表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放されたタコの獣人、海の賢者として覚醒する 〜異国で勇者と公爵令嬢に見出され、大賢者へ〜  作者: 手羽本 紗々実(てばもと ささみ)
六章 灰翼教団の四騎士編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/78

57話 絶体絶命なのでたまには人に任せてみた

 馬車の中で、改めてルーファス先生に尋ねる。



「レイヴンホルムって、マリナス騎士団並みに強いところなんですよね? ヤバ――大変、っていうか。一大事じゃないですか?」


「ああ。あそこには要衝となる砦があって、幾度も敵の侵略を防いで――」


「つまり、めちゃくちゃ堅いってことですね?」


「……そのとおり。まさか、落とされるとは……」



 ルーファス先生が、口元に手を添えて嘆く。



「砦が落とされたとなると、被害も甚大じゃないですか。領主様とか領民とか……大丈夫ですかね?」


「あそこの領主って……だれだっけな」


「デズモンド・オブ・レイヴンホルム・エインズワース辺境伯。君もお会いしたことがあるはずだよ」



 言われても、ライリーさんは「そうだっけな……?」と、覚えがない様子だった。


 っていうか、名前、ながっ。よく噛まずにスラスラ言えたな、先生。


 いや、それよりも。


 我が国の重要拠点の、防衛力に優れた砦を突破した敵とは、だれなんだ?



「もしかして、例の四騎士の一人が出てきたとか?」


「確証はねぇが、その可能性が高いな。メリッシアーノとセラフィアに、あそこを突破できるほどの力があるとは思えねぇ」



 ライリーさんの炎魔法で、尻尾まいて逃げだすような軍隊ですしね。


 精鋭ぞろいの騎士団を撃破するほどの実力者……どんな奴だろう。


 前の、コンラートとかいう金髪マッシュみたいな、人を見下すタイプだったら嫌だな。弱い奴には興味ない、みたいな。


 しばらく行ったところで、ルーファス先生が途中下車した。王都を守る防壁の強化のためだ。



「二人とも、くれぐれも油断しないように。自分の力を過信してはいけないよ」


「わかってるっての」


「先生もお気をつけて!」



 神妙な顔で頷くルーファス先生に見送られ、先へと進む。


 レイヴンホルム領に入る手前で馬車を降り、そこからは徒歩でライリーさんと一緒に砦へとむかった。


 ……砦がどこにあるかは、一目瞭然だった。


 煙が、もうもうと上がっている。



「あれ、だよな」


「ああ」



 砦が攻めおとされたのは、本当だったようだ。ガセネタであってほしかった。


 近づくほどに、煙や火薬のきな臭いにおいが強くなってくる。



「油断するなよ、ポルテ」


「ああ!」



 緊張感を保ちつつ、一歩一歩近づいていく。


 辿りついたそこは、やはり荒れ放題だった。


 未だにちろちろと火がくすぶっている。その音がよく聞こえるほどしずかで、人の気配はない。



「だれもいない……な?」


「だから、油断すんじゃねーよ。どこかで敵が待ち伏せしてるかもしれねぇ」


「わかってるって」



 一旦二手に分かれて、異常がないか、生存者はいないか捜索することにした。


 しずかすぎて、かえって落ちつかない。っていうか、不気味だ。



「どこにいったんだ……? なんでだれもいないんだよぉ」


「俺が一人残らず潰してやったからだ」



 瞬間的に、背筋がぞわっと粟立つ。


 背後から、低くて重い声。


 ゆっくりと振りかえった先にいたのは、異質なオーラを漂わせている人物だった。


 剣を杖のようにして地面に刺し、柄の先に両手を重ねて座っている。


 そいつが、ゆらりと立ちあがった。


 で……っでかい!


 あきらかに二メートルは超えている。たぶん、ジェイドさんよりもでかいぞ。


 顔はゴツゴツした岩のようで、目は獲物を狙っている肉食動物のようにギラギラしている。


 その大男が、俺を見てニヤリと笑った。


 ――金髪マッシュと同じ、黒い鎧。


 やっぱり、灰翼教団の四騎士の一人だな!?



