48話 注文の多い防衛戦 -前編-
想像以上に長くなってしまったので、二つに分割しました。
後編は、水曜日更新予定です。
聖法歴1020年10月3日
ソール連邦の辺境都市ディアスキア。
ここは、アケル公国とレルヒェ共和国の国境に接する重要な拠点だった。
そんな場所に、二人の副官が対面していた。
「こうして貴女と直接お話しするのは初めてですね」
「そうですね。顔は、何度も合わせていたんですけどね」
互いに顔を見合わせると、揃って苦笑いを浮かべた。
二人がここにいるのは、ここディアスキアを治める代官クヌート・マルクリーから、とある要請があったからだ。
二人も上司から実物の手紙を見せてもらった。その手紙にはつらつらと無駄な装飾語が書かれていたが、要約するとこうだった。
“――魔獣を操りこの都市を襲う不届き者から守り、下手人を捕らえてくれ”
◆◆◆
待ち合わせの時間まであと少しといったところで、二人の目の前に一人の少年が姿を現した。
「あぁ、やっときましたね、ゼイン」
男性が声を掛けると、二人の元へ歩み寄る。
「ん? お前は、確か……」
そこまで言っておきながら、言葉は続かなかった。
「二人は顔見知りだと聞いたのですが……」
「え、待って。自己紹介、したよね? もしかして、忘れられてる……?」
こうして直接顔を合わせるのは実に半年ぶりといえど、その前まではちょくちょく会っていた。何度も会話していたはずなのに、忘れられたという事実に、女性は項垂れそうだった。
「いや、魔力は覚えてる」
「……それって、顔や名前は覚えてないってこと?」
「……」
女性の言葉に無言を貫くゼインだったが、視線はあらぬ方向を向いていた。
それに気付いた彼女は、肩を落として涙目を浮かべる。
「……はぁ、ゼイン君って、そういうところありますよね」
「あー、申し訳ありません。彼に悪気はない……と思いますけど」
なぜかゼインではなく男性のほうがフォローを入れる。
「……シモンの副官ってことは覚えてる」
微妙な覚え方に、またしてもため息が漏れる二人。
気を取り直して女性が名乗った。
「――私はカイラ・ステファンです。シモン団長率いる連邦軍第二師団所属の」
ちゃんと覚えてくださいね、と釘を刺され、小さく頷いたゼイン。
「……ちなみに、私の名前は言えますか?」
もしやと思った男性が恐る恐る尋ねる。
「えっと……、じょ……、じょ……。ジョなんとか」
「なぜそこまできて、あと一文字が出てこないんですか……」
同じ上司を持つ同僚であるはずなのに、名前をしっかりと覚えていないことに、最早呆れる男性。
「ジョズですよ、ジョズ・ユベール。……この調子だと、ほとんどの人が全滅ですかね」
流石に彼女の上司の名前を呼んでいたので、誰も覚えていないとは思わなかったが、それでもかなり悲惨なことだけは理解できた。
目的の前に疲労を漂わせながら、三人は代官館へ向かうのだった。
◆◆◆
館に着く前、ゼインにはできるだけ口を出さないようお願いする。
ここの代官であるクヌートは、面倒な男で有名だった。
でっぷりと肥え太り、悪趣味な装飾品を身に付けた、所謂成金のような風貌で、人のやること成すことにいちいちケチを付ける、そんな人間だ。
なぜそんな男が代官の地位に入れるかというと、上の者にごまをするのが得意で、賄賂を使い他人を蹴落とすことで、その地位までのし上がったのだ。
そんな相手とゼインは相性最悪なのは目に見えていた。そのうえ、今のゼインの評判を考えれば、下手な発言をさせないほうがいいとの考えだった。
そもそもの話、なぜ連邦軍第二師団と魔力災害対策局に応援要請が来たのか不明だった。
普通、都市を守るのはその地域に配備されている軍の仕事だ。ここディアスキア区は第九師団の管轄のはずだった。
それにもかかわらず、直接代官から要請が来ること自体、おかしいのだ。第二師団に連絡を寄越すなら、第九師団からが常識だった。
