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064 アズサ、アリスを聖女に仕立てる

 私たちは妖精弓手エルフアーチャのミーアと一緒にボーレール岬に通じる街道を徒歩で旅をしている。私とアリスは平民の治癒師が着るローブを着て、ミーアはその特徴的な耳を隠すために、やはりフード付きのローブを着ている。


「お師匠様、街道にたくさんの露天が出ていますね。お祭りでしょうか?」


「さて、収穫祭はまだ先だし、この辺の有力者の結婚式でしょうか?」


 ミーアが絵姿を売っている露天を覗いて、一枚の絵姿を買った。無病息災、願い事成就の絵らしい。私はその絵を見て、アリスそっくりだと思った。アリスもその絵を見た途端、「この絵は間違っている」と街道の真ん中で怒り出した。


 この絵姿は聖女様と、なかなか綺麗な字で書いてあった。金髪碧眼の聖女様の後ろに地味で黒髪の従者が、付け足しのように描いてあった。これは私だけど、顔が線だけ。私はへのへのもへじかよと、心の中でツッコミを入れた。


「お師匠様、これは酷いです。酷すぎます。あの露天に行って抗議してきます」


「聖女様だって大騒ぎになるけど、アリスはそれで良いのかなあ」


「それは困ります」


「だったら、ここは見逃すしかないよね。私たちの商売に差しつかえるのは困るから、いつも通りポーションを売って、お代をもらって治癒魔法をかけないと」


「わかりました。抗議は後日にします」そう言うとアリスは目深くローブのフードを被ってしまった。


「おや、あそこで聖女様が喜捨を求めているみたいですよ。アズサさん、アリスさん。どうします?」




 私たちは聖女様のところにやってきた。


 聖女様は「私に喜捨をすれば万病が治ります」と口上を述べていた。こいつは商売がたきだ。商売がたきは早い内に潰しておかないと。第一万病に効くとか誇大宣伝も良いところだよ。


 私たちは、その聖女様の隣に立った。怪訝な顔をしている聖女様。で、私を挟んで右にアリス、左にミーア。私は二人のフードを掴むとバッと取ってしまう。「さて、皆さま、聖女様と聖女様を守る妖精弓手エルフアーチャとその従者」どちらを信じるのでしょうか? それは皆様次第です。ただし、偽聖女様を信じた方には、絶対にご利益はありません」


「病気を治してほしい人は従者である私に言いにきてください。聖女様のポーションを絶賛販売中です。聖女様の治癒魔法をかけてほしい人も私に言いにきてくださいね。治療費は交渉ですから。よろしくお願いします」


 商売がたきの聖女様は青い顔しながら、私こそが聖女だと言い始めた。そう言う言い方って聖女様らしくないと思うんだよね。


 エルフの妖精弓手エルフアーチャが一緒にいるせいか、私に声をかける人がちらほら。ポーションを買って飲んだ人が「こちらが聖女様だ!」と叫んでくれたお陰で一気にこちらが有利になった。アリスが真っ青な顔になったことは、見なかったことにした。


 偽聖女様のために売上が落ちるのも嫌だし、病気やケガをしている人がそのままになるのはもっと嫌だから。


 偽聖女様のお陰で商売繁盛。いくらかお礼をした方が良かったかな。


 問題は私たちの後ろから、聖女様が大好きな人たちだ。この人たちはポーションは買わないし、治癒魔法の依頼もしない人たちが、私たちの後をついてきた。


「お師匠様、どうするのですか? この人たちを」


「私の副業は魔術師ですよ。幻惑魔法で姿が消せます。ミーアはどうします。精霊術で姿を消しますか?」


「私は弓は得意ですが、精霊術はさっぱりです。アズサにお願いします」


 精霊術はさっぱりなのか。残念だ。


 私は、私、アリス、ミーアに幻惑魔法、目眩しをかけた。私たちの後ろについていた人たちが聖女様が消えたと大騒ぎをしている。私たちは街道から外れて、その人たちがいなくなるのを待った。


 幻惑魔法って移動すると見つかることが多いので、動きは最小限にしないといけない。


 聖女様が大好きな人たちがいなくなったので、いつもの野営地に行ったら、さすがは聖女様大好きな人たちが何人かが待っていた。この人たちっておそらくボーレール岬のことまで調べていると思うので、目眩しの魔法を解いて、いつも通りテントを張って野営の準備に入った。


 聖女様大好きな人たちも同様に野営の準備に入った。私たちのところにくる人はいなかった。なかなかマナーの良い人たちで良かったと思う。


 近寄ってきても結界でテントに入れないかけれど。エレンさんがテントに入ってきたことで、私は野営テント周辺の警戒をこれまで以上に、厳重にしている。


 でも、結界を叩いてくれると、急患だとわかるようにはしてあるけどね。


 その晩事件が起こった。

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