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尾行

 新しい小説できました。

この発想は前からあって、やっと形にできたのでよかったです。

そしていつものごとく最後までワープロに書いたんですが、今までで一番長い作品になりました。

たっぷりと主人公の心の声を書いたつもりなので物語に厚みがでればいいなと思います。

感想お待ちしています。

では楽しんでください。

オレの先輩が人を殺そうとしている。

 先輩はナイフを握り、体を縛られた男に歩み寄る。先輩は冷静な顔だ。もちろん男は泣き叫び、助けてくれと命乞いをしている。

 先輩は男に向かってナイフを振り下ろす。


オレは先輩を止めなかった。止めようとしなかったのだ。

 

だってこの殺人を仕組んだのはオレだから。


 オレが桜木陽子先輩と出会ったのは半年前だった。先輩とは大学が同じで、よく見かけていた。だがいつもオレはただ見かけるだけだった。先輩に声をかけたのにはある理由があった。

 

先輩が少し異常だったからだ。

  

 今となっては何故あんなことをしていたのかはっきりとした理由を知っているが。

 オレが住んでいるアパートはS大学の近くにあり、歩いて帰っていた。オレは帰る途中に先輩を見ることが多くなった。だが少し様子がおかしかった。

 先輩はいつも体のしっかりした2枚目ふうな男の後方20メートルを歩いていたのだ。つまり男を尾行していたというわけだ。しかも週に3回(オレが見た限りでは)ほど。

 

 オレはすこし異常だなと思った。いまどきハードボイルド小説に出てくる探偵じゃあるまいし尾行だなんて。

 そのあとも10回ほど見かけたので不思議に思い、声をかけてみた。すると先輩の体はびくっとなり、オレのほうに振り向いた。

 先輩の額には汗が浮かんでいた。

 いままで自分でも不審だなと思いながらも見つからないことを祈りながら尾行をしていたがついいに見つかってしまったかというような顔をしていた。先輩はオレから視線を逸らす。やはり何かあるようだ。

 

 オレが先輩をひきとめているうちに男はさっさと先へ行ってしまった。先輩は悔しそうな表情を隠しきれない。

「私に何のようですか?」先輩はすこしいらだちながら聞いてくる。

「毎日あの男をつけまわして何をやっているんですか?」質問を質問で返す。

 少しの間、沈黙が流れる。

「あの男って誰ですか?つけてなんかいません。私はただ家路についているだけですが」

 先輩はあくまでしらを切りとおすつもりだ。この沈黙がなによりの証拠になるのに。

「オレは毎日みているんですよ。あなたがあの男を追っているところを」

「知らないです。これ以上付きまとうなら警察を呼ぶわよ」言われてしまった。これを言われたらお終いだ。

 オレはおとなしく引き下がることにした。

「そうですか。オレの勘違いみたいですね」オレは愛想笑いを浮かべた。たぶんその時のオレの顔はとても醜い顔だっただろう。

 その時はそれで何もなかった。それから先輩が尾行しているところは見なくなった。なぜあんなことをしていたのだろう。オレの胸にはそれが引っかかっていた。

 先輩に声をかけてから2週間後、転機が訪れた。先輩がコンビニの裏で男たちに絡まれていたのだ。

 夜の十一時。闇夜に包まれた道はコンビニの光によってかろうじて見ることができる。オレはコンビニで牛乳を買い、家に帰るところだった。

オレは手にした牛乳パックが入ったコンビニの袋を放り投げ、男たちにつっこんだ。

相手は3人。どう考えても不利だが昔からオレはこういうのをほっとけなかった。たとえ自分が負けるとしても。

 だが案外にも男たちはオレが近づくととたんに逃げてしまった。どうやら携帯電話で警察に通報せれるとでも思ったのだろう。

 まったく近頃の不良といったら腰がすわってないというかなんというか。まあそのおかげで先輩に無様な姿を見せなくて済んだが。あんなのとまともに戦ったらやられるに決まっている。

 「ありがとう」先輩は開口一番にお礼を言った。お礼を言われたのは久しぶりだ。

「いや 当然のことをしたまでですよ」実際オレは何もしていないのだが。

 オレは道の隅に放り出されたビニール袋を拾い上げた。牛乳パックは袋からはみ出ていた。

「あなたはこの前の・・・」先輩はオレの顔を覚えていたらしい。

「はい。この前の言いがかり男ですよ」オレは冗談を交えて言った。


 そのあとオレ達は帰り道が同じだったのでいっしょに帰ることにした。

「オレの名前は荒道進です」

「わたしは桜木陽子」

 先輩はS大学の三年生でオレは二年生だった。大学では一回もしゃべったことがなかったのでその日はいろいろなことを話した。

 この前の尾行についても聞きたかったが先輩の楽しそうな顔を見ていると聞くにも聞けなかった。彼女の顔は曇らせたくなかった。

 帰り道の数十分は至福の時間だった。こんなに自分の思いを人に言ったのは何年ぶりだろう。先輩のアパートに着いたとき、別れるのが辛かったが、また今度会う約束をしてくれたのでオレはさわやかな気分で家に帰ることができた。

 それからオレはちょくちょく先輩と会うようになった。


 先輩と出会ってから2カ月後、先輩は男をつけていた理由を教えてくれた。

 オレと先輩は「ウミガメ」というバーで飲んでいた。2人ともかなりの量を飲んでいたが酔ってはいなかった。

 先輩とは当たり障りのない話をしていたが急に先輩がまじめな顔になり、真剣な口調でしゃべりだした。

オレはつばを飲み込んだ。

 「私はね、あの男を殺すつもりなの」先輩は静かに言った。

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