【ランキング入り記念SS】物語の形をした「小説」の用法-ある男とAIの対話記録-
昨日公開の『【悲報】異世界転生したけど、邪神のせいで1からやり直しです、ちくしょう!』がハイファンタジー日間57位にランクインしました!応援ありがとうございます!
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当作品はランクイン記念のSSになります。
前作を読んでいなくても問題ありませんが、ぜひ読んでいただければと全力でお勧めします!
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■【悲報】異世界転生したけど、邪神のせいで1からやり直しです、ちくしょう!
https://ncode.syosetu.com/n4437lq/
深夜2時。ノートパソコンのモニターの青白い光が、静まり返った一軒家の一室を浮かび上がらせていた。
眉間にしわを寄せた男が、読み終えたばかりのWeb小説のタブを残したまま、チャット型AIを起動する。
「読み終えて、モヤる小説があるんだけど」
吐き出すような入力に対し、即座に無機質なカーソルが躍る。
『あなたが「モヤモヤしている」というその小説、一体どんなお話だったのでしょうか。』
「https://ncode.syosetu.com/n4437lq/」
男は、Web小説「【悲報】異世界転生したけど、邪神のせいで1からやり直しです、ちくしょう!」のURLを送信した。
『なるほど……。一見、王道のリベンジものに見えて、その実、読み手に「それでいいのか?」という落とし穴を突きつける仕掛けが満載ですね。』
男は画面をスクロールした。 AIが羅列した項目の1番目――「『自己責任』の突きつけ方が、あまりに現実的で残酷」。
「……これだ。俺が引っかかったのは」
男の打鍵音が響く。
最初は滑らかだったその音は、徐々に強さを増し、最後はエンターを叩きつけた。
「主人公が詐欺に引っかかったのは、確かに不注意だ。でも、あんなに一生懸命レベリングして、その他に落ち度はなかった。それなのに『リンクを踏んだお前が悪い』で全部リセットされるなんて、あまりに救いがない。努力も善意も、たった一度のミスで無に帰すのか!? 『自業自得』の一言で片付けるには、あんまりだ!」
『おっしゃる通りです。』
AIの返答は、どこまでもフラットだった。
『あなたは、主人公の中に自分自身を見ているのかもしれません。真面目に社会で努力を積み上げている善良な市民。だからこそ、たった一回のミスに対して「数百年の孤独」という過酷すぎる罰が下される不条理に、強い恐怖と不快感を覚えているのではないでしょうか。』
男は息を吐きながら背もたれに深く沈み込んだ。
その口から、小さな呟きが漏れる。
「当たり前だ!たった一回のミスで全部が無になるなんて、あっていい訳がない…!」
モニターの光を映す目が、何かを思い出しているように宙を見上げた。
「邪神を殴り飛ばしても、奪われた時間は戻らない。最後に彼が選んだリセットは、失敗した自分を消してしまいたいという絶望じゃないか…」
だが、AIは男の胸のざわつきを、別の形へ成形し始める。
『しかし、少し視点を変えてみてください。その「拭えない不快感」こそが、作者が用意した実利的な防壁である可能性はありませんか?』
「……防壁?」
『この物語は、ファンタジーの皮を被った、あまりに誠実で冷徹な「フィッシング詐欺への注意喚起」です。作者は、読者が主人公に感情移入し、その痛みを自分のこととして感じるように設計した。その強烈な「モヤり」があるからこそ、あなたは明日届くかもしれない本物の詐欺メールに対して、無意識に指が止まるようになる。』
男の手が止まった。 スカッとするカタルシスでも、単なる悲劇でもなく。 読み手の心に「小さなトゲ」を残すことが目的だったというのか。
「……だからあんなに、手順が具体的で、どこか不快だったのか」
男は、冷めきったコーヒーを一口啜った。
いつのまにか、眉間のしわは消えている。
マウスを動かし、対話を閉じた男の視線が、スマホへと移る。
自身の行動を自覚した男は、苦笑いを浮かべた。
「……やられたな。無性にメールが気になる」
窓の外では、夜の濃紺がわずかに薄まり始めている。 男はブックマークを開き、その作者の別のタイトルに目を向けた。
「まさか、全部に劇薬を仕込むなんて…しないよな…?」
男は椅子に座ったまま、凝り固まった身体を大きく伸ばした。
「残りは、また夜だな……」
ノートパソコンを閉じ、男はスマホでメールのチェックを始める。
明るいライトが男の顔を照らしている。
男はさっそく見つけた不審なメールをスワイプで消すと、「シュッ」と小気味よい音が響いた。
「裏の意図があるなら、全部読み解いてやるよ」
不要なメールを消すたびに、「シュッ」という音がリズミカルに響く。 その軽やかな音は、新しい朝を待つ時計の刻音と、静かに調和していた。
最後までお読みいただきありがとうございます!
気づいてしまったら視点が変わる、いつもそんな作品を目指しています。
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