明らかな横紙破りに、上司たちも顔を顰めていた。
問い合わせても、来たら説明するとの一点張りで、渋々幾人かを派遣することにしたのだった。
第二師団からは、カイラを含めた五十人の中隊規模が派遣されてきた。
執行官は第三課から、ゼインとジョズを含めた四人――第三課の約半数が来ていた。
今はそれぞれの代表者である三人が、代官の元へ向かう。
ゼインはランクS-に成りたてとはいえ「十傑」であるため、一番階級が高いので、今回の建前上の総責任者である。流石に実務ができないので、二人がフォローする形となっていた。
代官館に着いて早々、ゼインたちは代官と面会する。
噂に敏感な男だけに、ゼインを警戒する態度をみせた。
そんなクヌートの様子を無視して話を進める。
「要請に従い参上しました。第二師団からは五十名、執行官からは四名が現着しております」
「そうかそうか、ご苦労だった。……して、横の少年が『十傑』の――」
「それでマルクリー殿。私共をお呼びした理由をお聞かせ願えますか?」
クヌートの声に被せてジョズが質問する。
分かりやすく顔を顰めたクヌートだったが、ジョズのその態度が答えだとばかりに得心して、すぐさま表情を戻した。
「おぉ、そうだったな。先に説明した通り、この街を襲う輩を捕らえて欲しいのだよ」
「そのことは承知の上です。私がお尋ねしたいのは、“なぜ”我々に直接要請を出したのかです」
「おや、そうだったのかね? 第九師団から君たちが来るとは聞いていたが、こちらから要請を出したかどうかは、ねぇ」
厭味ったらしく笑いながら煙に巻こうとするクヌートに、ジョズは思わず顔を歪めた。
「――では、正式な要請ではなかったということで、我々は一度引き上げさせてもらいます」
青筋を立てたカイラが、きっぱりとした口調で言い切る。
「ああ待て待て待て! いや、こちらから要請を送ったのだったな。歳の所為か、うっかりしておったみたいだな」
慌てたクヌートが下手な高笑いをする。
歳と言っていたが、彼はまだ中年入りたてぐらいで、ボケるには早かった。
「では、どういう意図で我々に直接連絡を取ったのですか?」
「あー、それはだな。えっと、――そう、そうだ! 今回の犯人がかなりの曲者でな。高名な第二師団にご助力願いたいと思った次第だ。それと、相手が魔獣を操るみたいでな。街のすぐ側まで襲ってくるから、その原因も一緒に調べて欲しいと思い、執行官にもご足労願ったという訳だ」
どう見ても今考えた理由であったが、彼の口から聞き捨てならないことが飛び出し、流石に切り捨てることができなかった。
疑わしげな目を向けながら、カイラが代表して質問する。
「都市の側まで魔獣が来るというのは本当ですか?」
「本当だ。何なら他の人に聞いても構わない」
「魔境が広がったのですか?」
「それは第九師団が調査中だ。半数は都市防衛に残っているが、残りは全部で払っておる」
それが事実であれば、応援要請も頷ける。
第九師団から直接来ないのも、手が回らないからと考えられた。
カイラとジョズは視線で会話する。
ものの数秒だったが、すぐさま二人の意見は纏まった。
「では、我々は第九師団と合流して都市防衛に務めます。調査に関しては、彼ら執行官メインで行います。指揮系統は我々と、第九師団、別々とさせてください。それが協力する条件です」
「そうか、概ね許可しよう。――ただし、こちらからも一つ要望を出させてもらうがな」
「何でしょう?」
怪しいことこの上ない男の条件に、カイラは身構えた。
案の定、告げられた内容に絶句する。
「都市防衛にはそこの『悪鬼』を含めることが条件だ。それと、この都市では宗教上の理由で空間魔法を禁じている。余所から来たとはいえ、この街のルールには従ってもらおう」
守れと言っているのに、肝心の空間魔法を使うなとは、冗談も甚だしかった。
カイラとジョズは、怒りを通り越してもはや呆れ果てる。
