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追放されたタコの獣人、海の賢者として覚醒する 〜異国で勇者と公爵令嬢に見出され、大賢者へ〜  作者: 手羽本 紗々実(てばもと ささみ)
六章 灰翼教団の四騎士編

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54話 俺たちは無敵だったらしいので勝って兜の緒を締めてみた

「……っていう感じでなんとかなったので、俺――いえ、私だけ先に報告しに戻ってまいりました!」


「…………」



 金髪マッシュ率いる一団を蹴散らした件を、団長ならびにライリーさんその他の面々に話した。


 ……のだが、なぜかその場がシーンとしずまりかえってしまった。


 なんで?……俺、なんかやらかしたか?



「お前を攻撃してきたその……『金髪で勲章をいっぱいつけた奴』っていうのはだれなんだ? 名前は?」


「…………」


「忘れてんじゃねぇよ! なんのための報告役だよ!」


「い、いや……名前は一応勝手に名乗ってたんだけどさ」


「忘れたと」


「……はい」



 飛びかかってきたライリーさんが俺の首に腕を回してきて、絞められる。いわゆるスリーパーホールド。


 普通に死にそうになったので、ライリーさんの腕を必死に叩き、解放してもらえた。


 ……はぁ。いやまぁ、たしかに俺が悪い。


 なにも考えずに、あんなクソ野郎の名前なんか覚える価値はないと思ってしまったせいだ。


 しかも、黒い壁を取りはらったら、そこには金髪マッシュの姿はどこにもなくなっていた。


 奴が着ていた鎧だけが、抜け殻のように残されていたのだ。


 ようするに、あいつを見たのは俺だけ。


 でも、何者かを調べるための手がかりは、ほぼゼロ。


 ……うん。俺、だいぶやらかしたな!


 その件も説明すると、たちまちライリーさんとジェイドさんににらまれた。



「すみません……見た目とか使ってた魔法なら覚えてるんですけど」


「教えてくれ」



 団長が、身をのりだしてきた。


 どんな些細な情報でもいいからほしい、と言っているかのようだ。



「えっと、見た目は金髪でスレンダーな体形の男で……魔法は青い炎を操る攻撃魔法でした」


「青い炎……」



 団長は一旦目をテーブルにむけて考えこんでいたが、まもなくはっとして顔を上げた。



「もしや、コンラート・ベッカーではないか?」


「あ……! それです! そんな名前でした!」



 団長が口にした名前を聞いた瞬間、聞きおぼえのある名前だとすぐに感じた。


 肯定すると、途端に団長を含む周りにいた騎士たちが動揺し、「ばかな」とか「奴が現れたのか」などと言っている。


 どうやら、有名人だったようだ。


 団長が、テーブルに指をコン、と軽く叩きつけると、その場はすぐにしずかになった。



「だれだ?」


「……知ってのとおり、ルーンベルクはある教団が国を裏で牛耳っている。その教団――灰翼教団お抱えの騎士団は、団長と幹部三人の騎士が中心となって活動しているそうだ。

 彼らのことを、巷では『灰翼教団(はいよくきょうだん)の四騎士』と呼ぶ」


「その中の一人が、コンラートとかいう奴か」


「うむ。青い炎の魔法とは、おそらく上級炎魔法の蒼焔葬呪(ペサメノス)だ。それを扱えるのは、奴しかいないはずだ」



 そうそう。そんな名前の魔法だった。


 灰翼教団の四騎士、か。


 ……敵ながら、ネーミングがカッコよすぎないか? ちょっと羨ましいぞ!



