044 アズサ、五十階層で妖魔と対決する。エルフ対グリム
五十階層が全体が凍り始めた。グリムの魔術「コキュートス」が始まったのだ。
妖魔の根城らしき城も凍っていく。
「これで、妖魔が見えるようになったのだ」
「エルフがこの辺りに隠れているので、殴ってくるのだ」そういうとグリムが楽しそうに駆け出した。
「グリム様、いなくなってしまいましたけど、アズサさん、どうします」
「グリムがぶっ壊したあの扉から城の中に入りましょう」中はガランっとして、あちこちに氷の破片が散らばっている。おそらく、これは妖魔が凍ったものだと思う。
「お師匠様、私はどこまでもお師匠様とご一緒します」
「アリスは瓢箪を持って、ヒロシはメアリー王女から貰った槍試作品一号を持って、ないよりマシだと思うから」
「試作品一号ってこの槍大丈夫なんでしょうか?」ヒロシが不安がっている。
「あのう、僕が持つアイテムはなんでしょうか?」
「ごめんなさい、ないわ」
「そんなあ。僕だけアイテムなしなんて……」
「アズサさん、氷の柱がたくさんやってきました」
「ヒロシ、槍で突いてみて!」
「了解です。やったあ、この槍使えますよ。氷の柱をバラバラにできます」
「試作品一号ありがとう」
私たちは五十階層奥へ奥へと進んで行く。氷の柱から徐々に人の形になっていく。
「お師匠様、結界が張ってあって私もヒロシ君もここから奥に入れないです」
「アリス、瓢箪をちょうだい」
「アズサさん、槍は」
「槍はヒロシが持っていて、アリスをその槍で守ってちょうだい」
「了解です」
「お師匠様、策はあるのですか?」
「妖魔はお酒を飲むのよね。だったら考えはあるわ。大丈夫」
「あのう、アズサさん、僕、結界を通り抜けられるのですけど、どうしましょう」
「通り抜けられるの? それならついて来られるところまでついてきて」
「了解です」
「泉が見えますね。二カ所」
「えっ何処どこ?」
「右斜め前に一つとその奥に一つです。灰色のモヤがその辺りから湧き出してますね。湯気みたい」
戦士さんて霊体ではないのかって思ってしまった。私には全然見えない。
「アズサ、生きものではないものが近寄ってきてるよ」
「精霊さんたち、私に力を貸してください」
「了解です」
私の体に灰色のモヤがまとわりついている。私にも見えた。確かに結界が張られた泉が二つある。どちらが命の泉でどちらが知恵の泉かはわからないけれど。
私に灰色のモヤ、妖魔が巻き付いてくる。シールドも何も関係ない。妖魔が私の鼻から入り込もうとしている。誰かの手が、鼻に入ろうってした妖魔を掴んで捨てた。
「戦士さん、妖魔が掴めるの!」
「掴めるというか、払ったというか? うちは代々退魔師の家系ですから、この程度はできます。でもそれ以上は無理です。あてにしないでくださいね」
「アズサさん、本体がきました」
「へっ、ボワンナーレさん?」ウネウネしていてるというか、まさに幽霊って感じだ。私は瓢箪の栓を抜いた。鬼酒の匂いが周囲に立ち込める。ボワンナーレさんの姿をした妖魔が瓢箪に入った鬼酒を求めて近寄ってきた。
私は瓢箪を下に置き、後ろに下がった。ボワンナーレさんの姿をした妖魔が瓢箪から鬼酒を吸い上げて行く。すると妖魔の後ろの空間に小さな穴が空いて、その中へ妖魔が吸い込まれて行く。
穴の中から怒鳴りが聞こえてきた。「誰や妖魔を冥府に送った奴は! コイツら現世に戻られへんぞ。めっちゃ気持ち悪いんやけど」
「アズサさん、鬼酒に何を仕込んだのですか?」
「冥府直行キャンディー、妖魔にも効いて良かったわ」
「アズサさん、ヤバいのがきます。もの凄い魔力の塊が」
どーーんという落雷に似た音がした。そこにはタコ殴りにされたぼろぼろのボワンナーレさんと元気いっぱいのグリムがいた。
ボワンナーレさんは私の姿を見ると凄い形相で「貴様、殺してやる」と私に襲いかかってきたものの、「まだ、遊び足りないのか」とグリムが間に入って、一方的にボワンナーレさんを殴っている。
それ以上殴ったらボワンナーレさんが死んじゃうと思う。
「エルフ、お前に太古の神霊が張った結界が解けるわけがないだろう。泉の番人の妖魔に体を乗っ取られる未熟者の分際で」
「乗っ取られたのではない、私が自分の意思で、私の半分を妖魔の守護するここに残して、結界を解こうとしたのだ。その空いたところに妖魔が入っただけだ。私は妖魔を使役した!」
「その代償に何を支払ったのだ」
「……」
「アズサ、妖魔はどこに行った? あれはここの番人なのだ。いないとまずいのだ」
「すみません。冥府に送りました」
「アズサ、私と一緒に冥府に行くのだ」
私は膝から崩れ落ちた。まだ魔王のお守りをしないといけないのか。ゾンさんの気持ちが痛いほどわかった。
幕間の後第三部 帝国魔術学園です。