当のゼインは、ちらりと視線を巡らせただけで、終始無言だった。
それを肯定と捉えたクヌートは、用は済んだとばかりに三人を追い払うのだった。
◆◆◆
「何ですか、あの態度は!」
間をおいて怒りが再燃したカイラが、肩を震わせる。
隣のジョズが宥めるも、効果は薄かった。
「それよりゼイン。貴方、空間魔法なしで戦えますか?」
ジョズの質問に、カイラも動きを止めて振り向く。
ゼインは大して動じた様子もなく答える。
「ランクB程度でよければ戦えるぞ」
その回答に二人は微妙な顔をする。
というのも、二人とも許可証ランクはB+。彼の言葉を否定することは、即ち己も否定することに他ならないからだ。
「それに、あれはあんなことを言っていたが、空間魔法を検知する類の人も魔道具も見当たらなかった。大っぴらに使わなければバレない」
「それは本当ですか?」
「あぁ、あの部屋で実際に使ってみたからな。仮にも禁じている代官の棲家に何の対策も取ってないのは、杜撰すぎるだろ。あれの態度も嘘だらけだったから、十中八九、俺の何かが目的なんだろうよ」
大胆不敵なゼインの態度を、頼もしいと思えばいいのか、心臓に悪いと感じればいいのか、判断が難しいところだった。
「……ん? 嘘ばかりということは、魔獣の話もそうですかね?」
「いや、それ関係は本当みたいだった。ただ、この都市の軍人半数じゃなく、七割近く出払っているようだったがな」
「はい!?」
さばを読むにしても、防衛人数を誤魔化すのは、何が何でもあり得ないだろうとキエラは激怒する。
仮にも代官としての自覚がないのかと問い詰めたくなったが、今はぐっと堪えて踏みとどまる。ただし、両手は力強く握られていたが。
「……そうなると防衛の手が足りないと思いますが、ゼインはどうするつもりですか?」
「まぁ、何とかなるだろ」
楽観的にも聞こえるが、何か策があるとみて、今は彼のことを信じることにした。
「それよりも、魔獣のほうが気になる。あいつら、魔境以外で生きていけたんだな」
「いえ、不可能なはずです。一部例外はありますが、魔獣だけでは外に出られません」
「なら、やっぱり人の手が加わっているのか……。ちなみに、その例外って何だ?」
ゼインもすでに想像がついていたらしく、ジョズの情報に驚いた様子もない。
彼の問いかけを不思議に思ったのも束の間、すぐ理由に思い当たった。
「ゼインが知らないのも無理ないかもしれませんね。……実は、四年ほど前まで存命だったとある英傑が、魔獣を使役していたんですよ」
四年前と聞いて、ゼインが僅かに反応した。本当に僅かばかりだったため、二人はその変化に気付けなかったが。
そんなこととは露知らず、ジョズが説明を続ける。
「彼女は精神魔法と契約魔法を併用することで魔獣を手懐け、魔境の外に連れ出すことに成功したんです。最も、魔素がないと弱り、果ては死んでしまうそうですから、多くは使役していなかったはずです。それでも魔獣に乗って戦う姿から、人々の名声を集め、英傑にまでなった方ですね」
「魔獣に対する反発はなかったのか?」
「勿論ありました。ですが、彼女はその成果を公開し、再現性や安全性を示しましたから、次第に認められ、最終的には魔獣の権威としても名が知れ渡りましたね」
手法を公開するとなれば、自らの手の内が知られるも同然ということだ。
魔獣に乗って戦うとはいえ、他も真似できるならより強い魔獣を従えた者勝ちになってもおかしくはない。
ゼインにしてみれば、狂気の沙汰ではないと内心恐れ戦いていた。
「で、そいつの名前は?」
「エルム連合王国の英傑、『獣騎』のエスメ・コーチマン。それが彼女の名前です」
名前を聞いても、いまいちぴんと来ないゼイン。
四年前といえばまだ九歳前後。知らなくても無理はなかった。
「そいつの方法で今回、魔獣を襲わせていると?」
