041 アズサ、四十七階層、過去の世界に入る
ここはなんだろう。周囲、三百六十度、星々しか見えない。私は宙に浮いている。いや、私たちは宙に浮いている。
「綺麗だろう、星が生まれた過去の世界の記憶がここに映し出されている」とグリムが言う。
「星が生まれたですか?」
「今より星が少ないだろう」
「前に進めば時間が進むので、星やら惑星やらが増えてくる」
星と惑星の違いがわからない。私以外の人はわかっていそうなので尋ねられない。ちゃんと占星術を学ばないと恥ずかしい。
進むに従って光っている星が増える。その周りを回っている星が生まれてきてる。どうも光っているのが星で、その周りを回っているのが惑星ぽい。
「この辺りで神霊が生まれた。その次に悪魔が続いて、悪魔と契約した人種の祖先が魔族になった。別系統で神霊と契約した人種がエルフになっている。なかなか面白いだろう。私も魔族の歴史の授業で習って、びっくりしたのだ」
グリムが習いたての知識を私たちに教えてくれる。私にとっては有り難い。
「あそこで、白組と黒組に分かれて、派手に戦っている。そこにグリムがいた」
「あれは、初代様だ。私ではないのだ。第一次神魔人大戦だ。もうすぐ第二次神魔人大戦が起こるので楽しみなのだ」
起こらないでほしい。地上がめちゃくちゃになっている。エルフは神側で、魔族は悪魔側だ。ドワーフと人種はどちらについたのだろう?
「地上は焼け野原ですね」
「神も悪魔も不死なので、なんでもありなのだ。どちらの陣営も地上の生き物はまた勝手に増えると思っているからな。手加減はしないのだ」
「エルフが魔族を押しまくっていますね」
「エルフの精霊術はすでに完成していて、魔族の魔術はまだ発展途上だったからな。でも、接近戦に持ち込めば、純粋に腕力勝負になるから。エルフに勝ち目はない。だからこの時の魔族はひたすら突貫をしていたのだ。魔族の方が、エルフより増えるのが早いから」
「ドワーフと人種がいませんね」
「ドワーフは地下深く潜って中立を宣言していたから第一次神魔人大戦には不参加。人種は洞窟に隠れていた。無力過ぎてどちらの攻撃対象にも入っていなかったのだ。でも巻き添えで一番多く死んだのは人種なのだが」
第二次神魔人大戦を起こさせてはいけない。
「初代様は、神様にもう宣戦布告をしたのでしょうか?」
「した。私にはわかる。神側は嫌がっている。今は神の力が弱まっている。エルフの力も第一次神魔人大戦の頃に比べたら、大した力はない。悪魔側はサタンにレヴィヤタン、アザゼル、ベルゼブブ、それに初代様と私にアズサがいるので、この星がなくなるかもしれないのだ。過剰戦力なのだ」
「さらっと、私の名前が出てきてましたが……」
「気にしなくて良い。まだ先の話だ」
第一次神魔人大戦は神側の勝利で終わった。初代様が神アトリボスによって、半分に斬られた。初代様は半分に斬られても笑っている。
「初代様は魔族ではなく、堕天使だから不死なのだ。半分に斬られた初代様は、ダンジョンに入れられ、神のチート技で、初代様にマイルールを設定させて押し込めたのだ。アズサの今回の働きは殊勲賞ものだ」
「第二次神魔人大戦後の褒美は何が良いか考えてほしい。実の親に会いたければ会えるし、育ての親にも会えるのだ」
どちらにも会えなくて良いので神魔人大戦を起こさないでほしい。初代様の残り半分は魔木に吸収されて消えてしまった。グリムと初代様は一卵性双生児確という例えはある意味正しいと思う。難しいことは言えないけれど、わかりやすい例えだ。
「神は天界に戻り、悪魔は地獄に押し込められた。その後は人種が爆発的に増えて、地上を覆い、人種同士が土地を巡って戦争をする時代に突入したのだ。悪魔が人に取り憑くこともあれば、誘導する事もあったのだ」
「悪魔は、人の肥大化した欲望を美味しく感じるのだ」
「人の世界にも下級悪魔なら暮らしている。数は少ないが召喚に応じた中級悪魔も暮らしているのだ。悪魔は案外身近にいるのだ」
「レヴィヤタンが人種の世界に出てくるとか、今までなら有り得なかったのだ。それが出てくるとなると、初代様が起こそうとしている第二次神魔人大戦以外の計画もありそうで、ワクワクするのだ」
私はそれをグリムから聞いて暗澹たる気分になっている。アリスもヒロシも話を聞くのを放棄したみたいだ。




