096 アズサ、命の女神と会う、死の女神とも会う
祠の入口を入ると、まったく飾り付けのない質素な神殿だった。
「ルシフェル、お久しぶりね。あなたがここにくるのは初めてだね。私にお願いですか? 帝国領を焼かないでほしいって? その人種が困るからって、ルシフェル、大丈夫? あなたは最高神になるのよ。これは運命なのね。だから、そんな瑣末なことを考えてはいけないわ。いずれ大天変地異をあなたは起こすのだから」
モイラさんが、一方的に話していると、思ったらモイラさんに睨まれた。
「ねえ、亜神ちゃん、ルシフェルは冷酷で非道な素晴らしい最高神になる運命なのよ。惑わしてもらっては困るわけ。わかったら死んでちょうだいね」
「ルシフェル、どうしてその亜神ちゃんを守るの? 意味がわからないのですけど」
「モイラ、アズサは私の友人なのだ」
「ウソよ! ルシフェルにそんな運命はカケラもないもの。私、困るのよ。想定外のことが起こると、私ってアドリブが全然ダメなんだから!」
「帝国領のことなのだが……」
「行かないわよ。神力低下が激しいから。バシヌの依頼を断ったらリーファみたいに反逆者呼ばわりされるじゃない。だから承知しただけだから。それよりもルシフェルの未来が変わったみたいだから、もう一度占ってみないとね……。妹のところに行くのでしょう。姉が寂しがっていると伝えてね。こないだろうけど」
モイラさんってなんとなく寂しそうだ。
「亜神ちゃん、私は寂しくはないのよ。ただ未来が見えてしまって希望が持てないだけなのよ」
「でもね、ルシフェルの未来ってしょっちゅう変わるのそれがとても楽しいの。普通はそんなことは最高神でも起こらないのよ」
「ヨミには、モイラが会いたがっていることは伝えるから」
「ありがとう。ルシフェル」
ほんの少しだけモイラさんが微笑んだような気がした。
死の神、ヨミ様って言う割には派手だわ。この神殿は。キンキラ金だ。
中に入ると、陰気な黒い影が浮いていてそれなりの雰囲気なんだけど。神殿内はこれでもかってくらい派手だ。
「ルシフェル、残念でした。くるのが遅かったわ。帝国領内に疫病を撒いてきたところだから。もう病気が蔓延するのは止められないわよ!」
「そうか、それは仕方ない。モイラから伝言がある。遊びにきてだそうだ」
「嫌よ、あそこって陰気が詰まっているから、ほんの少しで良いから、私のところの神殿を見習ってほしいわけよ。まあ、ルシフェルがどうしてもって頼むのであれば、モイラのところにいってもいいけど」
「私と一日デートで、お願いを聞いてあげるわよ」
「さてと、Gよ! ちょっと、そこの女、人種に直接尋ねるのって規則違反なんだけどさ、ルシフェルとあんたが話すのを見るのは嫌なので、特例で直答を許します」
「あんた、ルシフェルとどういう関係かしら?」
「ヨミ様、私はルシフェルとは友人関係です」
「おい、ルシフェル様だろう! バカ女。殺すぞ!」
「ヨミ、私が呼び捨てにするように命じたのだ。怒るのなら私を怒るのだ」
「ルシフェル、この女はただの友人なんだよね?」
「戦闘中、背中を預けても良いと思う程度の友人だな」
「決めた。今ここで殺しておく。ライバルは早めに潰す!」
「ヨミ様、私は歳上の男性が好みなので、グリムは問題外だったりします」
「そうか、グリムの背中をしっかり守れ、お前が死んでも私がちゃんと死者の国でVIP待遇を保証するので、安心して死ぬがよい」
「それで、ルシフェル、デートなんだけどさ、明日、あたし、暇なのね」
「ヨミ様、明日は冥府の運営会議が……」って黒い影がいった途端、黒い影さんが消えた。
「暇なわけね」
「私も予定はないのだ」
「よっしゃ! あら失礼しました。じゃあ、明日午前九時に迎えにきてくれるかしら」
「承知したのだ。明日、午前九時にヨミを迎えにいくのだ」
「ルシフェル、今から私ね、色々と用事があるの。明日を楽しみにしているわ」
ヨミさんの神殿から黒い影さんたちによって私たちは追い出された。
「あのう、ヨミさんって初代様とはどういう関係なの、死の神の割には、生命力を感じたのですけど」
「初代様の妻候補なのだ。他にも何柱かいたのだけど、ヨミが消した。アズサも危なかった。私がヨミとのデートを受けなければ、アズサは今日中に消されていたはずなのだ」
「グリム、ありがとう」
「この天界で一番ヤバい神がヨミなのだ。アズサも十分注意しておくようになのだ」
帝国領内に疫病が蔓延か。大変なことになったな。地上に戻ったら、アリスと一緒に帝国領内を回りたいけど、私って指名手配されているから……。困った。