「分かりません。彼女が使役していた魔獣は、多い時でも五体が限度みたいでしたから、その程度で呼ばれるのは不自然です」
「結局は相手の出方待ちか」
今ある情報からでは、そのぐらいの憶測しか立てられなかった。
ひとまずは、防衛につく第九師団と接触することにした。
◆◆◆
移動の最中、警報が鳴り響く。
「不味いっ、魔獣が攻めてきた!」
いち早く警報の意味に気付いたカイラが指示を出す。
幸いなことに、この場には第二師団も執行官も勢揃いしていた。
彼女の号令で全員現場へ駆け出す。
人の流れに逆らう動きで、思うように進まない。
歯噛みするカイラへゼインが提案する。
「事後承諾になるが、この都市全体に結界を張るか?」
「お願いしたいですが、表向き空間魔法を使う訳にはいきませんよね?」
不審がるカイラに、策はあるとだけ答えるゼイン。
一瞬迷ったものの、人命優先とばかりにお願いする。
「悪いがちょっと止まるぞ」
彼らしくない発言だったが、素直に聞き入れる。
大通りのど真ん中にいる訳にはいかず、一同は各隊に分かれ、道を外れた路地に移動する。
足を止めるとすぐ、ゼインは両手を空に掲げた。
何をするつもりかと問いかける間もなく、彼が詠唱を始める。
「『満ちるは銀 満たすは祈り ただ清廉なる身は拒みはせず 不純を持って相隔てる
無を知り虚を知り空を知る ひたむきな行いを讃頌す
出会うことなかれ 交わることなかれ 触れることなかれ
御心のままに 希う』」
唱え終わると、忽ち空が白い輝きに満ちる。
都市全体を覆うように広がる光は、格子状の幾何学模様を描き、瞬く間に呑み込んだ。
唖然とする一同を余所に、ゼインは目を閉じてゆっくりと息を吐いた。
しばらく呆けていたジョズが、いの一番に我に返って問いただす。
「ゼイン。貴方、神聖魔法が使えたのですか!?」
「使えない」
「いや……、しかしこれは、紛れもなく神聖魔法『破邪の嘆き』じゃないですか」
「よく知ってるな、こんなマイナーな魔法」
混乱を見せるジョズだったが、紡がれた言葉に感心するゼイン。
肯定するような物言いに、やっぱり……と確信めいた表情を浮かべる。
そんな彼を見たゼインは、深いため息をついた。
「……使えてないだろ、こんなもの。立ち止まらないといけないうえに、長々とした詠唱が必要とか、敵の前で悠長にできない。この程度、使えるうちに入らない」
極端な見解だったが、彼の表情を見たジョズは、これ以上何も言えなかった。
沈黙もそれほど長くは続かない。
ようやく正気に戻ったカイラが、ゼインの魔法について尋ねる。
「これは空間魔法ではないのですか?」
「違う。ただの守護結界だ。とりあえずこれで時間は稼げるだろ」
「守護結界って、神聖魔法じゃ――」
「……」
不機嫌になるゼインを見て、カイラも言葉を詰まらせる。
それでも、軍人として確かめなければいけないことがあった。
「……この結界って、いつでも使えますか?」
「使えるが、使いたくない。どうにも目立つからな」
「人命が掛かってる以上、あまり我が侭を聞いてあげられないのですが……」
「大丈夫だ。防衛場所に着いたら、魔獣は俺が全部倒すから」
解決するまで一体の漏れなくと言われてしまえば、カイラも強くは言えない。
それほどまでに、ゼインの力のほどは認知されていた。
「ちなみに、どうやってですか?」
「普通に炎や氷、雷でだ。これなら分からないだろ」
確かにゼインの魔法の使い方を知らなければ、それで十分すぎるほどだった。
カイラは少しの間、逡巡を見せたが、最終的には折れて頷いた。
「……分かりました、ゼイン君に任せます。ただし、状況次第ではまたお願いしますからね」
カイラの言葉にゼインは肩を竦めるだけだった。
時間に猶予ができたが、それでも未だに警報は鳴りやまない。
ゼインたちは再び終結すると、現地に向かった。
◆◆◆
最前線は混乱ひしめき合う、混沌とした状況だった。
それもそのはず。