「どんな強者がくるのかと楽しみにしていたが……まさか、お前のような子どもとはな」


「な……っなんだとコラ! 子ども言うな!」



 そりゃ、あんたから見たら子どもに見えるだろうけど! 主に身長差のせいで!



「強いのか」


「……はぁ?」


「お前は……強いのか?」



 大男が、品定めをするかのようにジロジロとこちらを見る。


 強いのかって?


 そりゃまぁ……多少なりとも強いと自負してますけど。



「やってみろ」


「……なに?」


「お前の魔法、この身で受けきってみせよう。試しにやってみろ」



 大男は、力を抜くように腕をおろした。


 ……え? なに、誘ってる?


 くそ、余裕ぶっこきやがって。もしや、罠か?


 相手の魔法を反射する、カウンターのスキル持ちかもしれない。もしそうなら、相当ヤバいぞ。


 なんたって、俺の魔法の威力は折り紙つきだからな!



「カウンターしようとしている、とでも思っているならまちがいだ。俺にそんな力はない。安心しろ」



 ……安心、できませんけど!?


 っていうか、また心読まれた! 俺ってそんなに顔に出やすいタイプですかね!?


 どうしよう。信じていい……わけ、ないよな。


 けど、俺にはこの魔法しかないし。カウンターされるのを想定しておけば、対応できなくはないはず。


 よし! お望みどおり、やってやる! せっかくだし、魔法陣からのフルセットをくらえ!


 魔法陣を描く。今回は、急いではいないので人型のまま。


 手先に力をこめ、無唱発動(ブランク・コード)でほんのりと黒い霧を出してから、呪文。


 そして――



黒い霧(ブリュム・ノワール)!」



 黒い霧が、もろに大男にかかり、覆いつくした。


 どうだ! さぞかし体が重いだろう!


 やってみろ、なんて言ったのを後悔するがいい!



「やはり……な」


「っ!?」



 ――大男に、変化はなかった。


 そんな……ウソだろ?


 当たらなかったわけじゃない。まちがいなく直撃した。


 フルセットの、無唱発動込みの最大威力の、俺の弱体化の魔法が。


 なのに、なぜ?



「ギルベルトの言ったとおりだった。お前、コンラートを討ちとった奴だな?」


「……だ、だったら、なんだ」


「気にするな。あれはただの子どもだ。むしろ片づけてくれて助かった」



 大男が、鼻で笑う。



「片づけって……仲間だろ!?」


「ばかを言え。立場は同じだろうが、そのように思ったことは一度もない。

 ボスの言うことをろくに聞かず、好き勝手飛びまわる……目障りなハエのような奴だったからな」



 金髪マッシュの顔を思いうかべる。


 ……それは逆にハエに失礼では、と思わなくもない。


 すると、大男がニヤニヤしながら剣を抜いてかまえた。



「お前を倒せば、もっと強い奴がくるか?」



 地面を蹴り、素早く間合いをつめてくる。


 言葉さえも、発する間はなかった。


 斬られる!


 ――そのとき、俺と大男の間に、火柱があがった。


 大男が後方に跳び、距離をおく。


 唖然としている俺を庇うように、ライリーさんが前に出た。



「ライリーさん……!」


「下がってろ」



 いつになく真剣な表情。か……っかっけぇ!



「ライリーさん! あいつ、俺の魔法が効かねぇんだよ!」


「知ってる。見てた」


「はい!?」



 しれっと言ってのけるライリーさんを、目を見開いて見上げる。


 こんにゃろ。さては、様子見してたな?



