び出すっていうのはどう?私は東条に顔を見られてるから怪しまれるわ」確かにそうだ。
「でもたとえ僕が東条と親しくなって人目に呼び出してもおかしいんじゃ。たぶん不審がってこないですよ」
「それもそうね」先輩はがっかりしているようだ。
結局振り出しに戻ってしまった。
ふたりはしばらく考え込んだ。どうすれば東条をよびだせるのか。たしかあんな小説があったような。
オレはひらめいた。
「普通に呼び出してもダメ。だったら脅迫すればいいんじゃないですか」
「脅迫?」先輩は怪訝な目つきでオレを見た。
「そうです。これから毎日東条の家に脅迫文を送るんです。それといたずら電話とか。内容は適当でいいんです。金を返せだとか白状しろとか本当に何でもいいんです」
「それからどうするの?」先輩は興味があるらしく、身を乗り出して聞いてきた。
「それを1か月くらい送り続けて東条がノイローゼにかかりそうになったところでこう切り出すんです。やめてほしければ首吊ふ頭S倉庫まで来い。そこで話をつけようという内容の手紙をだすんです。こうすれば何が何でも首吊ふ頭に来る」
「いいわねそれ。首吊ふ頭っていう場所も良い」彼女はこの作戦が気に入ったらしい。
「じゃあ脅迫文は僕が作ります。飛び切り恐ろしい手紙を作ってやります」そう言うと先輩は「そんなことまで任せられないわよ。ただでさえ相談に乗ってもらってるのに」
「いいんですよそんなことは。一度乗りかかった船なんです。それくらいやりますよ」オレはにっこり笑った。やばい今のオレかっこいいかも。これでオレへの好感度はぐーんと上がったぞ。オレは脳内でこんなことを考えていた。
「ありがとう。助かるわ」先輩に感謝され、オレは失神しそうになった。
「じゃあ今日はこれくらいで」
先輩とオレは別れた。
オレは早速手紙を作った。内容はこうだ。
「オレはお前をいつも監視している。オレから逃げられると思うな」支離滅裂だが我ながらいい出来だ。あとは実感をだすために写真を撮ることにした。帰宅途中の東条の姿を。
東条の写真を撮るのは簡単だった。東条は毎日ほぼ同じ時間帯に帰るので先輩と同じ要領でやれば朝飯前だ。
オレは手紙に写真を添え、東条が住むアパートのポストに入れた。東条は気味悪がるに違いない。自分の姿を隠し撮りされた写真とともに「お前は監視されている」なんて手紙が入っているのだから。
いよいよ本格的になってきたぞ。まるで映画みたいだ。
オレは心が躍りだすのを感じた。