魔獣の相手をしていたと思ったら、未知の魔法が都市を覆い、城壁の内外を隔てていたのだから。
現場で指揮を執る指揮官も、この魔法が味方のものなのか、あるいは敵のものなのか判断しかねていた。魔獣の侵攻を食い止めたと考えれば味方側なのだが、この魔法によって彼らも外に手出しすることができなくなり、見ようによっては中に閉じ込められてしまったからだ。
魔獣の数は百にも及ぶ。
しかし、魔獣はおろか、こちらからの武器や魔法も弾かれてしまうため、今は魔獣とにらめっこするほかない。いつ破られるかと神経を擦り減らしながら、状況把握に努める。
ゼインたちが現れたのはそんな矢先だった。
「見事に分断できていますね」
「範囲を城壁に絞ったからな。誰も外に出て戦ってなくて良かった」
怖いことを呟くゼイン。
仮に取り残されたとしたら、今頃魔獣の大群に食い千切られていたと、彼の言葉を聞いていた軍人は身震いする。
「貴殿らがこの魔法の術者か?」
見慣れぬ男性がゼインとカイラに声を掛ける。
恰好を見たカイラが姿勢を正して回答する。
「ハッ、この魔法の術者は隣の彼でございます」
視線を向けると、僅かに眉を動かした。
すぐ視線をカイラに戻して質問を続ける。
「貴女の所属をお聞かせ願いたい」
「私は第二師団副団長、カイラ・ステファンであります」
「――失礼した。私は第九師団副団長、エドガール・ドロルム。同じ副団長です、言葉遣いは楽にしましょう」
「ハッ、ありがとうございます」
師団には副団長が三人存在する。
カイラは副団長の中でも若い部類のため、同じ副団長とはいえ、年齢も階級もエドガールのほうが上だった。
未だ肩の力が抜けない彼女に苦笑しつつ、件の少年に視線を向けた。
彼の特徴的な容姿から、身元はすぐに察せられる。
「それで、こちらに来たということは、助力いただけると見ていいのかね?」
「はい、おっしゃる通りです。ただし、第二師団は麾下に加わることはせず、独立した指揮系統とさせて頂きます」
不思議そうに眉をひそめたものの、ゼインを見ると納得げに苦笑する。
「代官からの許可があるのなら、こちらは問題ない」
「ありがとうございます」
軍人同士のやり取りが済むと、ゼインが口を開く。
「で、魔獣はもう倒していいのか?」
「できるならお願いしたいところだが、この魔法を解く必要があるのでは?」
「このままで十分だ」
それだけ言い残し、城壁に進もうとするゼインをジョズが止めた。
「待ってください。できるだけ魔獣の原型を留めてもらえますか? 原因調査に使いたいので」
振り返ったゼインはきょとんとした顔をしていたが、すぐ手を振って歩き出した。
彼の戦いに興味がある面々はその後を追う。
邪魔にならないよう、遠巻きに眺める。
警戒に務めていた他の軍人たちも、固唾を呑んで見守る。
周りの注目を一身に浴びながら、いつもと変わらぬ気だるげな様子のゼインが、指を目の前に構える。
横一線に素早く振ると、魔獣の頭上、数メートル先に三色の槍が次々と生まれる。
大きさは約一メートル。
形も先の尖った紡錘形で、太いところでも直径五センチあるかないかだった。
大人であれば難なく扱える大きさの無骨や槍が、ゼインの指揮の元、一斉に降り注ぐ。
断末魔をあげる余裕もなく、一瞬にして魔獣は絶命する。
後には心臓を撃ち抜かれた魔獣が転がるのみ。
魔法を行使した少年は、ただ泰然と佇んでいた。
この光景を目にした彼らは皆、ランクS-「悪鬼」の力を嫌というほど思い知らされたのだった。
一言メモ
軍隊関係の規模感は、現実とは乖離しています。
この世界の軍隊の規模感は以下の通りです。
1人の強さ=許可証ランクC程度
小隊 約10人。
中隊 約50人。
大隊 約250人。
師団 約1,500人。
この世界では一人一人の能力差が激しいので、このような形にしてます。
ちなみに、ランクS帯は一人で師団レベルの実力者扱いです。




