052 アズサ、先生方の尻拭いでため息を連発する。
学園長から先生方に出された課題は十五階層まで二週間以内に行って帰ってくるという極々簡単な課題だ。初日は四階層まで、進んだので、ここで野営する。
サポート役の従者さんは大変だ。先生は一人で四人用のテントを使う。従者さんはそのテントを張った上で、自分自身のために一人用テントを張って、夕食の準備をするわけだから。
私たちは、先生方から離れた場所に二人用のテントを張って、さっさと夕食を済ませた。先生方は未だ夕食が取れていない。
私たちは夕食を終えると、テントの中に地面に穴をあけて、アリスと二人その中に入った。声がテントの外に漏れるのを恐れて。
「お師匠様、先生方は大丈夫でしょうか? ダークシープを狩って三階層での失態を忘れたみたいですし」
「私たちは先生方がケガを負った際に治療する医療班だから気にしなくても良いの、学園長からそう釘を刺されているでしょう」
「そうなんですけど、今のままだと5階層のオオカミの森を抜けるのは難しいのではと思うのです」
集団行動で獲物を狩るレッサーウルフに対して、この階層で活動している初級冒険者パーティを例にとると、パーティメンバー間の連携が上手か下手かによってオオカミを狩る者になるか、狩られる者になるかが分かれる。今の先生方だと狩られる者になると私も思う。でも、魔力量も多い先生方なので一方的に蹂躙されることはないはず。多少痛い目を見て反省してもらおうと私は思っている。
五階層に到着した。夕食が遅かったため、就寝時間も遅くなり、先生方全員が寝不足。森の中を恐る恐る進む先生方。すでにレッサーウルフの縄張りに入っていて、二頭のレッサーウルフにつけられているのを先生方は、誰も気付いていない。
レッサーウルフが吠えた。仲間を呼んでいる。私たちは先生方から完全に無視されているので、レッサーウルフに囲まれない位置取りをして進んでいる。
先生方の周りをレッサーウルフが取り囲んだ。私とアリスは木の上に登った、そこからもし先生方がケガをすればヒールをかける。レッサーウルフは獲物が完全に弱って抵抗できなくなってから仕留める魔物なので即死は、よほど運が悪くなければないはず。
ようやく、先生方もレッサーウルフに囲まれたのに気付いた。円筒陣形を取った。守備の要の土壁は出さずに、ファイアボルトとアイスランスとウインドカッターでレッサーウルフを攻撃している。森の散歩時のヘルベアーと同じ戦い方だと思う。レッサーウルフにファイアボルトの軌道を読まれているので、簡単にかわされていた。まさかここまでダメだとは思わなかった。
先生方も焦って、詠唱を長くしてファイアボルトの威力を上げようとしている。詠唱が長い分、攻撃の間が開くのでレッサーウルフに距離を詰められては詠唱を中断しては軽めのファイアボルトで威嚇するだけに終わっている。
レッサーウルフが先生の一人に飛びかかった。腕を噛まれた。従者さんが短剣でレッサーウルフの腹を刺したので、レッサーウルフは後ろに飛び下がった。従者さん、グッドジョブです。
「アリス、あの先生にヒールをお願い」
「承知しました。お師匠様」
私たちの位置がわかると、先生方が「お前たち、何を見ている助けろ! 平民」とか言っていた。
「学園長から、治癒魔術、魔法以外の使用は禁じられています。ごめんなさい」
先生方もここにきて学園長の意図がわかったようで、顔から血の気が失せた。
従者さんたちは荷物を置いて短剣を持ち臨戦体制に入った。良い仕事振りだ。従者さんだけは助けようと心に決めた。
一人の先生が先生方の周囲に土壁を作った。レッサーウルフが土壁を飛び越えてくると、従者さんが短剣でレッサーウルフを仕留めている。良い感じ。
で、先生方はこの大変な時に会議を始めた。この人たちって生き残ることを考えているようには思えない。
冒険者パーティがレッサーウルフを見つけて狩りだした。良かった。この階層はクリアだ。あの冒険者パーティに銀貨五枚を進呈しよう。
土壁の中ではまだ会議が続いている。好きにすれば良いと思う。またため息が出てしまった。
長い会議の後、三人の先生がダンジョンから出ることになった。学園に戻りしだい退職することにしたようだ。残り四人の先生方が十五階層を目指すことになった。
長い会議をしていたため、先に進めずこの五階層にて野営することになった。先は長い。




