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追放されたタコの獣人、海の賢者として覚醒する 〜異国で勇者と公爵令嬢に見出され、大賢者へ〜  作者: 手羽本 紗々実(てばもと ささみ)
六章 灰翼教団の四騎士編

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61話 話しあいに進展があったらしいので先の見通しを立ててみた

 ザックさんの指示で、ギルベルトがまき散らした毒で苦しんでいた他の領民の手当てに走る。


 そうして、重傷者の手当てを終えたあと、伝書鳩を飛ばしてマリナス騎士団に応援を要請。


 まもなく駆けつけた応援部隊にあとをまかせて、俺とザックさんは本陣に帰還した。



「団長殿。急な応援要請にこたえていただき、感謝いたします」


「礼には及ばない。二人の働きにくらべたら、なんてことはない」



 団長は、ザックさんと俺を順番に見て、「よくやってくれた」と言った。



「いえ。お――私は、そこまで役に立てたかどうか。ほとんど……その、ターナー卿のおかげです」


「お互い様だよ。君がいなかったら、あの魔法は成功しなかった」



 さらっと褒めてくれるザックさん。


 ……どうでもいいけど、私とか、ターナー卿とか。言いなれてないからこそばゆいな!



「とにかくご苦労であった。事後処理はこちらに任せ、よく休まれよ」


「ありがとうございます!」


「以後は、私の部下が医療係として従事いたします」



 ザックさんがそう言い、一緒に団長にむけて頭を下げる。


 団長の「わかった」という返事を聞いてから、会議室を出た。



「エルドミア領は大丈夫ですかね?」


「……あとのことは、騎士団の彼らに任せるしかないよ」


「そうですよね」



 たしかにそうだ。そうなんだ……けど。


 ザックさん、なんか元気ないな?


 強力な魔法を使い、旧友を倒して、その後休まず人命救護にあたったせいか?


 ……うん、そりゃ体も心も疲れるわ。


 俺はそんなに魔力消費してないから平気だけど。


 すると、休憩室にむかう途中で、ライリーさんと出くわした。


 壁に背をつけて腕を組み、足をパタパタと動かしている。眉間にシワを寄せていて、いらだっている様子だ。


 理由は、もちろん不明。



「ドクターあんた、前線から退くって本当か?」


「そのとおりだよ」


「えっ!?」



 ぎょっとして、即答したザックさんを見る。


 彼は、とても穏やかな表情を浮かべていた。



「私の役目は終わったからね」


「終わってねーよ。まだ戦争は――」


「あの魔法を使った以上、私は『ただの医師』ではいられなくなった」



 ライリーさんの言葉を、ザックさんが鋭い口調で遮った。


 そして、俯いて目を閉じる。



「……私の矜持の問題だよ。命を救うための医学知識を、戦いのために使ってしまった。許されていいはずがない」



 その弱々しいセリフを聞いて、ライリーさんが言葉を失い、ザックさんを悔しそうに目を細めて見つめた。


 重い空気が漂い、沈黙が下りた。



「……あの、ザックさん。あなた元々、ただの医師じゃなくないですか?」



 静寂をやぶって言った途端、二人がきょとんとした顔で俺を見た。



「え、いやだって……いろんな医療器具開発してるし、闇魔法使えるし。どう考えても普通じゃないだろ?」


「……あのな。そういう意味じゃなくてな」


「なんだよ? っていうか、ただの医師じゃなくなったんなら、ただの医師じゃない医師を極めるっていうのはどうですか。ザックさん」


「支離滅裂だぞ、お前。ちょっと黙って――」



 ライリーさんの言葉を再び遮るように、ザックさんが小さな笑い声をあげた。



「もちろんそうするつもりだよ。安心しなさい。ちょっと考えがあって、一旦私の研究院に帰るだけだ。またすぐ戻るよ」


「ホントですか!」



 ザックさんが頷いて、俺はライリーさんと一緒に安堵の息をもらした。


 ライリーさんは、早とちりしたのが恥ずかしくなったのか、すぐにそっぽをむいていたけど。



「そうだ。その前に、ポルテくん。獣化してくれないか?」


「え? なんでですか?」


「サンプルがほしくてね。ギルの毒が効いていなかったようだから、なにか体質に秘密があるのかも――」


「お断りしますっ!」



 注射器を取りだして近寄ってきたザックさんから逃れ、ライリーさんの後ろに隠れた。


 ああ、くそ! そればっかりは、どんな恩人だとしても断固として拒否させてもらうからな!




