フォーク
九回二死満塁、点差は僅か一点だ。
豪腕投手スコットは、正捕手ボブのサインに対し首を横に振り続けている。
ようやくスコットが首を縦に振った。
『なんや、結局フォークかいな』
ボブは打席に立つスラッガーマルティネスに聞こえないよう英語で呟いた。
スコットは大きく振りかぶり、力の限りフォークを投げ込んだ。
フォークは無回転のままボブの構えるミットに吸い込まれていく。
少し甘く入った、マルティネスがバットを振る。
『キン!』
マルティネスは、フォークの先をバットの芯でとらえた。
バットにキズがついた。
『やってくれたな!先が尖っているフォークを投げるとバットにキズがつくじゃないか!』
マルティネスが怒鳴った。
『じゃあどうしろって言うんだ?僕の勝負球はフォークなんだよ?』
スコットは質問した。
『これからはスプーンを投げるようよろしく頼むよ』
マルティネスが回答した。
『まあまあ、お二人さん。そない喧嘩せんでもよろしいがな』
ボブが英語でなだめた。
Fin.