092 アズサ、天界に行くその1
私とグリムは船に乗って天界に向かっている。アリスとルーにはお留守番は嫌だとごねられたけれど、グリム並みの魔力量がないと船に乗れないと言われると、二人とも黙るしかなかった。
私は不思議に思った。なぜ、私はそんな人外しか乗れない船に乗れるのだろうかと。考えるのをやめた。
船は、魔王城に停泊させてある? ということで、ダンジョンの十一階層から魔王城に転送陣で転送されて、本物の魔王城を見た。グリムの湯と書かれた暖簾を掛けた大浴場だけを、グリムは見せてくれる。天界から戻ったら一緒に入ろうと言われている。いや、魔王城を見せて。
天界に行く船なのだが、元から二人乗りなので、魔力量は関係なく乗れないとグリムに愚痴ったら「後四隻あるので、魔力量さえクリアしたら出しても良いのだ。魔族でもこれらの船にに乗れるのは前魔王のゾンとイグノの叔父さんと後二人しかいないそうだ。その中に私も入ったのか、ホント考えないようにしよう。
天界に行く船の形なのだが、涙滴型でとても速そうな船に見えた。実際極めて速くて光の中を飛んでいる感じがする。時折、ワープ? すると外の風景が見える。星々が少し歪んだ形に見える。グリムは空間を曲げているので、実際の形はもっと整っていると教えてくれた。恐るべき小学生だ。
私も未だに中学二年生のまま。というか卒業ができる可能性が極めて低い。現在の私の立場は皇帝の敵なのだから。でも、中学校中退であれば、薬師ギルドの学歴要件はクリアできる。除籍だと、特例措置で通学したという証拠を提出すれば入会できる。ただ入会金が五割り増しになるのが痛いけれど。
三日ほど飛ぶと、天界が見えてきた。
「アズサは、一応、人種なので神々との会話は禁止されている。もっともアズサが話しかけても神々は無視するはずだ。言いたいことがあれば、私を通して言うように」
「一応人種」発言に抗議した方が良いのかもだけど、グリムがいないと私の主張はなかったものとして扱われるのは、困るので飲み込んでおく。私も大人になったものだ。
船を降りて、周囲を見回すと白い神殿がいたるところに建っている。一部修復中の神殿があるけれど、あれは初代様が壊したのだろうか? 神殿自体が自動修復しているから、壊す意味があったのだろうか?
「ルシフェル様、お帰りなさい。お父様は執務室におられますよ」
「ありがとうなのだ……」
「アズサ、私は天界では初代様の扱いになるので、慣れてほしい。最初にきた時は私はグリムという名前になったと言っても誰もが、ルシフェル様としか呼ばない。神々は基本的に他者の話は聞かないのだ」
「了解です」最初から交渉の余地がなさそうな情報をありがとう。
「ルシフェル様、もうお父上とはゲームをなさらないでくださいね。お父上がチートするのは当たり前なんですから。そろそろ慣れてくださいね。卑怯だと言って神殿を度々壊されると、無駄に我々の神力が減りますから」
「わかっているのだ。私は勝ち負けはまったく気にしていないのだ」
「ルシフェル様の反抗期も終わったようでめでたいことですな」
「アズサには、悪いが私はここにはきたくなかったのだ。私はグリムであってルシフェルではないから。私は私の名前が大好きなのだ」
「ごめん。グリム」
「親友が困っているなら、助けるのは当たり前なのだ」
一際大きな神殿にグリムは入っていった。天界の頂点に立つ初代様の父上がいる神殿に入った。グリムが神殿の中に入ると中にいた神々がさっと両脇によって通路を開けた。
初代様って堕天使じゃあないみたい。明らかに最高位に近い神なのではないだろうか?
「バシヌ様、お子のルシフェル様がこられました」
「バシヌというのは、初代様の父上だ。アズサ。最高神なのだ」
「ゲームで負けて飛びだしていったお子ちゃまが戻ってきたのか? 構わないから通せ」
扉の前で取り次ぎをしてくれた神様がため息をついていた。「わざわざ、煽らないでも」ってつぶやく声が聞こえた。
「ゲームの続きをしにきたのか?」
「いや、キングが服の中にあるチェスはしたくないし、時間を止めて積んであるカードを変えるカードゲームもしたくないのだ。話があってやってきたのだ」
キングのいないチェスって絶対に負けないだろう。チェックメイトができないもの。時間を止められたらチートやり放題。それが最高神っておかしいと思うよ。
「つまらん。お前しか本気でワシにゲームを挑む者がいない。勝っても全然楽しくないのだ。ルシフェル、さあゲームをしよう!」
最高神殿、あんたは子どもかとツッコミを入れておく。
「ゲームはまた今度なのだ。父上、帝国への処罰についてお願いがあってきたのだ」
「ゲームをしてくれるなら、何でも聞いてやる。我が子よ。帝国の処罰って何だそれは? ワシはそんな話は聞いてはおらんぞ!」




