4話 おかしいのは どっち?
完璧に目をつけられたな
回想
訓練施設
ジアスタとは
どこまで関わっている?
どこまで完成している?
回想 終了
楽に倒せるとはいえ
力を見せつける結果になった
そこは反省している
その結果 目星をつけられたらしい
いや あり得ないあの動きを使った時点で
もう 感づかれていたのかもしれない
ジクト国
世界の代表とも言われている国
その国を支える特殊軍フェルク騎士団
そこの訓練生に所属しているのだが
この国は おかしい
フレシェル・バードレ
ジクト国の軍事部門のトップ
ルルゥ・サージエス
この国の軍事魔法部門トップであり
ジクト国 魔法研究会の議長
そんな人間が
訓練生の施設に赴き居座っているのは
なぜだ?
考えられるとしたら
ジアスタの計画が漏れているのだろうか?
それを嗅ぎつけて
フレシェルもルルゥも
動いているとしたら
もうひとつの可能性を
教えてあげようか?
その声に驚き振り向く
だが その驚きをすぐに隠した
嗅ぎつけられるわけにはいかない
「シユ・アストなのか?」
元気であるのが取り柄の女の子
容姿端麗でスタイルも良い
リアナとは種類の違う魅力を感じる
その女の子が何の用だ?
「1000年前の
”作者”と”対”による大戦争を
君は知っている?」
「この世界を作成した作者
それを管理するために作者に創られた対
対の反逆によって起こった
この世界の存在を巻き込んだ大戦争」
「対反乱と後に呼ばれた戦争」
シユが言うには
その大戦争が起きるのを予兆してたかのような
出来事が起きたと言う
この世界の20億年前から続いている宿命の子たち
その5名が勢ぞろいした
その5名が現れてすぐに その大戦争は起こった
「そして今の この時代にも
その5名の存在は揃ってしまった
時代を越えてね」
月運 魔女 騎士 風の化身 ヴァルシ
その5名がそろうとき
その時代に何かが起きる
「だからって それが
なぜ訓練施設に
フレシェルとルルゥほどの大物が
集まる理由になるんだ?」
驚いたような表情をうかべながら
「気づいてないの?」と
そう訊ねられた
「どういうこと?」と返すと
シユは納得したかのように
自分の中で解決したかのようだった
待ってくれ
結局なにが言いたかったんだ?
そう問いただす前に
「そのうちわかるよ」と言い残し
この場を去っていく
沈黙した
心をかき乱すだけ かき乱して
何も答えを告げられていない
呆然としたが
考えるのをやめることにした
どうやっても答えなんて出てくるわけがないから
少し歩いていると
今日はやけに人に絡まれる日だなと思いしらされた
暑い日だというのに
常温のブラックコーヒーを渡され
「飲みますか?」と促される
なぜ常温?
前ももらったのだが
あまいものは苦手なのか?
女の子は あまいものが大抵好きと思うのは
偏見なのだろうか?
「ありがとう」と言い受け取り
夏の暑さには物足りなさすぎる それを飲んだ
リアナ・フェルフィスカ
訓練施設で初めて会ったときから
やけに この女の子につきまとわれる
俺の何がそんなに お気に召したんだ?
どこに行っても何をしてても
その日 リアナに会わない日は無いってくらいだ
俺の顔をのぞき見て見つめてくる
「なんですか?」と訪ねると
リアナは語り出した
「天空に近いとある場所
貴方は二刀の剣を操る存在と対峙する」
・・・言葉を失う
正直に言わせてもらえば
「何を言ってるの?」と言いたい
リアナは続けて言葉を発する
「その存在と敵対しているようには見えなかった
貴方も刀は構えていたけど
まるで親しい相手に語り掛けるような
それでもって どこか悲し気な
そんな風に思えた」
まったく身に覚えがない
即座にそんなことを経験したことは無いと言える
「”戻れたら良いのにな”
悲しそうに貴方は そう言ってた
どういう意味だったのかしらね?」
・・・なんて答えれば正解なんだ?
誰か教えてくれ
「いけない 体験する前だったね」
仮にそう思うなら なぜ聞いたのだろうか?
言葉は まだ続く
「なんでだろう
貴方には話してしまう
知っているわけないのに
誰に話しても理解されるわけないのに」
そうだろうなと心で同意する
「こんなこと言うと また貴方に
”頭がおかしい?”って言われちゃうわね」
俺はジアスタに深く関わっている
ルペンスの被験者
オリアと言う物を宿しているから
実験にも耐えられているらしい
驚きの表情を浮かべ「え?」と聞き返して来る
最近感じた謎の現象
心の中で叫ぶ物
それに従えば
言われた通りになった
その叫ぶ物が言うには
リアナ・フェルフィスカは
作者と関わっている
この世界を作成したと言われる存在と
過去のリアナの言動を聞いてればわかる
きっと なんでも知っている
さっき言われた意味不明なことも
俺が これから体験する何かなのかもしれない
なんでも知っているなら釘を刺す必要がある
「頭がおかしいのはリアナだけじゃないよ
俺も充分おかしいんだろうな
こんなことを口走るんだから
信じてもらえないかもしれないけど」
「俺には守りたい者がある
それを守るために
いま 気づかれるわけにはいかない」
唖然とした表情をしている
そんな顔してどうする?
知っているくせに
だが懇願しないわけにはいかない
「知っているんだろ?
お前にはすべて
だから俺の事 だまっててくれないかな?」
きっと だまっててくれると確信している
ジクト国にとっては
とても看過できるような物ではない
フレシェルに目立った動きが無いと言うことは
そういうことなんだろう
知ってたうえで黙っていてくれてるのだろう
それでも俺は最後の念押しのために
「たのむよ?」とお願いした
長い沈黙のうち やっと唇を開いて
リアナは こう言葉にした
・・・知らなかった