シロガネチームとの遭遇
## 1. 二度目の沼田遺跡へ
先週の成功に気をよくした俺たちは、再び沼田未管理遺跡へと向かっていた。レオの運転する年季の入った電気自動車は、軽快なモーター音を立てて進んでいく。前回とは打って変わって、車内は遠足前の子供たちのような期待感と熱気に満ちていた。
「今日もいい天気だね!絶好の探索日和!」
サクラが窓の外に広がる青空を見上げ、眩しそうに目を細めた。
「ああ、違いない。今日こそ一攫千金と行こうぜ」
運転席のレオが、バックミラー越しにニヤリと笑う。
「お兄ちゃん、そういうこと言ってると、ろくなことにならないよ」
助手席のミオが、呆れたようにため息をついた。
「そうだね。前回行った場所はもう調べ尽くした感じだし、今日は新しい場所を探してみよう」
俺が地図アプリをスクロールしながら提案する。
『ハルト、今日も楽しみですね。未知の情報が私たちを待っていますよ』
俺の肩の上、いつもの定位置に座るプリエスが、弾んだ声で思考を送ってくる。その声は、俺にしか聞こえない。
『ああ。今日はいったいどんな発見があるかな』
俺はプリエスの言葉に、静かに胸を高鳴らせた。
車は先週と同じ駐車スペースに止まった。俺たちがそれぞれの装備を入念にチェックしていると、もう一台、別の車が滑り込んできた。俺たちの車とは比べ物にならない、最新式の静音設計が施された高級車だ。
「お、他にも探索者がいるみたいだね」
サクラが物珍しそうに呟いた。
車から降りてきたのは、俺たちより少し年上に見える男女四人組のチーム。その装備は、俺たちが必死にバイト代を貯めて買ったものとは明らかに次元が違う、洗練された高級品ばかりだった。うわ、エリート感すげえな…。
## 2. 予期せぬ遭遇
「おはようございます」
俺たちを一瞥して、彼らのリーダーらしき青年が爽やかな笑顔で挨拶してきた。背中には、いかついライフルケース。銃器ライセンス持ちか。
「お、おはようございます」
俺たちも慌てて挨拶を返す。
「私たちはシロガネというチームです。以後、お見知り置きを」
青年は芝居がかった口調で自己紹介した。
『シロガネ……。ハルト、最近急速に評価を上げているエリートチームと同じ名前ですね』
プリエスの冷静な分析が、俺の脳内に響く。やっぱり、ただ者じゃないらしい。
なんとなく位置的に一番近かった俺が、代表して口を開いた。
「俺たちは……その、まだチーム名は無いんですが、僕はハルトと言います」
やばい、チーム名考えてなかった!だっせえ!今度みんなで真面目に考えよう。
「皆さんも情報探索で?それでしたら、効率的に探索するために、活動エリアを分けませんか?」
シロガネと名乗った青年が提案する。無用なトラブルを避けるための、合理的でスマートな提案だ。
「ええ、それがいいですね」
俺は彼の提案に頷いた。
「俺たちは今日、あちらの山の方の工場地区付近に行こうと思ってます」
俺が指し示すと、シロガネは「なるほど」と頷いた。
「では、私たちはあちらの工場群の方に行くことにしますね」
彼は俺が指したのとは別の方向を指差す。
「わかりました。ありがとうございます」
こうして、俺たちは互いの健闘を祈り、別々の方向へと探索を開始した。
## 3. それぞれの思惑
彼らと別れてしばらくしてから、レオがぽつりと呟いた。
「あのシロガネってリーダー、銃を持ってたな。しかも、かなり良いやつだ」
「うん。それに、刀みたいなのを持った女の人、すごく強そうだったなー」
サクラが少し興奮したように付け加える。戦闘員として、何か感じるものがあったのかもしれない。
「レオもライセンス取ればいいじゃないか」
俺が軽口を叩くと、レオは苦笑いを浮かべた。
「ライセンス取るのも時間と金がかかるんだよ。銃本体も高いし、盗難防止用の保管庫も必要になるしな」
「今のボロ家には、そんな設備を置く場所はない」
ミオが兄に追い打ちをかけるように、冷静に事実を告げる。
「だよな。そう簡単にはいかないか」
「でも、あの人たち、なんだか秘密めいてたよね」
サクラが首を傾げる。
「ああ、確かに。全員、どこかピリピリした雰囲気だったな」
レオも同意する。
