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006 アズサ、ワイバーンを退治するその1

「いや、それとこれとは別だ。お礼をすると言ったらする。それが帝国の騎士だ」


 ウザイ。いらないって言っているのに。帝国の騎士の矜持きょうじなんて私には関係ない。私は、早くここを立ち去りたいの。


「金貨は宿屋で払うのでついてきてほしい」


「私はまだ死にたくないので、ごめんです。宿屋に行くくらいならタダで良いです」


「何を言っているのか、まったくわからないのだが、宿屋がそんなに危険なのか?」


「ええ、間違いなく食べ物、飲み水に毒を盛ります。あの街自体が泥棒と人殺しで成り立っている街ですから。あの街で寝るくらいなら、私はゴブリンの巣の前で野営します」



「宿屋に荷物を置いてきたのだが」


「街の人間全員を相手にするつもりなら取りに戻っても良いですよ。私は御免です」


「若様、どうされます。それほど危険な街なら討伐すべきかと愚考します」


 街の人間を皆殺しにするつもりだろうか? 殺されても仕方ないことをやっている連中なので、同情はしないけれど。ただ、あの街でしか手に入らない薬があるので、治癒師の私としては、あの街がなくなるのは少しだけ困るのだが。


「荷物は諦めよう。我々は五十階層まで行かなければいけない。ところで治癒師殿はどこまで潜られるのか?」


「私は三十階層まで潜るつもりです」


「一人で三十階層とは無謀ではないのか?」


「私、三十階層までの地図が頭の中にあるので問題ありません。それとですね余計なことですけど、五十階層って大規模パーティでさえ攻略していない階層に、五人で挑むなんてそれこそ無謀の極みですよ」


「我々は階層主を討伐するつもりはない。三十階層までの地図が頭の中にあるのなら、我々も三十階層まで治癒師殿に同行したいのだが、どうだろう?」


「好きにしてください。食糧、飲み水は分けませんから、そのつもりで」


 魔術師が私をずっと睨んでいる。私は今まで冒険者として生きてきたので、お貴族様の作法なんて知らない。若様への口の利き方が悪いのは仕方ないじゃないか。


 私はあんたたちの命の恩人なのを忘れてほしくはないんだけどね。


「治癒師殿、街に行かずにどう行くのか? 我々の地図では街の中を通過することになっている」


「森に入ります」


「我々は森から命からがら出てきたのに、また入るのか!」そんなに驚かなくても良いと思うよ魔術師さん。


「治癒師殿、森にはワイバーンがいる」


「そうですか。なおさら駆除しておかないといけませんね」


「ワイバーンだぞ」


「亜龍です。ドラゴンではありません」


 そう言い捨てると私はさらに森の奥へと入っていった。街から、人間から遠ざかると安心する。


「ヴォルフの群れがいるぞ」と後ろで戦士だろうか。ご大層な鎧を着こんだ女性? が叫んだ。


「問題ありません。私の方が、ヴォルフたちよりも強いと認識しているので襲ったりはしません」


「あの治癒師の飼い犬でしょうか?」と魔術師が私に聞こえるように言う。面倒くさい奴だ。私は気にせず、森の中を進むと、樹々のあちこち焦げている。本当にワイバーンがいるみたい。しかも炎を吐く希少種みたいだ。


「ワイバーンは何頭いましたか?」


「一匹に決まっているだろう。二匹もデカいトカゲがいたら俺たちは生きちゃいない」軽装の男が叫んだ。アサシンかなあ。雰囲気がかなりヤバい。


 ワイバーンは基本的にツガイで狩りをするから変だ。私は薄く広く魔力を広げた。岩陰にワイバーンがいる。人間もその近くにいるのを感じた。誰かがワイバーンを使役している。しかしどうやってワイバーンをダンジョンに入れた? 元々ダンジョンにいたワイバーンを飼い慣らしたのか? ワイバーンより飼い主の方が危ない。


 私もおジンと同様、ついてないのかもしれない。「はあー」


「治癒師殿、何をため息をついているのか?」


「ワイバーンがあの岩陰にいます」


 一人を除いて、若様、魔術師、戦士、アサシンが緊張したのがわかる。ローブを目深く被っている人だけが平静だ。ローブに魔力が付与されているので、戦士系の人間ではないと思う。


 

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