「コンラート・ベッカーは、身軽で先鋒を務めることが多いと聞く。素早く相手の陣地に忍びこんで補給路を断つ手法に長けているそうだ」


「その者を……ポルテくんが倒したんだね?」



 ザックさんが言うと、全員の驚きに満ちた視線が俺にむけられる。


 ええ? そんなに意外か? 黒い壁で押しつぶした程度で倒れる相手だぞ。



「着ていた鎧だけが残っていた、と言ったね?」


「あ、はい」


「それはおそらく、モルス・パクトゥムの護符だ」


「……もるす?」


「モルス・パクトゥムの護符。呪術の一種だよ。その者のすべての能力を高いレベルまで常に上昇させる効果がある。

 ただし、だれかに負けると体が自壊して塵になって消滅する代償を負う」


「じゅ、呪術……」



 不敵な笑みを浮かべながら解説するザックさんを見て、背筋がうすら寒くなった。


 その内容に対してではなく、それを笑いながら言えてしまうザックさんの狂気に。


 しかし、全能力強化のバフを受けていたにしては、手ごたえがなさすぎた気がするんだけどなぁ。



「あの金髪マッシュ――じゃない、コンラートとかいう奴の元々の能力が低かったんですかね?」


「そんなわけねぇだろ。たまたま相性がよかっただけだ」


「そのとおり。蒼焔葬呪は炎魔法の中でも恐ろしい魔法だからね。ほんのわずかでも当たっていたら、どうなっていたかわからないよ」


「……そうですか」



 顔を引きつらせて頷く。


 わからないわけではない。たぶん、当たっていたらその箇所が瞬時に灰になっていただろう……怖っ!


 すると、目の前が突然暗くなった。すぐ目の前に、団長が立っているせいだった。


 いつの間に移動したんだ?


 ……っていうか、背、高いな! 十センチくらい俺にくれても全然支障はないだろ。



「よくやってくれた! 四騎士の一人を、たった一人で倒すとは! 感服した!」


「へ、あ、は、はい! いえ、それほどでも!」



 急に両手で手をつかまれて大声で叫ばれたので、しどろもどろに返事をした。


 団長は満足げに頷き、俺の肩に手を置いてまた席に戻った。


 ……肩、痛いんですけど。馬鹿力め。



「喜んでもいられねぇだろ。幹部級がやられたとなれば、むこうだって報復に出てくるだろ?」


「そのとおりだ。しかし、灰翼教団の騎士団がすでに動きだしていることだけでも知られただけで十分だ。ジェイド」


「はっ」



 団長は、俺たちに軽くあいさつしてから、ジェイドさんとともに作戦会議室をあとにした。


 今後、どう動くかをこっそり話しあうつもりだろうか。



「大金星じゃないか。さすが坊やだね」


「いえ、そんな。フォカロがいなかったら間に合ってなかったかもしれませんし」


「ああ。そういえば、あの子をずいぶんかわいがってくれたみたいだね。フールとは逆に妙に機嫌がよかったよ」


「フール?」


「私の別の使い魔だよ。攻撃に特化した子なんだけど……出番がなかったことが心底気に食わなかったみたいでねぇ」



 ローズさんが、苦笑しながら言った。


 それってつまり……?


 攻撃に特化した使い魔を召喚しなければならないほどの事態が、こっちでも起こっていたのか?


 ぎょっとしながら、ライリーさんを見る。



「セラフィアの連中が降伏しろとか言ってきやがったから、一泡ふかせてやっただけだ」


「一泡って?」



 今度はザックさんを見る。



「君が出ていってまもなく、セラフィア軍から降伏を促す文書が届いたんだよ。当然団長は拒否。

 待機していたセラフィア軍と、メリッシアーノ軍までもが動きだしたが、ライリーが一人で一蹴した……というわけだよ」


「ライリーさん一人で、二つの軍隊を!?」


「ああ。実に見事だったよ。君にも見せたかった」



 感心しながら再びライリーさんを見ると、彼は居心地が悪そうに目をそらした。



「誇張して言わないでくれ。ちょっとそこらへん燃やしただけで、むこうが泣いて逃げてっただけだ」


「ちょっとそこらへん燃やした程度で軍隊が逃げてくわけねぇだろ! すごい! さすがライリーさん!」


「……っうるせぇな。ほっとけ」



 ライリーさんは、照れかくしか頭を乱雑にかきむしってそっぽをむいてしまった。


 ホントにこの人、褒められるのが苦手だよな。なんでだろう?


