008 アズサ、エルフを耳長族と呼んで怒られる
薬草をすり潰してタブの木の樹皮を剥いで細かく砕いて、水で練ってと、これが乾燥したらできあがり。
「おい、治癒師、我々の分の線香も頼む。金は帝都に戻れば払う」
「冒険者は自分の分は自分で作ります。どうもすみません。これ以上のツケはご勘弁くださいませ」とすげなく魔術師の注文を断った。
「ミドレイ、我々も作ろう」と若様が言い出した。
「いえ、私が皆さんの分を作ります」と言ってローブの人がフードを脱いだ。
「えっ、耳長族?」
「無礼な、エルフ様だ」と魔術師が顔を紅潮させて怒鳴った。
「道理で、精霊がうるさいと思いました」
「あなたは精霊の声が聞こえるのですか?」
「はい、聞こえます。生まれつきです」見ようと思えば精霊が見えるのだけど、話す必要はない。
さすがはエルフ様、手際が良い。線香を乾燥魔法であっと言う間に乾かしてしまった。自然に乾かした方が良いのではと思ったけれど、口に出しては言わない。余計なことを言っては、黒猫でも嫌われていたっけ。
「若様、虫除けの線香も用意できました。先を急ぎましょう!」と魔術師が若様に進言する。
「ミドレイ、先は長い。治癒師殿と一緒に行く方がおそらく早く着けると思う」
「私もアーサーの言うことに賛成です。精霊の声が聞こえる。人種と話をしてみたい。とエルフ様が言ったので、シブシブ魔術師は引いた。私を睨みつけながら。あのう、私は何も言ってませんし、魔術師さんの意見に大賛成なんですよ、私は。
私は帝国騎士の皆さんと距離をあけて自分のテントを張った。ついでに虫除けの結界も張っておく。
「クーリエイトウォーター」とお鍋に水を注いでと、タブの木の枝を集めてと「フランマ」はい、上手に火が着きました。沸騰した水にボーアのお肉を少々とジャガイモを粉にしたものを水で練って丸めたものをそっと入れて、味が悪くなるけど、体から虫除けの香りがでるように薬草をすり潰したものを少々入れる。入れすぎると苦手くて食べられなくなるので注意が必要と。
あちらも野営には慣れているようで、水はエルフ様が精霊魔術で出している。火の方は集めた枯れ枝に魔術師が、ファイアボルトって危ないだろう。
若様がこっちにやってきた。「来るな、来るな」って祈っているのに。
「治癒師殿、治癒師殿の鍋から薬草の臭いがするが。どうしてなのか」
「スープの味を犠牲にして体から虫除けの臭いがするように、薬草を粉にしたものを鍋に入れました」
「少し味見をしても良いだろうか?」
「後味が悪いですよ」
「わかった」若様は鍋に残っていたスープを、匙で掬って一度口に含んで飲み込んだ。
「少し苦味を感じるけれど、それほど悪くはない」味見をしたら自分のテントに戻ってください。魔術師がめちゃこっちを睨んでますよ。
「治癒師殿はどこで魔術と魔法を学んだのか?」
「私に魔術を教えてくれたのは私を育ててくれた人、さらに治癒魔術、魔法は育ての親の友人から教えてもらいました。二人ともすでに亡くなっています」
「お話中、失礼する」ああ、もうエルフ様まできたよ。戦士と魔術師の二人から熱い視線を送られてくる。早く二人をこちらに戻せと、二人の目が言っている。
「あなたは精霊の声が聞こえるそうだが、十三階層の森の精霊がざわめいていたのは分かりましたか?」
「ワイバーンが隠れていた辺りともう一か所で。精霊が喧しかったですね」
「あなたも気付いていたのですね。あなたはワイバーンにほとんど注意を払っていなかった。その周辺を警戒してましたよね。ワイバーンを仕留めた後は更に警戒を強化した」
「エルフ様、どういうことですか? ワイバーンの他に何かがいたのですか?」
「あなたはどう思いました?」
「ワイバーンの飼い主がいたと思っています」
「私もあなたと同意見です」
「エルフ様、ワイバーンに飼い主がいたのですか?」
「それは、もしかして魔族」
「人種だとすると魔族と同程度の力を待っているのは確かですね」うん、この人たちと一緒にいると危ないのでさっさと逃げよう。あれ、見慣れない精霊が私の周りを回っている。
「エルフ様、私に精霊を付けましたね」
「やはり、精霊が見えるのです。精霊たちもあなたの側にいられて楽しそうです」
精霊を、私を監視するために付けたくせによく言うよ。これでこの人たちから私は逃げられない。