「精神魔法使いもいたと思う。誰かはわからなかったけど、私たちのことを探っているような感じがした」
ミオが鋭い指摘をする。
「そんなことまでわかるのか?」
俺が驚くと、ミオはこくりと頷いた。
「うん。無遠慮に他人の心に踏み込んでくるような、不快な感じ」
まあ、初対面だし、警戒するのは当然か。俺ももう少し警戒心を持つべきだったかもしれない。
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一方、シロガネたちは工場群の一角で、350ml缶ほどの大きさの奇妙な装置を取り出していた。
「この測定装置って、いったい何なんでしょうね」
メンバーの一人、ケンジが胡散臭そうに装置を見つめる。
「さあな。上の連中が考えることは、俺たちにはわからんよ」
リーダーのシロガネが、半分諦めたように首を振った。
「まあ、私たちには関係ないことよ。お金のためにやってるって割り切らないと」
アヤが、妖しい笑みを浮かべる。
「計測には30分ほどかかるようです。予定通り、一通り設置してきますね」
刀のような武器を腰に差した女性のユウが、淡々とした口調で歩き出した。
「ああ。俺とケンジ、アヤとユウで二手に分かれて設置しよう」
「さっきのチームが行った方はどうします?」
ケンジがハルトたちの方を指さした。
「こっちが終わり次第、行くしかないな」
「もし揉めた場合は?」
ユウが冷静に尋ねる。
「黙らせればいいんじゃない?後腐れなくね」
アヤが楽しそうに笑った。
「まあ、何か文句を言われるかもしれないが、問題ないだろう」
シロガネはそう言うと、それ以上何も話さず、淡々と任務をこなすために動き出した。
## 4. 古びたロボットとの出会い
山の手の工場地区を探索していた俺たちは、巨大な倉庫の近くで妙なものに遭遇した。
「あ、あれ……動いてる」
サクラが指差す先で、古い犬型のロボットがゆっくりと動き回っていた。全身は錆だらけで、動作もぎこちないが、確実に稼働している。
「崩壊前のロボットが、まだ生きてるのか」
レオが技術者魂を刺激されたのか、目を輝かせている。
「情報エネルギーは感じない。背中の太陽光発電パネルが動力源みたい」
ミオが冷静に分析する。
『プリエス、あのロボットは?』
俺が脳内で尋ねると、プリエスが即座に答えた。
『はい、崩壊前の工業用ロボットですね。基本プログラムやメンテナンス機能がまだ生きているようです』
『何か結晶化できる情報は持ってるかな?』
『蓄積された作業データには期待できないかもしれません。ですが、このロボットを制御している工場の管理システムには、価値のある情報が眠っている可能性があります』
『なるほど……。襲ってきたりはしないよな?』
『魔物ではないので、その心配はありません。ただし、警備機能が作動した場合、対不審者用の措置を取る可能性があります。それが警告なのか、通報なのか、あるいは攻撃なのかは、この距離からでは判断できません』
プリエスが俺の肩の上で、興味深そうにロボットを見つめている。
『ハルト、話しかけてみましょうか?』
『そんなことできるのか?』
『はい。このロボットの通信規格は、私のデータベースに記録されています。試してみますね』
プリエスがロボットに向かって何らかの信号を送る。すると、ロボットはこちらを向き、そのセンサーライトを点滅させた。
「...ユーザー認証...失敗...。緊急時プロトコルに移行...。対話モード、起動...」
ノイズ混じりのかすれた音声で、ロボットが反応した。
『成功です、ハルト!このロボット、工場の管理システムの場所を知っているようです!』
『マジか!聞いてみてくれ!』
プリエスがロボットと高速で通信を交わす。しばらくすると、ロボットはゆっくりと向きを変え、動き始めた。
「...案内...実行...」
「え、なに?案内ってどういうこと?」
サクラが驚きの声を上げる。
「さあな……。でも、面白そうじゃないか。とりあえず、ついて行ってみようぜ」
レオが好奇心に満ちた目でみんなを見渡し、先陣を切って歩き出した。
ミオは俺の顔をじっと見つめ、何か言いたげにしていたが、レオが歩き出したので、仕方なくその後ろをついて行くことにした。
