表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放されたタコの獣人、海の賢者として覚醒する 〜異国で勇者と公爵令嬢に見出され、大賢者へ〜  作者: 手羽本 紗々実(てばもと ささみ)
七章 灰翼教団の四騎士・死の騎士編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/78

70話 危機に陥ったのでドラゴンを味方につけてみた

【更新予定変更のお知らせ】

前回の後書きで来週火曜日(明日)とお伝えしていましたが、最終話までの目処が立ったため、今回より毎日更新に変更します!

完結までお付き合いいただけたら嬉しいです。

引き続きよろしくお願いします。

 魔王もどきが、杖を床に叩きつける。


 それに合わせて、黒い犬(ブラックドッグ)たちが動きだす。


 だぁ、もう! マジでキリがない!


 獣化なしで、なんとか奴の懐に入らないと。


 この広い空間をうまく使って、うまくできないか。



白炎(はくえん)――」



 俺が考えている一方で、ライリーさんが魔法を発動、しようとした。


 しかし。



「っ!?」



 その寸前で、突然黒い犬たちが消滅したのだ。


 魔王もどきを見上げる。



「……ちゃんと仕事をしているようだな。なによりだ」


「仕事?」



 なぜか満足げで、他人事のようだった。


 こいつの言っていることは、いちいちわかりづらい。何なんだよ。



「外だ」


「外?」


「ドクターとばあさん……あと、ジェイドの魔力の流れを感じた。あいつらが外でなにかをしたんだ」


「それで黒い犬が消えたんだな?」



 ライリーさんが頷いた。


 すごい。三人とも、グッジョブだ!


 ……なにがどうしてそうなったかはさっぱりだけど。


 あと、それでなんで魔王もどきが嬉しそうにしているのかも。


 これも計算の内、ってわけか?



「これから行う儀式のためには、すべての者に力を注いでもらわなければならない。

 その中心として私が選んだのが、貴様らだ」


「儀式って……まさか、禁術のことじゃないだろうな!? 禁術の資料を盗んだのはお前か!?」


「そうだ。あれらを封印しておくなど、愚の骨頂。生かしてこそ価値が生じるのだ」



 あっさり、肯定しやがった。


 つまり……こいつは、灰翼教団の四騎士、最後の一人。騎士団団長か?


 奥歯を噛みしめて、走りだしてつかみかかりたくなる衝動を必死にこらえる。



「……っ価値なんてない! 生かしちゃいけないものなんだよ!」


「なぜそう思う? まさか、貴様も死が恐ろしいなどと思っているのではあるまいな?」



 魔王もどきが、不満そうに目を細めて周囲をツカツカと歩いた。



「矮小な……死とは、生を受けた瞬間に約束される、最も公平な『結果』だろう」


「そんなことはわかってる! どう死ぬかじゃなくて、どう生きるかを考える!

 そうするべきだって思ってるだけだ!」


「ならばわかるだろう。人が魔法を戦いのために使う世界を終わらせるのだ。

 私は、それに至る道を整える」



 人が、魔法を戦いで使うのを終わらせるって。


 もう核心ついてるじゃないか!


 こいつは、あれをやるつもりなのだ。


 ユリシーズさん曰く、永遠に封印しておくべき禁術――土地の魔力を枯渇させる、魔導(アトラ・テラ)焦土(・ステリリス)を。



「ポルテ。あいつの挑発にのるな」



 わかってる。わかってるんだよ。


 すると、魔王もどきが杖を叩き、再び獣人の屍兵(アンデッド・トループ)が出現。


 俺は、黒い霧の剣を手にむかっていった。


 屍兵を瞬殺。


 続いて、魔王もどきに斬りかかる。


 刃が通った!


 ……けれど、奴は相変わらず、俺を見下ろしているだけだった。


 ああ。わかっていた。


 これは、罠だ。


 だけど、それでも――ここで退けば、奴の行為を許すことになるような気がした。


 それじゃあ、フレッドさんとむき合えない。



「いいだろう。貴様にちょうどいい、『死』を与える」



 魔王もどきが、右手を俺にかざすように広げた。


 無数の黒い刃が、襲いかかる。


 それを、炎が押しとめる。


 ライリーさんが間に入り、俺を庇うように魔王もどきから引きはなした。


 軽くふっ飛び、倒れたがすぐに起きあがる。



「ライリーさん!」


「……っ」



 彼は、左の脇腹をおさえてうめいていた。


 そこから、鮮血があふれ出ている。


 そんな……どうしよう。どうしたらいい?


