074 アズサ、三十三階層でエルダーリッチと再会し文句を言われる
「あんた、ようも妖魔を冥府に送ってくれたなぁ。きっちり落とし前をつけてもらおうか。アン!」
「ごめんなさい。妖魔って死なないじゃないですか? そしたらどこかに送れば良いと思ってやりました。ごめんなさい。ご迷惑をおかけしました」
「迷惑料込みやから通行料はめっちゃ高いで、払われへんかったら、あんた、冥府で妖魔の担当してもらうからな」
エルダーリッチさんを本気で怒らせた。どうしよう。通行料が支払えなかったら、私は冥府でずっと妖魔のお世話係りにされる。
「あんたが支払うのはこの人ら全員か? アン」
「私たちと、あの人たちは別のパーティなので、別々の支払いでお願いします」
「別々ねえ。そしたら、この娘でエエわ」エルダーリッチがルーを指名した。
「この子は私の妹です。渡す訳にはいきません」
「この娘は奴隷やから、あんたの所有物と違うんかい」
「ママ……、お姉ちゃん……」
「お嬢ちゃんな、今、この人のことママって呼んだんか?」
「母と娘か。娘が奴隷にされてたんか。そうか、そうか。お嬢ちゃん、オッチャンが悪かった……。怖い思いをさせてすまなんだなあ」
「通行料はいらん。通れ! オッチャンは母娘ものはアカンねん。すぐ泣いてまうねん。エルダーリッチが泣いたら洒落にならん。はよ行け」
私たちはエルダーリッチさんの気分が変わる前に、さっと通りすぎた。白猫さんとエルダーリッチさんは揉めている気配がしたが、白猫さんってお金持ちだから大丈夫なはず。
かなり遅れて白猫さんたちがついてきた。「エルダーリッチを討伐すべし」とか言っている。何があったのだろう? 聞く気はないけど少し気になる。
「アズサさん、申し訳ないが三十六階層のインフェルノでは我々もアズサさんのシールドに入れてもらえないだろうか? 実はさっきのエルダーリッチに持ってきたエルクシエルをすべて通行料として取り上げられて、どう考えても、インフェルノに我々は入れない。ダンジョンから出れば、冒険者パーティ白猫の名にかけてお礼はする」
「三十五階層に入ったら酒屋に寄れって言うから、どういうつもりだって断ったら、さっきの通行料ではアカン、持ってるだけのエルクシエルを全部出せと言い出すし、めちゃくちゃだ。出さないなら無数のスケルトンとレイスと死霊と戦えだと。ふざけている。帰りは絶対にアイツを討伐しましょう。リーダー」
「お前たちの気持ちはよくわかるが、五十階層に到着して目的を果たしたらすぐに帝都に行かないと、そういう契約だ。エルダーリッチと遊んでいる時間はない。わかってほしい」
イグノの叔父さんのお店は、今回は時間がないからパスだよね。とはいえ、オーガの里の長老のお土産は必要だから、やはり寄らない訳には行かないか。買い物はすぐに終わるし。
「あのう、すみません三十五階層でお酒を買うので私たちは、エルダーリッチさんが話した酒屋さんに寄らないといけないので。買い物はすぐ終わりますから」と私が言うと白猫の皆さんは固まってしまった。アル君は膝から崩れ落ちていた。
三十五階層で戦闘でもあったようで、あちこち大木が倒れている。
「アズサさん、なんかすごいことになっていますね。この前きたときとかなり違いますね。イグノさんの叔父さんの酒屋はもうないかもですね」
「ヒロシ、縁起でもないことを言わないでよ」実は、私もおそらくイグノさんの親族が酒屋を襲撃したと思っている。
「アズサさん見て、幟が出てる」
幟には酒屋って書いてあった。木の虚に入ると、以前きた時と同じワイン大特価って書いてあった。
お店には誰もいなかった。「すみません」と店の奥に呼びかけてみた。
イグノの叔父さんがヌッとでてきたので、白猫の皆さんが戦闘態勢に入ってしまった。「魔人が酒屋とは」って声が聞こえた。
「すみません、オーガの長老とゴブリンの王女様へのお土産に、良いお酒がほしいのですが……」
「オーガとゴブリン」とボソッと言うと店の奥にイグノの叔父さんは引っ込んでしまった。十五分ほど待つと、イグノの叔父さんが二本ワインを持ってでてきた。
「オーガ」と一言言ってワインを私に渡した。アリスがそのお酒に印をつけた。
「ゴブリン」と言ってワインを私に渡した。アリスが印をつけて荷物に入れた。
「金貨、二枚」私は金貨二枚をイグノの叔父さんに渡した。一瞬だけどイグノの叔父さんが微笑んだようにみたいに見えた。やはり寄って良かった。
「魔人の酒屋か、なかなか素晴らしい品揃えだ」とエルリックさんがつぶやいていた。「帰りに一本買って帰ろう」とも。