## 5. 管理システムでの大収穫
ロボットに案内されて、俺たちは工場の管理センターらしき場所にたどり着いた。
広い空間には、おびただしい数のサーバーラックと量子ストレージが整然と並んでいた。
「すごい……!こんな場所が手付かずで残ってたなんて!」
サクラが感嘆の声を上げる。
『ハルト、これは……!』
プリエスの声も興奮で弾んでいる。
『工場管理システムの中央データセンターです!生産管理データ、建物の設計図、インフラ情報……間違いなく、価値の高い情報が眠っています!』
「よし、手分けして情報を集めて、結晶化しよう!」
少しでも稼ぎを増やすため、情報解析と結晶化は、俺とミオの二人で行うことにしている。その間、レオとサクラは周囲の警備と、あの忠実なロボットの監視を担当する。
俺とミオは、早速サーバーラックに取り掛かり、情報の収集と結晶化を開始した。
## 6. ネズミの群れとの遭遇
作業に没頭していると、レオの鋭い警告が飛んできた。
「おい、何か来るぞ!」
「ネズミ……?」
サクラが呟く。
だが、それは普通のネズミではなかった。目が赤く光り、体が半透明に透けている。魔物だ。
「魔物のネズミだ!かなりの数がいるぞ!」
俺が探知しつつ叫ぶ。ざっと見積もっても二十匹以上はいる。
「ちっこいのは厄介だな」
レオが巨大なハンマーを構える。
「そうね……。ハルト、ミオ、後ろに下がって!そっちにも行くかもしれないから警戒して!」
サクラが叫びながら、指にナックルを装着した。
ネズミ型の魔物の群れが、甲高い鳴き声を上げながら俺たちに襲いかかってきた。小さいがゆえに素早く、数が多い。非常に厄介な相手だ。
サクラがナックルで何匹か叩き潰すが、その隙に他のネズミが彼女の足に噛みついてくる。
「痛っ!」
サクラが顔をしかめ、噛みついたネズミをそのまま壁に叩きつけた。
「サクラ!」
ミオが精神干渉魔法で数匹の動きを止めるが、まだ大半が残っている。
ネズミたちは素早く動き回り、サクラとレオも効果的にダメージを与えられずにいる。俺とミオを守りながら、逃げ回る小さな敵を殲滅するのは至難の業だった。
「くそ、キリがない!」
レオが忌々しげに舌打ちする。
俺も近づいてきたネズミをスタンロッドで撃退するが、遠巻きにしている個体には手が出せない。
「燃費が悪い……」
ミオが悔しそうに呟く。彼女の精神魔法は強力だが、エネルギー消費が激しい。つまり、金がかかるということだ。こういう数の多い雑魚相手では、コストパフォーマンスが悪すぎて躊躇してしまう。
「ミオ、無理するな!」
「わかってる!」
生命の危険があるわけではないが、このままではジリ貧だ。決め手に欠ける状況が続いていた。
その時、部屋の外から涼やかな声が聞こえてきた。
「お困りのようですね。手を貸しましょうか?」
## 7. シロガネチームの介入
現れたのは、シロガネチームだった。
「助かります!」
俺は迷わず叫んだ。
シロガネチームのメンバーが、流れるように戦闘に参加する。
刀を持った女性、ユウが、まるで舞うようにネズミの群れに斬り込んでいく。その太刀筋は洗練されており、一振りで数匹の魔物を正確に屠っていく。
リーダーのシロガネともう一人の女性、アヤは、おそらく精神系の魔法を使っているのだろう。ネズミたちを直接攻撃するのではなく、巧みにユウの斬撃範囲へと誘導している。
シロガネチームの圧倒的な戦闘力により、あれほど厄介だったネズミの群れは、瞬く間に殲滅された。
「ありがとうございました。助かりました」
俺たちが頭を下げると、シロガネは爽やかな笑みで応えた。
「いえいえ、困ったときはお互い様ですから」
「しかし、どうしてこちらに?」
俺が尋ねると、シロガネは悪びれもなく答えた。
「ああ、そちらの様子も少し見させていただこうかと思いまして。賑やかな声がしたので来てみれば、案の定、というわけです。お邪魔でしたか?」
「いえ、とんでもない。本当に助かりました」
「それは良かった。ところで、この辺りを少し調査させてもらっても?皆さんの邪魔はしませんので」
「はい、どうぞ」
俺は快く同意した。彼らが俺たちを助けてくれたのだから、当然の礼だ。
