009 アズサ、スケルトンの大軍に襲われるその1
「あなたはいつから、精霊が見えるようになったのですか?」
「いつからと言われましても、物心がついた時には見えてました。私には友だちがいなかったので、精霊と遊んでいました」今も友だちはいない。口に出しては言わないけれど。
「あなたは精霊とお友だちですか。確かにあなたの監視に付けた精霊たちが踊っています」
エルフ様がはっきりと私に監視を付けたと明言したよ。本人の同意が必要だとは思わなかったのだろうか? ああもう面倒くさいことになった。魔族あるいは魔族並みの力を持った人間って、人外だよ。そんなのに目を付けられたら、命が幾つあっても足りやしない。早く三十階層まで潜って、コイツらと別れないと本当にヤバい。
「帝国騎士の皆さんの事情は聞きません。聞くと大変なことに巻き込まれるのが見えるので、話さないでください」
「あなたはすでに巻き込まれています。ワイバーンを一撃で動けなくした時点で確実にあなたは、敵認定されたはずです」と楽しそうにエルフ様が笑う。私もつられて笑った。諦めの笑いだけどね。
「ところで、治癒師殿、どうして治癒師殿のテントには虫にが入っていかないのか? 虫除けを、我々は焚いているのに、虫がテントの中に入ってくるのだが?」
「私、冒険者なので、生活魔術が使えます。虫除けの魔術をテント周辺に施しました」
「治癒師殿、ツケはもう効かないのだね」
「はい、ウチは原則ニコニコ現金払いですから」
「では、この宝石を進呈するので、戦士のテント周辺に虫除け魔術をお願いしたい。彼女は虫が大嫌いなのだ」
「この宝石なら、全員のテントに虫が入らないようにしますよ」エメラルドグリーンの石は珍しい。これなら金貨一枚ってとこかな。
帝国騎士の皆さんのテントの周辺にも虫除け結界を張った。若様とエルフ様が自分たちのテントに戻ったので、魔術師と戦士から送られる殺意のこもった視線から逃れられた。戦士も危険と心のメモ帳に書いておいた。
私は星空をしばらく眺めていた。ここって毒虫さえいなければ、別荘とかを建てたい階層なんだけどね。私は星空が好きだ。一日中眺めていても飽きない。それにここの星空は時間の経過ともに変化する。黒猫の連中は信じなかったけど。
ここは一日中星空なので時間感覚が狂う。私は昼間は光る魔導時計をいつも持っている。今が午後八時、起床は午前四時っと。アラームをセットしてと、いつもなら星空を観ながら寝るのだけど、ワイバーンの飼い主が、きっとこちらを見張っている。私はテントの中に引っ込んだ。
土魔術で深い穴をあけて、私はその穴の中に入って横になる。そして土を硬化魔法で固めて穴に蓋をする。以前これで寝ていて、タクミが魔物の襲撃だと私のテントに飛び込んできて、私がいないので大慌てしていたのを思い出した。土の蓋を開けて顔を出したら、「アンデットだあ」って叫ばれて短剣で突かれそうになった。面白かったね。その後しばらく、「棺おけで寝るアズサ」って呼ばれたっけ。
午前二時、何か騒がしい。蓋を開けて起き上がった。アサシンが私のテントに飛び込んできて、地面から顔だけ出している私を見て「お化け」って叫んでいる。お前はガキか。若様も飛び込んできて、驚いている。
「なんですか? 夜中に騒々しいですね」
「敵襲だ!」
「この階層には毒虫しかいませんよ。寝ぼけないでくださいな」
「そうなのか。しかしスケルトンの大軍がこちらに向かってきている」
「スケルトンの大軍ですか?」私は穴から出て、テントからも出て全周囲警戒状態になった。万単位のスケルトンがこちらに向かってきている。レイス(幽霊)も混じっている。かなりマズい。レイスは即死魔法が使える。
私とエルフ様は生き残るだろうけど、後はダメだろうな。ワイバーンの飼い主さんがそれで納得してくれると嬉しいのだが、無理かなあってぼんやり考えていたら、「治癒師殿、諦めるのはまだ早い」と若様が私を励ましてくれた。
「スケルトンもレイスも四時になれば消えますのから、二時間頑張ってくださいな」
「どうすれば良いのか?」
「私たちの周囲に高い土壁を作って頑張るとかですかね」
「ミドレイ、周囲に土壁を作れ!」
魔術師はファイアボルトを撃つのやめて土壁周囲に築いた。私はエルフ様に近寄って「エルフ様、スケルトンの大軍の中にレイスがいます。精霊術で結界を張ってもらえませんか?」
「エルフ様に指示するとは無礼だろう」って戦士が叫んだ。
「申し訳ないが、今の私は、精霊術を満足に使えない」それでローブから魔力を補給しているのか。




