072 アズサ、二十一階層でボワンナーレさんと会うその1
私、アリス、ミーアとルーと黒一点ヒロシが私のパーティといって良いのだろうか? 同行の白猫の皆さんが前を行くのでサクサク二十階層まで進んだ。
ここからは私たちが先頭にたつ。私はシャルルからゴブリン王国では準男爵様なので、予定では兵士の誰何なく検問所が通れるはずなだが。おそらく、止められると思う。白猫さんたちが一緒だから。まあ、シャルルと面会しないといけないので、検問所の兵士に取り次ぎをお願いしないといけないのだけれどね。
二十一階層の洞窟を出るとゴブリン王国の検問所があって、人種の冒険者としょっちゅうトラブルがあるらしい。白猫さんたちもここで何度も押し返されたそうだ。白猫さんといえども、帝国軍並みに訓練された五百名の兵士の相手をするのはキツいという。
私たちが洞窟から出てきたら、ゴブリン軍に緊張感が走ったのがわかった。私は恥ずかしいけれども名乗りをあげた。「私はシャルル様の家臣でアズサ・ドゥー・ボナール。シャルル様にお伝えしたいことがあってきました。お取り次ぎ願います」
検問所の責任者さんが出てきて、私をじっと見つめて、「アズサ様、しばし検問所の待合室で、シャルル様からの返事をお待ち下さい。ところで、あの冒険者たちですが、数度この検問所を突破しようとした犯歴がございますので、武器を一応預からせていただきたい。それがダメということであれば、あの者たちの通行は認められません」
「エルリック様、武器をここで検問所に預けるか? 引き返すかどちらか選んでください。皆さんここでは犯罪者扱いになっているそうです」
エルリックさんは苦笑しながら、白猫さんたちの武器を検問所に預けた。暗器を除いてだけど。どの道砦に入るときに没収されるはず。おそらく、そのこともわかっているから、白猫さんたちは、砦には入らず近くで待機するだろうけれどね。
武器は砦の周辺で闇で売っているからそこで買ってほしい。かなりお高いけど、白猫さんたちはお金持ちだから問題なし。
シャルルが私たちに迎えをだしてくれた。白猫さんたちの同行も良いとのことだった。砦に入る前に、エルリックさんが事前に決めていたように、近くで私たちが砦からでてくるのを待つという。案内の兵士にその旨シャルルに伝えてほしいというと、伝令が砦に走って入ってすぐに戻ってきた。
「問題なし」ただし見張りの兵士は付けるとのことだった。私たちは砦の中に入ると、控えの間でしばらく待つように言われて、半時間ほどそこで過ごした。
大広間に通されてから十分ほどしてシャルルが現れた。かなり厳しい表情になっている。冒険者たちが、色々やらかしているので、その謝罪からした方が良いかもしれない。
「シャルル様、お久しぶりです。またお会いできて喜ばしい限りです。聞くところによると、無知な冒険者たちが日々シャルル様のお手を煩わせていることをお詫びいたします。街に戻りましたら、冒険者ギルドに報告するつもりです」
「冒険者と検問所のトラブルなど些事だ。私はまったく気にしてはいない。ただ、噂で、帝国軍一万が来襲すると聞いた。誠か?」
「皇帝陛下の命令でモブ将軍率いる兵士十人が出陣しました」
「私の聞き間違いでなければ、兵士十人といったのか?」
「はい、モブ将軍は兵士十人を率いて五十階層を目指しましたが、途中魔物に襲われて、兵士三名を失い、十三階層で何者かに毒を盛られて全員亡くなった聞きました」
「ですので、私どもが帝都に戻れば、帝国軍の来襲はないかと思います」
「お前たち次第では、帝国軍が来るということか」
「はい、当所予定では帝国軍五万がダンジョンの五十階層を目指す予定でしたから」
「そうか。ならば帝国軍五万を迎え討つ部隊を配置しておくか」
「皇帝は、帝国軍を派兵せず、私たちの帰りを待つと思いますが……」
「すでに計画が立てられている以上、動員計画が動きだしている。その将軍もそれを知っていて指揮官に志願したら斥候部隊の指揮官にされたと考えるのが自然だ。必ず本隊が動く。ゴブリンごときが二十一階層から下を支配しているのは、人種として腹立たしいだろうしな」
「二十一階層で戦争ですか?」
「ああ、近日中に攻め込んでくるだろうよ」
「気の毒だと思うぞ。五万の兵士がここで三万五千に減らされるのだから、三十三階層でエルダーリッチとトラブってくれれば、三十六階層では兵士は一万五千まで減っているはず」
「シャルル様は楽しそうですね」
「私はダンジョンから出てゴブリン王国の勢力範囲を拡大する派だからな。ゴブリン王はそれを望んではいないから、こっちからは仕掛けられないし。ゴブリン王が怠惰なので困る」
怠惰ではなくそれって平和主義だから。私は良いことだと思うよ。