シロガネチームの一人、アヤが「うまくいったわね」と小さく呟いたのを、俺は聞き逃していた。
## 8. 疑惑の種
シロガネたちは、山の手の工場付近にも例の測定装置を設置して回っていた。
三十分後、彼らが装置を回収し始めた時、問題が発生した。三つほど装置が忽然と姿を消していたのだ。
「おかしいな。この辺りに置いたはずなんだが……」
シロガネが首を傾げる。
「彼らが間違って持っていった、とか?」
ケンジが、俺たちのいた方向を指差した。
「あるいは、意図的に、ね」
アヤが不敵に笑う。
「魔物や動物の可能性は?」
ユウが冷静に尋ねる。
「いや、この装置には情報エネルギーは含まれていない。魔物が興味を示すとは思えない。探知魔法にも反応はなかった」
「となると……」
シロガネの目に、疑念の光が宿った。
## 9. 紛失事件と深まる溝
しばらくして、俺たちのところにシロガネが一人でやってきた。その表情は、先ほどの爽やかさとは打って変わって、硬く険しいものだった。
「すみません、少しお聞きしたいことがあるのですが」
「なんでしょう?」
俺が応じると、彼は単刀直入に切り出した。
「実は、私たちが設置した空き缶のような装置が三つほど無くなっているんです。皆さん、何か見かけませんでしたか?」
「装置?いえ、見ていませんが……」
俺は首を傾げる。
「そうですか……」
シロガネが、あからさまに失望した表情を見せる。
「それ、大事なものなんですか?」
サクラが心配そうに尋ねる。
「ええ、とても大事なものなんです」
俺たちは本当に何も知らなかったので、「知らないです」としか答えようがなかった。
「まあ、盗んだ本人が素直に『知ってます』とは言わないわよねぇ」
後から来たアヤが、棘のある口調で言い放った。
シロガネがアヤを視線で制する。彼は探るような目で俺たち一人一人を見つめた。
「申し訳ないのですが、本当にご存じないか、調べさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「調べるって、どうやって?」
レオが警戒心を露わにする。
「まず、皆さんの荷物を見せていただけますか?」
やましいことは何もない。俺たちは少し迷ったが、疑いを晴らすために荷物を見せることにした。
「……ない、ですね」
ケンジが荷物を調べ終え、そう告げる。
「そうですか……」
シロガネはまだ納得していない様子だ。
「もう、いいでしょうか」
俺が少し非難めいた口調で言う。疑われているのが、いい気分であるはずがない。
「面倒ね。だから最初からこうすれば良いと言ったのよ!」
アヤが苛立ったように前に出た。その瞬間、俺とレオはぐらり、とめまいのような感覚に襲われた。
「やめてください!」
ミオの鋭い声が響くと、めまいが嘘のように消えた。
「許可なく他人に精神干渉魔法を使うのは、重大な規約違反のはずです!」
ミオが厳しい口調でアヤを睨みつける。
『ハルト、今、彼女が精神干渉魔法を使用しました。ミオが即座に遮断しましたが、次があるかもしれません。警戒してください』
プリエスが俺の脳内で警告を発する。
場の空気が、一気に険悪なものになった。
## 10. 管理ロボットの証言
そんな緊迫した状況の中、あの管理ロボットがのそのそと現れた。
「ロボット……?まだ残っていたのか」
シロガネが驚いたように呟く。
その姿を見て、俺はピンときた。もしかして……。
『プリエス、あのロボットに空き缶みたいな装置のことを聞いてみてくれ』
『了解しました』
プリエスがロボットに信号を送る。
「...システム内をスキャン...。未登録の異物を検知...。清掃プロトコルに従い、所定の場所に処理済み...」
ロボットが合成音声で答えた。
「え、なんだって?」
シロガネが間の抜けた声を上げる。どうやら彼もピンときたようだ。
「おい、その『変な機械』ってのは、これのことか?」
シロガネが持っていた装置をロボットに見せるが、ロボットは無反応だった。音声認識機能がないのか、あるいは権限がないのか。
シロガネが何度か話しかけても、ロボットは沈黙を保ったままだ。
「あのー、僕がやってみましょうか?」
俺が申し出ると、シロガネは「あ、ああ。頼む」と頷いた。
