プロローグ 星くずたち
いくら金を積んでも得られないもの。
その価値が他の何ものにも代えがたいほど大切なもの。
自分のすべてを懸けてまで、手に入れたいと望めるもの。
この世にそんなものがどれほどあるだろう。
夜空にまたたく星くずのように、まばゆく、美しく輝き―――。
そして、朝になれば消えてしまう、はかない幻。
他人に誇示するためでもなく。
なにかの役に立つわけでもなく。
名声も地位も関係ない。
幼いころ、少年たちがポケットに詰めこんだガラクタにも似た、自分だけの宝物。
そんな何かにとりつかれ、俺たちコールドロンズは冒険を続けている。
トレジャーハンター専門の冒険者となった経緯はメンバーそれぞれだが、みな胸のうちに同じ夢の炎を宿している。
誰も足を踏み入れたことのない秘境。
なぞのままだった古代遺跡。
歴史の流れに埋もれてしまった遺産。
たしかに、それらは時として巨万の富や名誉を生む。
一攫千金をねらう同業者たちのことは否定しない。
金は大事だし、成功も重要なことだ。
だが、俺達がトレジャーハンターを続けているのは、内なるささやき声に従っているからだ。
その歓びは言葉で言い表せるものでもなく、金銭以上のものをもたらしてくれる。
ロマンなんていうと、いかにも嘘くさいかもしれない。
まっさらな雪の降り積もった大地に、自分の足跡だけがつく。
突き抜けるような快感と、ほんのわずかの後ろめたさ。
そんな一時の歓びのため、命の危険にさらされたことは一度や二度じゃない。
いや、命がけでなかったクエストなどないと言ってもいいかもしれない。
報酬を得ても、そのほとんどを次の冒険のために使い切ってしまうから、俺たちは年がら年じゅう貧乏なままだった。
きっと他人は嗤うだろう。
けど、そうやって生きているからこそ、胸を張って言うことができる。
俺たちは冒険者だ、と。
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