 ◇◇◇




 灰翼教団の四騎士の三人目を討ちとった三日後。


 王宮から知らせが届いたと聞かされ、俺とライリーさん、ローズさんの他、騎士団上層部の幹部たちに召集がかかった。


 作戦会議室に、団長を中心にずらりと並ぶ騎士団幹部たち。


 なんというか、圧巻だな。



「メリッシアーノとセラフィア、二国との和睦が成立したそうだ」



 団長が文書片手に言うと、たちまち歓喜の声が上がり、ざわついた。


 俺もガッツポーズをして声を上げそうになったけれど、隣にいるライリーさんが険しい表情のままだったのを見て、こらえた。



「ルーンベルクとの和議は?」



 軍師っぽい高齢の白ひげ団員が尋ねた。声は、かなりはつらつとしている。



「……送った使者が、屍兵(アンデッド・トループ)となって帰ってきたそうだ」



 その瞬間、打って変わって場がしずまりかえった。



「陛下はご無事で?」


「ああ。近衛騎士団が処理したそうだ」



 ほっとしたような空気が流れたが、その後しばらく沈黙が下りた。


 と、思ったら、団長がテーブルを強く叩いて立ちあがった。



「おのれルーンベルク……! あくまでも我らとの対立を望んでいるということか!」



 団長は、手にしていた文書をくしゃくしゃに握りつぶし、忌々しげにそう言った。


 ……いいんですか、それ。王宮から届いた文書ですよね?



「これではっきりしたな」



 ライリーさんが、他に聞こえないように小声で言った。



「なにが?」


「屍兵の魔術は、むこうの騎士団の上層部のだれかがやってる」


「上層部のだれかって……団長、とか?」


「それも含まれるな」


「表に出てこない、後方支援役の闇魔導師っていう可能性も否定できないんじゃないかい?」



 ローズさんが、俺とライリーさんの間に割って入り、こっそり呟いた。



「それもありえる。ただ――」


「そいつ倒したら、もう屍兵にされる奴がいなくなるんだよな!?」



 つい立ちあがり、声を張りあげた。


 会議室にいる全員の視線が、一斉に俺にむく。



「……すみません、なんでもないです」



 頭を下げ、大人しく座る。


 途端に、横から足を蹴られた。



「落ちつけ。そう簡単にいくか」


「い……っ蹴らなくてもよくね?」


「こうでもしねぇとわからねぇだろ、お前は」



 そんな聞きわけの悪い子どもじゃないんですけど! っていうか、地味に痛い!


 でも、ライリーさんが全面的に正しい。


 それが団長だろうと、後方支援役の闇魔導師だろうと、簡単には近づけないだろう。


 ……絶対に、なんとしてでも止めたい。いや、止めないと。


 ひとまず、ここでは冷静になろう。深呼吸を一回。



「団長。私は、二国があっさり和睦に応じたわけが気になりますな。応じたつもりで、なにか罠を仕かけているという可能性は?」



 中年の、立派な口ひげをはやした幹部の一人が、すこし手をあげて発言した。



「心配は無用だ。それについても報告が上がっている。二国はどうやら、ルーンベルクに脅されていたようだ」


「脅されて……?」


「政務官数人が誘拐され、屍兵にされた状態で教団の騎士とともに王宮内に侵入。危害を加えられたくなければ従えと迫られたそうだ」


「なんと……!」


「なんていう卑劣なことを! 王族を脅迫するなど!」



 数人が、憤慨して立ちあがった。


 俺も激しく同意。「王族を脅迫した」ところじゃなく、「人を誘拐して屍兵にした」ところに、な。


 けど、変だな。


 灰翼教団の騎士団は、屍兵を生みだす魔術を使える。


 つまり、それだけ高度な技術を身につけている。


 それなのに、メリッシアーノとセラフィアまで巻きこむ必要があったのか?