 子どもの頃から叱られてばかりいて、厳しく育てられてきたせいで耐性がないとか?


 まぁ、それは別にいい。


 一番の敵っぽいルーンベルクの、騎士団の幹部を一人倒したし。


 他の二国の軍隊を、あっという間に蹴散らせたようだし。


 これはもう、俺たちは無敵だと言っても過言ではないんじゃないか?


 この調子で、三国がさっさと宣戦布告を撤回してくれたらいいんだけどな。




 ◇◇◇




 いい具合な展開に運びつつある、その日の夜。


 俺たちは、女王陛下が参加する御前会議に呼ばれ、王都に戻るため馬車に乗りこんだ。


 そう。なぜか、俺も。



「いいか……とにかくなにも喋るんじゃねぇぞ」


「わかってるって!」



 むかい側に座っているライリーさんが、腕と足を組んで俺をじろりとにらみながら言った。


 先程から、この調子である。


 ――なぜ、俺も呼ばれたのか。


 それについては、会議開催の知らせをもってきた王宮の使者もよくわからないのか、言葉をにごしていた。



「とんでもない栄誉じゃないか。すこしは喜んだらどうだい?」



 馬車に乗る前に言っていたローズさんの言葉にも、ライリーさんは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


 まさか、ここにきて彼女の占い――俺が女王陛下に謁見する――が当たるとは。


 ライリーさんを不安にさせているのは申し訳ないけど、俺はかなり興奮していた。


 女王って、どんなお方なんだろう。ローズさんは、強権的な部分が強いお方だって言っていたよな。


 うーん……不思議の国に迷いこんだ女の子が会ったような暴君じゃなければいいんだけど。


 そして――まもなくやってきた王宮。


 でかい。そして、広い。これに尽きる。


 夜の闇に紛れる……どころか、あちこちに設置された魔導灯のおかげで、外観がわりとはっきり見える。


 目の前にそびえたつは、強固な正門。その門前には、近衛騎士がずらりと並んでいる。


 門の先は中庭になっているが、それがまた広大だ。


 ひんやりとした空気の中、夜露にぬれた花々がキラリと光っている。


 王宮の正面には、杖とドラゴンが中心に描かれた紋章がでかでかと掲げられていた。アルケミリアの国章だ。


 建物は、尖塔やドーム型の部分がいくつも突きでていて、まるで街そのもののようだった。


 はっきり言って、近寄りがたい。



「もう一度言うぞ。絶対口を開くな。息だけしてろ」



 再度ライリーさんから釘をさされ、口をきゅっと閉じて頷く。


 そして、馬車から降りた。


 俺、大丈夫だよな? 服も靴も……よし、汚れてない。


 すぐに、あちこち見る余裕もなく王宮の中へと通された。


 天井、たっか! 柱もかなり太いぞ。


 ホールには、歴代の王の肖像画らしきものや、巨大な絵画が飾ってあった。


 光り輝く杖を掲げる魔法使いと、その背後にドラゴンのような巨大な鳥が立っている絵だ。


 ……あれ? この絵のタッチ、ローズさんの孤児院と、図書館の天井にあった絵と同じじゃないか?


 もしや、物語的な感じでつながっているのか?


 じっくり考える余裕もなく、魔導灯が等間隔にならぶ廊下を進んでいく。


 もしも一人で来たら、絶対すぐに迷ってしまうと言いきれるほど入りくんでいる。


 おかげで、一歩進むごとに背筋がのびていくような感覚がした。


 ある豪奢な造りの扉の前で案内役の人が立ちどまり、無言でこちらを振りかえって丁寧に頭を下げた。


 ――ここが、御前会議が行われる部屋か。


 俺は、ごくりと唾をのみこんでから、前にいるライリーさんに続いて部屋の中へと足を踏み入れた。

今週もご覧いただき、ありがとうございました!

評価や感想、ご意見はとても励みになるので、もし気が向いたらお願いします。

次回は、来週火曜日20時頃の更新を予定しています。是非ブックマークしてお待ちください。

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