051 アズサ、ミルヒーからの手紙を読む。
「ミルヒーから、アズサに手紙を預かっている」
アカツキさんが無理矢理、私にミルヒーさんの手紙を持たせた。覚悟を決めて読んだ。
親愛なるアズサへ
あなたがこの手紙を読んでいるとしたら、私はこの世界から旅立っていることでしょう。治癒師は己が命を削って、人を治していることを、あなたは、私の師匠ノエル様から教えられていると思います。私とあなたは同じ師匠で学んだ同門です。ノエル様に認められた弟子はあなたと私だけ。
あまりに人を褒めないノエル様はあなたのことはいつも褒めていらっしゃったのよ。私はいつも嫉妬していたのよ。私が聖女にならなかった理由は、聖女になったら嫉妬ができないからなの。あなたのせいで、私は聖女にならなかったのよ。少しは責任を感じてくれたかしら。私ね、あなたに負けたくなかったの。あなた以上に多くの人を治してあげたかったの。
あなたの才能は私以上なの。本当よ。でも魔力制御をなんとかしなさい。でない治癒魔法が暴走しかねないから。アズサ、一つだけお願いがあるの、私の分まで多くの人を治してあげてほしいの。お願いね。
私のライバル、治癒師アズサ様。ミルヒーより。
ミルヒー様、重いよ。重すぎるよ。ミルヒー様のライバルなんて私は言えないよ。もっともっといっぱい教えてほしかった。一緒にいたかあったのに……。
私は、手紙を握りしめると小料理屋に戻って、女将さんに抱きついた。「ミルヒー様がミルヒー様が亡くなられた」
アリスも茫然としていた。女将さんは知っていたようだ。「アズサはミルヒー様のいったいなんなのかしら」
「私はミルヒー様の弟子です。誰が否定しようとも、私はミルヒー様の弟子です」
「アズサは、ミルヒー様の遺志を継ぐのね」
「もちろんです!」
「ミルヒー様と一緒に多くの人の治療にあたります」
「お師匠様、私もお手伝いいたします」
「アリス、ありがとう」
「女将さん、アリス、私は大丈夫だから心配しないで。でも今は一人で泣かせてほしいの。ワガママを言ってごめんなさい」
「アズサちゃん、いっぱい泣くと良いわよ」
「ありがとう、女将さん」
それから、食事も取らず、一人、部屋で私は泣き続けていた。
「お師匠様、先生方にお願いしてダンジョンに潜るのを少し延期してもらいましょうか」
「その必要はないわ。アリス、まだまだ、心が揺らいでいるけれど、お仕事をすれば側にミルヒー様がいつもいっらしゃる感じがするの。私のライバルが何をしているのかって、言われているみたい」
「ダンジョンに潜って多くの人を助けましょうね。それがミルヒー様の意思だもの」
「はい、お師匠様」
女将さんはいつものようにお弁当を作ってくれた。私の分とアリスの分も。「女将さん、今度こそ長くて一月、ダンジョンに潜ってきます」
「気を付けてね。素人の皆さんの引率だから、本当に無理しないでね」
「私は簡単には死ねなくなりましたから」
「アズサはいつも言ってたわよね。冒険者にとって逃げるのは恥じゃない。生き残ることが正義だって」
「はい、私の育ての親の口癖でした」
「必ず生きてここに戻ってきてね」
「了解しました。マイ、マジュステイ」行ってきます。
ダンジョンの入口で待つこと一時間。
「先生方遅いですね。お師匠様」
私は嫌な予感がしたので、私の周りにいる精霊にお願いして先生方を探してもらった。今は三階層を攻略中のようだ。人探しの魔術はできないけれど、私はお願いすれば精霊たちに探してはもらえる。
「アリス、先生たち三階層にいるみたい」
「あそこ、植物系のモンスターが多くて毒気が多い階層ですけど」
「早めに見に行った方が良いよね」
私たちは三階層に行った。先生方は植物系の魔物に体を巻きつけられて動きが封じられていた。一人の先生は魔物の毒を浴びて笑いながら踊っていた。
サポート役の従者は大荷物を抱えてまったくサポートに入れないでいた。魔物の毒を浴びた先生にはヒールをかけて正気に戻ってもらった。あとの処置はその先生にお任せした。
四階層はダークシープくらいしかいない、ダークシープの毛が防寒具の中に入れる素材なので、狩るのではなく、毛を刈るのだ。
初級冒険者たちの生暖かい目に先生方は晒されている。ダークシープ相手にファイアボルトにアイスランスで倒している。先生方にはどうも魔物の知識がないように思える。
「ごめんね」と言いながら私は初級冒険者たちに銀貨一枚づつを渡して回った。迷惑をおかけしたお詫び料だ。