「ルーンベルクの狙いは、なんなのでしょうか?」


「……わからぬ。レイヴンホルム領の警備にあたっているジェイドからも、妙な報告があがってきている。

 ルーンベルク国軍と思われる部隊が近づいてきたので迎撃しようとしたところ、攻撃をする前に自ら撤退していったと」


「攻撃する前に、でございますか?」


「ああ。不審に思ってその軍を追跡したところ、捕虜となっていたレイヴンホルムの騎士の遺体を発見したそうだ。丁重に埋葬された状態だった、とある」



 団長が、ジェイドさんからの報告書らしき文書片手に、訝しげな表情を浮かべて言った。


 ジェイドさんが無事だったのはよかった。


 けど、レイヴンホルムの人たちはやはり捕虜にされていたんだな。


 にしても……丁重に埋葬されていた、とは一体?


 敵だろうと味方だろうと、死者は丁重に扱う。そういう思想があるのだろうか?


 あと、近づいてきたのにすぐ撤退していった、っていうのも気になるな。



「もしかしたら、我々を混乱させることが目的かもしれんな」


「その計画とは?」


「十中八九、我らを討ち倒すためのなにかだろう」



 団長が言うと、会議の場に沈黙が下りた。



「……計画って、なんだ?」



 ライリーさんに、こっそり話しかける。



「もっと大がかりな、やるための準備に時間がかかるなにか……国全体の広範囲におよぶ効果のある魔法か……」


「それってまさか、屍兵とは別の禁術とか?」


「ありえるな」


「それは……ずばり?」



 唾を飲みこみ、前をむいたままのライリーさんに尋ねた。



「……知らねぇ」


「はい!?」



 そっけない返事を聞き、俺はガクッと体を傾けた。



「俺がなんでも知ってると思ったら大まちがいだ。そもそも、俺と同じ年代なら禁術の存在自体知らないのが普通だぞ」


「じゃあ、なんで屍兵のことは知ってたんだよっ?」


「図書館の貴重資料の中に、たまたまそれに関する記述がある本を見つけて読んだ」



 ……うん? 貴重資料って。コラコラ。


 それ、貸出禁止のやつじゃないですかね? ヘタすりゃ閲覧禁止ですらあるんじゃないか?


 まぁ……それは、今となってはしょうがないか。



「じゃあ、他に禁術に詳しい人とかいねぇの?」


「いないこともないよ」


「っ!? ホントですか!?」



 ローズさんが再び割りこんできて、言った。



「聞きかじった程度でいいなら、私でも教えられる。けど、どうせなら詳しく知りたいだろう? 一人だけ心当たりがあるよ」


「ローズさん……! さすが、おば――」


「なんだい?」


「……なんでもないですっ」



 あわわ。つい「おばば様」って言いそうになった。しかもそれをいち早く察知されたし……危ねぇ。



「待てよ。なんであんたがそんなこと知ってんだよ」


「そりゃ、私が五賢人の中で最年長だからね。こう見えて、そこそこ顔も広いんだよ」


「最年長って……」



 ライリーさんと顔を見合わせる。


 だから。一体いくつなんだよ、この人は。



「団長殿」



 ローズさんが手をあげて、団長を呼ぶ。


 当然のごとく、全員の視線がローズさんにむく。


 しかし、ローズさんはそれにも臆せず、立ちあがってゆっくりと一礼した。



「相手は、屍兵以外の他の禁術も使ってくる可能性があります。それに詳しいお方をこちらにお呼びしたいのですが、いかがでしょうか?」


「禁術に詳しい……? だれだ」


「封印された研究資料の管理に携わっていたお方――ユリシーズ・エイジャー氏です」


「魔導研究院の相談役か。呼びよせることは可能なのか?」


「連絡をとってみます。すこしお時間をいただきたいのですが」


「わかった。早急に頼む」


「かしこまりました」



 ローズさんは再び丁寧に頭を下げ、さっそうと会議室を出ていった。


 はぁ。所作が堂々としていて、でも気品があって、かっこいいなぁ。



「他の禁術か……さて、どんなのが出てくるやら」



 ライリーさんが呟いた。


 どのみち、ろくでもないものだとはわかっているけど。


 俺の魔法が通用するものだったらいいけどなぁ。そしたら、絶対力になれるはずだ。


 おし。どんとこい!


 一人やる気をみなぎらせつつ、続く会議の内容を聞くのに集中した。

少し長くなりましたが、これで六章は終了です。

次章からは最強の敵との戦いの件に入ります。ぜひ次回以降もお読みください。

次回は、あさって木曜日の20時頃の更新です。

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