俺はロボットに近づき、装置を見せながら話しかけた。
「これを運んだ場所を教えてくれますか?」
『プリエス、通訳頼む』
『お任せください』
「...廃棄場所への案内要請を受理...。実行します...」
プリエスの通訳を介すと、ロボットは再びゆっくりと動き出し、俺たちをどこかへ案内し始めた。
## 11. 雪解け
廃棄場所で、シロガネチームの装置は三つとも無事に見つかった。どうやら、あの真面目なロボットが「未登録の異物」として律儀に廃棄していたらしい。
「本当に、申し訳ありませんでした」
シロガネが深く、深く頭を下げた。「皆さんを疑うようなことをしてしまい、弁解の言葉もありません」
「いえいえ、大事なものだったんでしょう?見つかって良かったじゃないですか」
俺がそう言うと、彼は心底ほっとした表情を見せた。「最初に助けてもらいましたし、お互い様です」
色々言いたいことはあったが、これで水に流そう。そう思った。
「ありがとうございます。そう言っていただけると、本当に助かります」
シロガネが安堵の表情を見せる。
「そっちの人にも謝ってほしいです」
ミオが、アヤをじっと見つめて言った。おお、ミオ、言うねえ。
「……ああ、そうだな」シロガネがアヤに目を向ける。「アヤ」
「……はいはい。すみませんでしたー」
アヤはバツが悪そうに、でもどこか誠意の感じられない口調で小さく頭を下げた。
「はい、とにかく見つかって良かったです」
まだ不満そうなミオをなだめつつ、俺が笑顔で場を収めた。
その後、ケンジとユウも丁重に謝罪してくれたおかげで、険悪だった空気はすっかり和らいだ。サクラとレオも交え、しばらく探索者同士の情報交換に花が咲いた。
## 12. それぞれの収穫と、新たな謎
その日の探索を終えた帰りの車の中で、俺たちはそれぞれの成果を確認していた。
「今日も結構稼げたよね、きっと!」
サクラが満足そうに言う。
「ああ。あの管理ロボットのおかげで、普通じゃ見つけられないお宝にありつけたからな」
レオがハンドルを切りながら振り返る。
「あのロボット、まだ動いてるのがすごい。健気だったね」
ミオが少しだけ微笑んだ。
「うん、あれはラッキーだったな。まあ、アンラッキーもあったけど」
俺が笑うと、レオも「まったくだ」と同意した。
その時、ミオが思い出したように言った。
「ねえ、ハルト。どうやってあのロボットと話したの?」
「え……」
来たか。一番聞かれたくない質問が。
「あー、それ私も気になってた!なんか、ハルトだけ特別みたいだったよね!」
サクラも興味津々といった様子で身を乗り出してくる。
プリエスのことを言うべきか?でも、彼女からはまだ許可が出ていない。
ちらりとプリエスの方に意識を向けると、彼女はゆっくりと首を横に振った。今はまだダメ、ということらしい。
「そのQSリーダーに、何か特殊な魔法でも仕掛けてあるの?」
ミオが、まるで全てを見透かすような目で俺をじっと見つめる。
「最初にあのロボットに案内してもらった時も、何か普通の通信じゃない、魔法のようなものを感じた」
「えーっと、これは祖父の遺品でさ。ちょっと変わった機能がついてるみたいなんだ。でも、俺もまだよくわかってなくて……」
我ながら、苦しい言い訳だ。
「へえ!じゃあ、今度俺に分解させてくれよ!」
レオが目をキラキラさせて身を乗り出す。やばい、この職人モードのレオは誰にも止められない!
「いや、それはちょっとな……遺品だから、壊したらまずいし……」
「まあまあ、いいじゃない!うまく行ったんだから!」
サクラが、ナイスなフォローを入れてくれた。
「そ、そうそう!それより、チーム名とかどうするよ?」
俺はここぞとばかりに話題を変えた。
「『ミオとその仲間たち』、でいいんじゃない?」
ミオが真顔で提案する。
「マジでそれにしちゃうぞ?」
俺が言うと、ミオは「ふふっ」と小さく笑った。
そんな他愛もない話をしながら、車は夕日に染まる山道を走っていく。
今日の出来事は、俺たちの心に確かな手応えと、そして新たな謎を残していった。
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