「相当面倒な奴だってことは……言われなくともわかる」



 ライリーさんが、大男を見ながら、手袋がしっかりはまるように引っ張った。


 大男は、さらに目を輝かせている。



「お前……強いな?」


「……どうだかな」


「強いに決まってんだろ! この人は、賢者で勇者の国一番の魔法使いなんだぞ!」


「お前は小者か」



 指をさしながら教えてやると、ライリーさんの拳骨が降ってきた。


 すこしはビビる……わけ、ないか。


 大男は、目を大きく開いてさらに口角を上げていた。



「勇者……お前、ライリー・クロックフォードだな? 俺の名は、フランツ・ローゼンミュラーだ。さぁ、勇者よ。俺を! 楽しませてみろ!」



 フランツと名乗った大男が、再び剣を振りあげて間合いをつめてくる。


 俺は、遠慮なくライリーさんから離れて、崩れかけた壁を盾にして見守る。



黒炎(こくえん)紅蓮断(ぐれんだん)!」



 ライリーさんが、容赦なく斬撃のような炎を飛ばす。


 大男フランツが、怯まずそれを剣で振りはらって消し、突っ込んでくる。


 振りおろされた奴の剣を、ライリーさんが槍の先のような形にした炎を腕にまとって、受けとめる。



「さすがだ。いい火力だな」



 ……満足させただけだったようだ。


 ライリーさんが舌打ちをする。



「ポルテ! 周りに飛び火しないようにしとけ!」


「っ! まかせろ!」



 つまり、周りに影響が出るほどの高火力の魔法をやるつもりだな!?


 壁の前に出て、いつでも魔法を使えるように準備をする。


 ライリーさんが、フランツの剣を振りはらう。


 すこし距離をとって、呪文を唱えだした。



「黒炎・火竜咆(かりゅうほう)!」



 名を叫んだ途端、手の先からドラゴンの頭部をかたどった炎が噴出する。


 それが、まっすぐフランツへむかっていった。


 奴はよけられずに、炎のドラゴンに飲みこまれた。


 よし……! これは大ダメージだろ! っていうか、あんなのくらって立ちあがれるわけが……



「……終わりか……?」



 フランツは、体から煙をあげながら若干前かがみになった状態で立っていた。


 大やけどを負っているはずなのに、その顔は苦悶に歪むどころか、笑みをたたえている。


 立ちあがる以前の問題!? 倒れてすらいなかった!


 いつも冷静沈着なライリーさんでさえ、その狂気の笑みを見て、目を見開き驚いていた。



「悪くはない……だが、こんなものではないだろう? もっと……もっと俺を楽しませろ!」



 あいつ、薬でもキメてんだろ! 絶対そうだ!



「厄介な強化魔法、使ってやがる」


「強化魔法!?」


「痛みを麻痺させるタイプか……もしくは、快楽に切りかわるタイプだ。魔法っていうより、呪術に近い」


「じゃあ、俺の魔法が効かなかったのは……!」


「それのせいだ。加えて元々、魔法耐性が強いってのもあるかもしれねぇ」



 一旦距離をとって離れたライリーさんが、こっそり解説してくれた。


 それはめちゃくちゃヤバすぎる。


 もしも快楽に切りかわるほうなら、攻撃して傷つければ傷つけるほどあいつを喜ばせるだけだ。


 戦闘が長引くほど、こちらが消耗して不利になる。


 なにかこう、一撃で仕留める方法はないものか。


 ……ああ! 俺の魔法が通用すれば!


 嘆いている間に、ライリーさんが再び炎の槍を出現させる。


 それで大男にむかっていき、剣をなぎ払った。


 その影響で、あちこちに飛び散る炎。


 消火活動に走る俺……のもとに、飛んでくる剣。



「は!?」



 ちょ、なんでこっちくる!? 今、手がふさがってるんですけど!?


 獣化してよけようとしたが――すでに遅かった。


 間に合わなかったわけではない。


 その剣を、駆けつけたある人――ジェイドさんが叩きおとしたのだ。



「ケガはないか、獣人の」



 ……ウソぉ。なに、このおいしい展開!

読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました。

次回は戦闘決着もとい、仲直りパートになります。ご期待いただけたら幸いです!

来週火曜日の20時頃の更新を予定しております。どうぞお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