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007 アズサ、ワイバーンを退治するその2

 若様が剣に魔力を注いでいる。魔剣の剣士か。私はいつでもライトニングが撃てるように準備はした。ワイバーンの飼い主の気配が消えた。私は全周囲警戒状態。ワイバーンより飼い主がヤバい。おそらく、狙いは帝国騎士の皆さまなのは間違いない。私はただ巻き込まれた善良な治癒師ですって言っても、やられるだろうなあ。本当についてない。


 ワイバーンが空に舞い上がった。ターゲットロックオンって感じがする。そのターゲットは騎士様ではなく、私だ。もう、私は関係ないだろう。「ふざけるな!」


 ワイバーンが私に向かってブレス、炎を吐いた。問題なくシールドが防いだ。


「あの者が治癒師というのは嘘です。あれは高位の魔術師に間違いありません。黒髪ですから」


 黒髪だと高位の魔術師なのか? それじゃあ小料理屋の女将さんも高位の魔術師なのか? 女将さんって、実は異世界料理を出す魔術師かも。そういや、お味噌とかお豆腐とかどうやって手に入れているのだろうか? 一度女将さんに尋ねてみよう。


 ワイバーンが私に向かって降下してきた。キーー、キーーと不快な音がする。シールドを爪で引っ掻いている。ワイバーンがイラついているのはよくわかる。その隙に若様がワイバーンの足に一撃を与えた。ワイバーンは空に逃げた。次のターゲットは若様に変わった。


 おかしい。あの重装備の戦士はローブの人の前から一歩も動かない。若様よりローブの人を守っているように見える。


 魔術師は盛んにファイアボルトを撃ってはいるが、ワイバーンに嫌がらせをしている程度で、まったく効いていない。賑やかしで魔力を使うのは費用対効果とかいうのが悪いのでは。ああ、参加することに意義があるのか?


 ワイバーンが若様に向けて炎を吐いた。仕方ない。治療した患者が死ぬのは、寝覚めが悪い。若様にシールドをかけてやった。


「若様、シールド代は金貨三枚です。覚えておいてくださいね」


「治癒師殿、恩にきる。帝都に戻れば必ず払う」ウチは原則いつもニコニコ現金払い。ツケお断りなんだけど。黒猫でも、いつもそう言っては嫌がられていたっけ。追い出された理由をまた思いついてしまった。


 アサシンさん、ワイバーンに集中しすぎだよ。全周囲警戒しないと、飼い主に誰かやられるかもよ。飼い主はどこへいった。森の中にはいないみたいだけれど。


 ワイバーン、なぜお前は、飼い主を追いかけないのか? なぜ飼い主もワイバーンを引かせないのか理解に苦しむ。そろそろライトニングでワイバーンには寝てもらうとするか。 次の階層へ行きたいから。


「ライトニング」ワイバーンの頭に雷が落ちた。ワイバーンが地上に落下してヒクヒクしている。若様がワイバーンの首に剣を突き刺してトドメをさした。


 私は相変わらず全周囲警戒体制のまま。アサシンさん、あんたも皆んなと一緒に喜んでどうするよ。警戒しろよ。ワイバーンよりもっと危ない人間がどこかにいるのにさ。


 ワイバーンを若様が倒して喜んでいる帝国騎士の皆さんを放置して私は十四階層に続く、洞窟に入った。毎回、吸血コウモリがウザイ。


 後ろからバカスカファイアボルトを魔術師が撃っている。魔術師が放った火球がかなりシールドに当たっているのだけれど、これってワザとだよね。魔術師は要注意と心のメモ帳に書いておいた。


 十四階層にやっとこれた。今日はここで私は野営することにした。だってここはダンジョンの中で、星空が見えるところだから。それと下手に動くと虫に刺されるし。ここって毒虫も多くて、刺されると発熱したり、筋肉が痙攣したりで、二週間は足止めされる。だったら虫除け線香を丸一日かけて用意して進む方が結果的には、この階層を早く抜けられる。


 以前、タクミにそう言ったのに、タクミは、私の言うことを無視して進んだもんだから、レンジャーと斥候が虫に刺されて発熱。タクミ自身も虫に刺されて発熱と嘔吐をするハメになっていた。


「反省しやがれ」と言って、私はそいつらの治療を放棄してやった。これもパーティを追い出された理由になるな。私もけっこうやらかしてる。なんか笑えてきた。


「治癒師殿、何かおかしいのか?」


「いえ何でもありません。私はここで野営することにします。この階層は毒虫が多いので、虫除け線香を丸一日かけて作らないといけませんから」


「まだ、野営するには早い。もう少し行けば村があるはず」


「私は人が住んでる街や村には怖くて行けませんので、どうぞお先に行ってくださいませ」


「若様、先に進みましょう。村人が襲ってきても返り討ちにするだけです」


 早く行ってくれ。ヤバいワイバーンの飼い主と私は関わりたくないんだよ。


「ミドレイ、治癒師殿の言うことを聞いた方が良いと思う。我々もここで野営をする」


 ガッカリだよ。先に行けば良いのに。「ついてない」と言いながら、私は虫除けの薬草を集め始めた。

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