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056 アズサ、学年主任の先生の虚偽報告にウンザリする

 ダンジョンから学園に戻ると、すぐに学園長に呼び出された。


「学年主任が、あなたたちが強盗の手引きをしたので、十五階層までいけなかったと訴えているのだけど、どうしたら良いのかしら」


「学園長から出発前に持たされた、魔石をお返ししますので、それで判断すれば良いと思います」


「学年主任の先生は、たぶん、私と違って偉い方だと思いますから」


 お貴族様は平民の言うことなど聞かないし、証拠があっても認めないので、どうしようもない。平民は泣き寝入りするしかないわけで。


 私はなんちゃって男爵だし、それは学園長のご判断にお任せします。私の場合、完全に学園長の策謀に巻き込まれただけだしね。


 学園長が魔石に魔力を流すと、壁に映像が映し出された。


「私の言いつけを守ってないわね。けっこう助けているじゃないの」


「それは、私の大きな独り言ですから、助言じゃないですし、滑車は先生たちではなく、従者さんたちのためですし、魔法は使ってないですよ」


「まあ、ギリギリセーフってことにしてあげましょうか」


 私は学園長室からでるように言われて、部屋に戻った。


「お師匠様、学園長とのお話はどうなりましたか? 私たちは学園から追放でしょうか?」


「ギリギリセーフだって。残念」


「お師匠様、マーリン様から課題が出されています。ご覧ください」


「珍しい、私のことなんか忘れていると思っていたのに」


「ボーレール岬に生えている白露草を摘んでくること」って私たちってさっきダンジョンから戻ってきたばかりなのに、また旅に行けってどういうつもりなんだろう。


 教科書読めジジイが突然何を言い出すやら、私は頭に血が上った。ボーレール岬ってどこにあるの? 岬っていうくらいだから海の近くだよね。帝都には海はないから、当然遠方だよね。意味がわからない。


「マーリンのジジイのところに行ってくるわ! ふざけるなよ、ジジイ!」


「お師匠様、私もお供します。また、龍の谷のようなことがあってはいけませんから」


 しまった。温厚な私の仮面が剥がれかけた。



 寮を出て宮殿に向かった。番兵が私を止めようとしたけれども、私の威圧を受けて気を失ってしまった。マーリンのジジイは宮殿の離れに部屋をもらって、研究をしているらしい。


 精霊さんが、ジジイの居場所を探してくれたので、最短距離でジジイの部屋に着いた。私は頭に上った血を少しだけ下げた。


「マーリン様、いらっしゃいますよね。アズサです。いただいた課題についてお尋ねしたいことがありますので、参りました」居留守をつかったら扉を壊してでも入ってやろうと思っている。


 扉が静かに開いた。中には、調合器具がたくさんあった。あっ、これほしい! 薬草の不純物を分離する魔道具だよ。この計量器パーミリグラムまで測れるのか。これもほしい。


「お師匠様、魔道具とか計測器とかばかり見ていないで、マーリン様にご挨拶を」


「マーリン様、これらの器具をどちらでも買われたのですか? 治癒師としてほしいのです。絶対ほしいのです」


「お師匠様、お話がまったく変わっています」


「アリス、私は何をしにここにきたのだっけ」


「白露草です」


「そうだった。白露草だった」


「アズサはこれらの機器がほしいのか?」


「はい、ほしいです」


「すべて、ワシの自作だ。どこにも売ってはいない。もし、白露草を摘んで持ってきてくれれば、この中にあるものを一つやろう」


「マーリン様、交渉成立です。嘘はなしですよ。戻ってきたら器具は全部他所に移動とかなしですよ」


「そんなことはせんし、なければワシが作ってやる。皇帝陛下に誓う」


「アリス、ボーレール岬に行くから、用意して」


「承知しました。お師匠」なんかアリスがあきれたような顔をしたように見えた。しかし、マーリン様もケチだよね一つだけしかくれないなんて。選ぶのが大変だよ。


 私が宮殿を出ると、アーサー、ミドレイ、エレン、カークの若様ご一行が待っていた。


「アーサー様、どうされたのですか?」


「マーリン様から依頼があった。アズサたちに同行して、ボーレール岬に行くようにと」


 私たちは寮に戻ると疲れた表情のクララさんとルイ先生が待っていた。


「クララ先生、ルイ先生、どうされたのですか?」


「学園長から呼び出されて、アズサさんたちと一緒にボーレール岬に行って白露草を摘んでくるようにと言われた」


「研修ですけど、まだ終わっていないのではありませんか?」


「わからないわ」


 もしかしたら、今度は、お二人が私の巻き添えかもしれない。ごめんなさい。

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