 魔王もどきを見上げる。



「終わりか?……そうだな。そろそろ頃合いか。始めるとしよう」



 無情な奴の言葉が響き、俺はただ歯を噛みしめた。




 ◇◇◇




「……え?」



 目の前に、黒い霧が漂っている。


 は? あれ? なに……? なんで?


 わけがわからない。


 ライリーさんは? あの魔王もどきは?


 ……どこにも、いない。


 混乱する俺の目の前に、巨大な目――ノクスヴァルドの目が出現した。


 瞬時に理解して、奴をにらみつける。



「お前……! なんでこんなときに! 今お前と話してる場合じゃねぇんだよ!」


「このまま戦いつづけたところで何になる」



 いつになく鋭く厳しい声色に、俺は息をのんだ。



「汝の魔法は通用せぬ。相棒は満身創痍。この状態で、どうする気だ?」


「勝つ気だよ。決まってるだろ」


「二度も言わせるな。どうやって勝つつもりかと聞いている」



 ……すぐに答えは出なかった。


 そのとおりだ。


 奴を倒して、魔導焦土を発動させるのを止めないといけない。


 けれど、状況はノクスヴァルドの言ったとおり、最悪。大ピンチだ。


 俺に、他に使える魔法があったら。


 ……ん? 待てよ。


 あるじゃん! 俺には、必殺技ともいえるあの技――至大共鳴陣(グラン・シンフォニア)が!



「そうだ、それならいけ――っ!? ぶあっ!」



 言葉の途中で、思いきり鼻息を吹きかけられて、飛ばされた。


 数メートル転がって、ようやく止まる。



「なにすんだよ!」


「愚か者。威力を上げたところで効かぬものは効かぬ」


「じゃあどうしろって言うんだよ!」


「まだわからぬか。我がいるであろう」


「……は?」



 我って、ノクスヴァルド?


 ……いやいやいや!



「お前を召喚しろってか!? 無理に決まってるだろ!」


「言っている場合か?」


「場合だよ! お前が暴れまわったら、俺らだけじゃなくて外にいる人たちだってただじゃ済まないだろうが!

 破壊だけが目的のお前を、おいそれと出せるわけねーだろ!」


「破壊だけが目的でなければよいのだろう?」



 ノクスヴァルドが、体を持ちあげて俺を見下ろした。


 破壊だけが目的じゃなければいい?


 ……なにこいつ、心変わりしたとでも?



「心変わりではない。他に目的ができたのだ。奴は……ルーンの加護を受けている」


「……ルーン?」


「古来よりこの地を守護してきた――ひいては、汝らが言う教団とやらが崇拝している、神の名だ」


「か……っ神!? あいつは、神の力を借りてたのか!?」


「そうだ」



 俺は唖然として、ぽかんとノクスヴァルドを見つめたあと、頭を抱えた。


 そりゃ、無理に決まっている。


 そんな超強力なバフを受けていた奴に、俺らの魔法が通用するわけがない。


 ……ずるくないか? 不公平だろ。いくら戦争だからって!


 ようするに、あいつは勝ち確があったから俺らをここに呼びよせたのかよ。


 生贄みたいに扱いやがって……許さん!



「ルーンは……かつては白き翼をもつ光の神。まさしく我と対をなす存在だった。

 それが穢れた結果が……あれだ」



 ノクスヴァルドが、上をむいて物憂げな様子で呟いた。


 心なしか、悲しんでいるようにも見える。


 ……なんでそんなに詳しいんだろう?


 そのルーン様とやらとは、顔見知りなのか?


 俺が不思議に思っていると、ノクスヴァルドは考え事をやめ、再び俺を見下ろした。



「我が目的は、奴の中にあるルーンの力を打ち消すこと。それ以上、それ以外は一切関与せぬ」


「本当か?」


「約束しよう」



 ノクスヴァルドが即答した。


 ……怪しいな。


 どうしたものか。こいつの言葉を、信じていいのか?


