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071 アズサ、おいちゃんに尋ねる

「おいちゃん、いる? アズサです。帝都から戻りました」


「元気そうで何よりだ」


「おいちゃんが、おジンから譲られた魔剣のことで聞きたいのだけど」


「魔剣のこと?」


「おジンの前の持ち主のことが知りたいの」


「知ったところで何も変わらないと思うのだがな……」


「私が変えるかもしれない」


「俺も詳しくは知らん。おジンから聞いた話だけだが、それで良いか?」


「それで十分よ」


「おジンにその魔剣を渡した剣士は、おジンのライバルだった。めっぽう腕がたつ男で百年に一人と言われた天才剣士だった。その剣士からライバルと呼ばれたおジンも凄い剣士だと俺は思っている。本人にはカケラもその意識はなかったがな」


「その剣士は冒険者だったが、パーティメンバーを誰一人として信用せず、誰にもその背中を預けないことで有名だった。おジンは剣の修行を終えて、あちこちのパーティを渡り歩いていた。というか毎度厄介ごとに巻き込まれて追い出されていた」


「おジンはその天才剣士のパーティに臨時で参加した。おジンにはいくつも悪い噂がくっついていたから、とりあえず腕がたつので見てみようって感じだろうか」


「おジンの悪い噂その一、おジンが入ったパーティはろくな目に合わない。その天才剣士のいたパーティも一本道で魔物のトレインと遭遇した。逃げ場はない。天才剣士はおジンに背中は任せたと言って、魔物のトレインに正面から斬り込んだ。おジンも後に続いた」


「あれは最強の冒険者パーティだったな。俺もそのパーティに憧れたが、俺にはそこまでの腕はなかった」


「ある時、その天才剣士が生まれ育った村がどういうわけか、皇帝の命令で村人ごと焼かれてしまった。それを伝え聞いた剣士は、激怒し、村に残っていた帝国軍に一人で斬り込んで全滅させた。で、剣士は数万の帝国軍の大軍に囲まれて捕まり奴隷にされた」


「ある日、おジンは十三階層で働いていた奴隷に声をかけられたそうだ。天才剣士が持っていた魔剣の隠し場所を教えると、ついでに子どもを頼むと言われたそうだ……」


「ワシが知っているのはそれだけだ……」


「おいちゃん、教えてくれてありがとう」


 私の親の仇は皇帝で間違いない。私が命の泉から水を汲んでこなければ皇帝はその内死ぬ。


 その前に権力を行使して、小料理屋の女将さんとか、私と親しい人を人質に取るだろうけどね。どうしても不老不死に皇帝はなりたいから。村人を焼き殺す皇帝。もしかしたら、私の親類がいたかもしれない。両親の仇だけではないかもしれないな。


 私は親の仇、私の故郷の仇。皇帝だけではなく、その家族も、皇帝に仕える臣下を皆殺しにしてもこの憎悪は消えそうもない。


 魔力が私の内側からいくらでも湧き上がってくる。この世界が消えたら私は満足するかなぁ。たぶん、死にほど後悔をする。私はミルヒー様の弟子だから。ミルヒー様の命が尽きる瞬間、私の名前を呼んでくれた。私に多くの命を託して……。


 でも、私は皇帝を許せない。たぶん皇帝が死んでも許せない。私が悪鬼羅刹だったら良かったのに。


 私は治癒師、人の命を守る者。世の中理不尽過ぎる。


「お師匠様、大丈夫ですか。顔色が悪いように見えます」


「大丈夫……じゃないかな。少し休みたい」


「ママ……、お姉ちゃん大丈夫?」


「アズサ、このは誰だ?」


「この子はルー。そうね私の家族。妹よ。おいちゃん」


「そうか、それは良かったな」


 おいちゃんの緊張していた表情が緩んだ。おいちゃんは、たぶん、父親同様、皇帝軍に私が一人で斬り込むことを恐れていたに違いない。私の場合斬り込むのではなく、雷を落とすかな。


 できることならこの手で皇帝のクビ一つもらうだけで良い。オマケはいらない。


 ああ、そんなことをすれば、連座でここにいる人たち全員が帝国によって処刑される。私の知人というだけで全員が処刑される。この世界は本当に理不尽過ぎる。


 女将さんたちには迷惑はかけられないよ。私は五十階層に命の水を汲みに行く。


 でも。皇帝に渡す瞬間、皇帝の目の前で命の水を床にぶち撒けるのもしれない。絶望した顔の皇帝のクビから上をもらって、私特製の腐敗防止剤を振りかけて、部屋に飾ってしまうかも。その時は証拠隠滅ですべてを焼き払うの。


 私、治癒師を廃業しようか。



 おいちゃんは白猫が行くなら、「俺が行く必要はない。タクミを鍛えたい」って言って一緒には行ってくれない。白猫が怖いんだよ。白猫のリーダーのエルリックの本音がまったく見えないから。白猫も命の水狙いなんだろうか?


 皇帝陛下に恩を売る。お貴族様に命の水を売りつけるのだろうか? 考えてみても仕方ないか。私は私のやるべきことをやるだけだ。それがどういう結果になろうとも。


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