036 アズサ、四十二階層でウォリアーバニーと戦う
真っ白な景色の中で真っ白いウォリアーバニーと現在戦闘中。白いウサギ連中が見えない。とにかく沢山いるのはわかる。グリムが愚痴っている「殴っても殴っても次から次へと襲ってくるので、嫌になる」と。
私のシールドにも沢山のウサギがくっついている。ヒロシと戦士さんがが剣で突き刺しては倒しているものの、やはりキリがない。
これが数の暴力か。ヒロシと戦士が疲れるとアリスがヒールをかけて回復させている。グリムから自分にもかけてほしいとおねだりされたので、私が、グリムにヒールを掛けた。「戦闘中はダメだ。気持ち良すぎて寝てしまいそう」って言われた。戦闘中に寝られてはとっても困る。
「皆さん、ご迷惑をお掛けすると思いますが、もうキリがないので、私、アズサがサンダーボルトを使用したいと思います。ダメと言っても使います。私の側が一番安全ですので、近くに寄ってください」
「サンダーボルト」相変わらず、落雷が止まらない。ウォリアーバニーはいなくなった。何となく地形も変わった感じがする。
「アズサ、お前のサンダーボルトは危険すぎる。お前はまったく魔力制御ができていない」とグリムから注意されてしまった。おジンとまったく同じ注意をだ。
「誰がワシの許可を得ず雷を操った。このミョルニルでその者の頭を打ち砕いてやる。まさに雷鳴のような声が聞こえてきた。
「ここはソーの領域だったのか。私の魔法を跳ね返したのもこれで納得出来る」
「グリム、ソーって誰なの」
「ソーは太古の雷神。ここは神の国を模したダンジョンだと思うぞ」
「私たちは神々と戦うの?」
「太古の神なので、すでに信仰が失われているから、大して強くないのだ。声がデカいだけなのだ」
「第一、神々を模したものだ。ここはすべて作り物だからな」
「作りもの、声がデカいだけ、この魔族の小娘がミョルニルで叩き潰してくれる」
どーーんと音が四十二階層中に音が鳴り響いた。雷鳴のような音がグリムがいたところにミョルニルが叩きつけられていた。
「グリム!」
ミョルニルにヒビが入っていく。砕け始めた。
「神器が砕けるなどあり得ない」
ミョルニルの槌の部分が粉々に砕けて、ソーは柄だけを持った、間抜けな姿になっていた。
「ソー、お前では私にとっては相手不足だ。はっきり言ってやる、パワーがなさすぎる」
ソーは怒りくるい、グリムを拳で殴ろとしては、グリムの動きについて行けず、ただ腕を振り回すだけで、神らしのカケラも見えなかった。
「アズサ、ソーの頭にサンダーボルトを落とせ。的が大きいから外しようがないだろう」
「雷神に落雷なんて効果がないのでは」
「大丈夫だ、ほぼ神気が消えている。心配するなソーは神霊ゆえ死んだりはしない。神罰を受けることもない、私が保証する」
「サンダーボルト」と詠唱したら、ソーの頭に落雷が直撃して、ソーは意識を失った。
「ソーも一応神なので、アズサ、お前は神を敵に回した。これでお前は私の同胞だ」
「グリム、謀りましたね」
「これで、私はアズサに安心して背中を預けることができるのだ」
「師匠、良かったのでは、これで魔王グリム様の信頼を勝ち得たのですから」
「でも、アリス、ダンジョンから出たら、私、神殿のお風呂に行けないじゃないの」
「アズサさん、神殿って風呂屋じゃないから、神殿の湯とは別だから」
「だったら問題はないわ。私、神殿で祈ったこともないし、お布施もしたこともないから」
「アズサさん、それって全然自慢にならないから、言わない方が良いよ」
「アズサ、あれだ、私の魔法を弾き返した生意気な神獣は」
「ユニーコーン。美しいですね」
「アズサ、何を言っている、角を生やした、白い馬ではないか」
「アズサさん、ユニーコーンがこっちにきますよ。どう見ても怒ってますね」
「私たちって神様を失神させているからね」
「アズサ、最初に言っておく、ユニーコーンの角はお前のシールドを貫く、ユニコーンの角でお前は刺される」
「グリム、どうしたら良いの!」
「どうしたら良いか? 私の魔法は弾かれる。お前のシールドは貫かれる」
「答えは、逃げる」
私は何枚も土壁を立ち上げて、ユニーコーンの邪魔をしながら逃げに逃げた。
ユニコーンに雷撃とかユニコーンをぶん殴るとかはできないもの。グリムが満面の笑みで逃げてるし、アリスはキャッキャ言いながら逃げてる。ヒロシはユニコーンに乗ってみたいとかつぶやいている。戦士さんは見えない。私も逃げているのに笑ってしまうのは初めての経験だ。
楽しかった。次の階層だ。