 今まで散々、俺を惑わして封印を解かせようとしてきたこいつを。


 もしウソで、好き放題暴れだしたら、俺が止めなければならない。


 ケガをしたライリーさんを守りつつ、魔王もどきにも気を配って。


 ――ズシリ、となにか重みがあるものがのしかかるような感覚がした。



「……わかった! お前の力を借りる!」



 目を見てはっきり言うと、ノクスヴァルドは固まった。



「……今の悩んでいた時間はなんだったのだ?」


「意味なくなんかないぞ? 悩んだ結果、そうすることにしたってだけだ」



 一旦下をむいて、目を閉じる。


 いろいろな人の顔を、次々と思い浮かべる。


 そして、再び顔を上げた。



「ライリーさんは、俺が守る。他のみんなも。お前がもし暴れだしても、絶対に止めてみせる。命を懸けて」


「…………」



 ノクスヴァルドはなにも言わず、しばらく俺の目を見続けていた。



「……おい! なんとか言えよ! やっぱやめた、とか言うなよ!?

 どうしたらお前の封印を解けるんだよ!?」


「我と契約を結べ」


「け? 契約って……俺の使い魔になるってことか?」



 ドラゴンを使い魔にするなんて、全世界の冒険者の憧れともいえる行為だろう。


 めちゃくちゃ嬉しいし、胸アツだ!


 ……けど、こいつはそれでいいのか?



「それじゃお前、自由になれないんじゃねぇの?」


「内容にもよる。我は汝に力を貸す。汝は、我が望んだときに我を解放する。

 それならば文句はあるまい」


「望んだときに解放!? 家の中で出せとか言われても無理だぞ!?」


「我がそんな分別のない者に見えるか」


「なんでも破壊してやる、とか言ってただろ!」


「言葉の綾というものを知らぬのか」


「逆になんでお前は知ってんの!?」



 ノクスヴァルドが、鼻息を吹きかける。


 今度は飛ばされずに済んだ。



「安心しろ。汝が住処を失うことは、我も望んでおらぬ。厄介者と断じられるわけにはいかぬからな」



 なんだか、呆れているようだ。


 おいコラ。俺が変なこと、おかしなことを言ったみたいな雰囲気にするのはやめてもらえませんかね。



「あとは汝次第だ。どうするのだ?」


「……わかった。お前を信じるよ。契約しよう」


「よろしい。では……我に名を授けよ」


「名?」


「新しき名だ。今の名に替わる名を汝が与えた瞬間、契約は成立する」



 俺は感心して、はぁ、と息を吐いて、頷いた。


 新しい名前をつけるなんて、本格的な契約って感じだな。


 ハンコを押すかわり、みたいなもんか。


 けど、そうなると、「ノクスヴァルド」という名前は捨てなきゃいけなくなるわけだよな。


 せっかく重みがあって立派な名前なのに、もったいない。


 これ以上に、こいつに似合う名前があるのか?


 ……そうだ!



「ノックス!」


「……なに?」


「お前の新しい名前っていうか、あだ名。それなら、ノクスヴァルドって名前も捨てなくてもよくならねぇか?」



 うん。我ながら名案じゃね。気に入ってくれたらいいんだけど。


 ……と、思っていたのだが、ノクスヴァルドの反応は皆無。固まっている。


 え? だめだった?



「……そうか……魂とは巡るもの、だったな……」


「え?」



 ノクスヴァルドが呟いたとき、笑ったように見えた。


 なにかを企んでいるような、悪い笑みではない。喜びの笑みのような。


 気に入って……いや、受け入れてくれたのか。


 ノクスヴァルドもといノックスが、翼を大きく広げた。


 瞬間、漂っていた黒い霧が晴れる。



「唱えよ。我が新しき名を。理は、すでに汝の中にある」



 その言葉に、きちんと返事できた自信はなかった。

ここまで読んでくださった皆様、心から感謝いたします。

これで本作品は、70話に到達しました!

最終話の目処が立ったため、今日からクライマックスまでペースを上げていこうと思います。

ブクマや評価いただけると励みになるので、気が向いたらぜひお願いします。

次回は、ラスボスとの決着回です。

また明日も是非ご覧ください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