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093 アズサ、天界に行くその2

「皇帝が知恵の泉の水を飲んだことへの処罰のことなのだけれど」


「ワシは知らんぞ。そんな話はまったく。担当部署の担当課長を呼び出すので、少しそこで待っていてくれ」


「アズサ、お前はここでは空気だから、どこに座っても良い。誰も咎める者はいないのだ」


 そうはっきり言われると意地でも座りたくない。


 担当課長さんがやってきた。


「バシヌ様、直々のお呼びとは何でございましょう?」もの凄くおどおどしているので、見ているのが辛くなる。この姿を課長さんの家族が見たら涙を零すに違いない。


「我が子が言うには、皇帝が不埒ふらちにも結界で守護しているダンジョンの泉の水を飲んだらしい、その処分についてワシはまったく聞いていなかったので、ワシは大恥をかいたのだ!」


 マズい、知らなかったってことが最高神の気に障ったみたい。これでは、形式的処罰から本格的処罰にランクが上がりそうだ。どうすれば良いのか?


「バシヌ様、その件についてですが私まで上がってきておりません。係長決済案件だと思います」ほっとした気分が伝わってきた。責任のすべてを係長に押し付けられるって雰囲気がわかる。


 気の毒な係長さんが呼び出された。神様って色黒の神様は少ないみたい。係長さんは極めて不健康そうな白い顔色をさらに白くして、最高神の執務室に入ってきた。


「堕天使ルシフェルが壊した神殿の修復にかなりの神力を使っておりますのと、龍神であるリーファがこの件に噛んでいる事もあって、慎重に神罰を下す神々の神選中でございます。が、いく柱かの神々に内示をしたところ、承諾を得ていますので、今すぐにでも神罰を下すことは可能でございます」


 最高神バシヌ様の顔色がヤバい。


「堕天使ルシフェルとは誰のことを言っているのか? お前!」


 最高神の執務室に入ってきてずっと床しか見てなかった、係長さん。たぶん、疲労困憊ひろうこんぱいでいっぱいいっぱいなのだろうな。気の毒に。


 係長さんが顔を上げるとそこにはグリムがいた。係長さんは驚いてアワアワと言っている。


 これはマズい自分にも責任が問われると思った課長さんが、「ルシフェル様はバシヌ様のご子息であって、地上及び地獄の巡察を終えて戻ってこられた」とヨイショをしている。


 あっ係長さんが倒れた。で、バシヌさんが雷を係長さんの頭に落とした。係長さんが再起動した。係長さんが課長さんの顔を見つめている。何か言いたそう。課長さんは首を横に振った。


「父上、その泉の件は私も関わっているので穏便に済ませたいのだ」


「そうだろう。人種ひとしゅごときが泉の水を汲むなどできるはずがない。逆賊リーファが手助けをしてもだ!」


「リーファは私の友人なので悪く言わないでほしいのだ」


「ルシフェル、友は選ぶべきだ。リーファは奸智にたけていて、もう少しで東方の支配権をリーファに握られそうになったのだぞ」


「父上は私には神を見る目がないとでも言いたいのでしょうか?」


「お前なら、奸智にたけたリーファを使いこなせるか! さすがは我が子だ!」


 親バカ全開だ。係長さんの失言でコキュートスになった執務室に春がやってきた。


「父上、それでお願いなのだが、皇帝領への攻撃をやめてほしいのだ」


「係長、止められるのか? 決済済みとのことだが」


「無理です。すでに決済が下りており、システムが回り始めています。被害を最小限にしたいのであれば、内諾した神々に話をされるほかありませんが……」


「係長、何かあるのか?」


「内諾された七柱がそろって次期最高神候補の方々ですから、ルシフェル様の言うことを素直に聞くかどうかは疑問です」


「連中は世襲を認めんから厄介だ。下手に飛ばして失敗したか。我が子よあれはお前がでて行けば、次期最高神に内定しているお前に辞退しろと言いだすのに決まっている。ルシフェル、お前が連中に会うのは禁じる。帝国領が天災で焼け野原になるだけだ。大したことではない。ではルシフェル、ワシとゲームをしよう」


 グリムは接待ゲームを始めると、最高神の機嫌が悪くなった。


「次期最高神がわざと負けるとかするのは良くないと思うぞ」というと最高神はゲームをやめて執務を始めた。その前にキングをポケットから出せよって私は言いたい。




「課長、帝国に神罰を下す七柱のリストを私に渡してほしい」


「ルシフェル様、お父上様が、それらの神々との接触を禁じましたが……」


「実力で勝ち取れと父上は言っているのだ。私がその七柱よりも実力は下なのか? 課長にはそう見えているのか?」


「いえ、とんでもない。ただ、実力差は僅かだとは思いますが……」


「それは楽しみなのだ」


 ダメだ! バトルジャンキーの顔になっている。


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