058 アズサ、初代様と再会する
「グリム、ここで何をしているの?」
「うむ、お前たちは我が半身の従者か」
「グリムではなくて、初代様ですか」
「いかにも、私が初代魔王グリムゾンなのだ」
「最初の質問ですか、初代様はここで何をされているのですか?」
「ブドウの味見だが」
「お腹が空いておられるのなら、私たちが食事を作りますから、ブドウのつまみ食いはおやめください」
「食事なら、ここのブドウ園の主人と一緒に食べたので、お腹は空いてはいない。もし、お前たちのお腹が空いているのなら、ブドウ園の主人のところで連れて行ってやるので、お前たちこそ、食事を食べさせてもらえば良い」
「それと、私はブドウをつまみ食いしているのではなく、ブドウ園の主人に頼まれて、このブドウを、ワインにする方が良いのか? 蒸留酒にしてしまう方が良いのか、そのための助言をしないといけないのだ」
「あのう、どういう意味でしょうか?」
「今年は幸いなことに雨は少なかったが、曇り空が多くて日の光も少なかったのだ。そのため、ブドウのできがけっこう微妙だったりする。そこで、このワインソムリエの私の出番だったりするのだ」
「初代様なら、知識も経験も豊富ですから、理解できます」
「さすがは半身の従者だ。理解が早くて助かるぞ」
「初代様は、このブドウはワイン向き、蒸留酒向きどちらが良いと思われますか」
「このブドウで、ワインを作れば、甘味は少なくて酸味が強いワインになる。ワイン通にはたまらない味にはなる。しかし一般受けはしないので、売れないと思う。今は甘口ワインがよく売れるから」
「味をとるか、売れる商品を作るかですか」
「それは、ここの主人が決めることだ。私の知ったことではない」
「半身の従者、ところでお前こそ、なぜここにいるのか?」
「白露草を摘むように言われてここにきました」
「白露草か、不老不死になりたい者がいるのだな。不老不死になっても良いことは何もないのに……」
「白露草のことをご存知なのですか?」
「この地元の者なら誰でも知っているはず。絶対摘むことのできない草。地元の者は幽霊草と呼んでいたな」
「ブドウ園の主人に会わせてもらえませんか」
「それは良いのだが、私はまだ仕事中なのだ。少し待ってほしいのだ。それと私はルイーゼと名乗っているので合わせてほしいのだ」
私は皆んなのところに戻って、白露草の話しをかいつまんで話した。ルイーゼさんの仕事、ワインソムリエの仕事が終われば、ブドウ園の主人に会わせてもらえることになったと告げる。
「摘めない草を摘むってどうすれば良いのだろか」と植物学者のルイ先生が頭を抱えている。
初代様は、ブドウ園の主人のところに戻って、ブドウの特徴について説明して、あとはブドウ園の主人である、あなたの判断だと言って話を締め括った。
私たちのことは妹の知り合いで、幽霊草を調べにきた研究者だと紹介してくれた。
「初めまして、私は帝国魔術学園で教師をしているルイと言います。こちらは魔術学園大学のクララ、アズサ男爵とその侍女のアリスです」
なんて、ブドウ園の主人に紹介したものだから、ブドウ園の主人の家はパニックになってしまった。お貴族様が三人もこられたら平民は倒れる。
平服だったブドウ園の主人は晴れ着に着替えて、食事も質素な料理が片付けられる。私はその料理が食べたい。決して捨てたりしないように言っておかないといけない。
「幽霊草について、調べておられるそうですが、私どもも幽霊草は見たたことはございます。新月の夜に、ボーレール岬、正確にいうと、ボーレール岬の向こう側、海の上に現れます」
「ボーレール岬の地面というか、斜面というか、土から生えていないと言うことでしょうか?」
「その通りです。ですから私たちは幽霊草と呼んでおります」
そんな草は絶対に摘めないから帝都に帰ろう。見てから戻っても良いかもしれないな。
「新月というと来週ですよね、見てからどうするのか考えましょうか? クララさん、ルイ先生」
「そうですね……」ルイ先生がまた頭を抱えている。
ブドウ園の主人が、散財してくれて、頑張りましたっていう料理が並べられた。当然ワインも、私は一口飲んでみた。私はお酒に強くないので、嗜む程度にしか飲めないのだけど、このワインは飲みやすい。なので、ほどほどにした。二日酔いで自分にヒールって治癒師としては最低だと思うから。
初代様が、幼い見た目でグイグイ飲むので、クララさんとルイ先生が驚いていた。




