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031 アズサ、三十八階層でヒドラに襲われる

 三十七階層の砂漠地帯を抜けると次は湿地帯に入った。少し進むとリザード族の集落に入ってしまった。リザード族の人が何か言っている。まったくわからない。


 ヒロシが身振り手振りでこの集落を通りたいって伝えたら、リザード族の人が手を出した。「通行料を支払えって」


 私はアリスに「盗賊さんたちから貰った砂金の袋」を荷物から出してもらい、手を出しているリザード族の人に渡した。


「通っても良いって。それと沼には近寄るなって言っているみたい」とヒロシが言う。リザード族の集落を通り過ぎると、私とアリスは大笑いしてしまった。


「何がおかしんだよ。俺だってけっこう恥ずかしかったんだから」


「ごめん、ごめん。本当に伝わっているとは思えなかったから」


「伝えようとする気持ちがあれば、言葉は通じなくても、わかり合えるもの」とヒロシが膨れっ面ながらちゃんとしたことを言ったので、私の笑いのツボに入ってまた大笑いしてしまった。


「あのさ、沼に近寄るなって、どういうこと」


「そこがよくわからないのだけど、沼に何かいるらしい」


「沼ってあれだよね?」


「沼に近寄らないで進むとしたら、森の中を通ることになるのだけれど」


「かなり遠回りですね。師匠」


「おそらく、丸一日はかかりそうね」


「アズサさん、沼の側を抜けますか? 俺としても何がいるのか知りたいですから」


「そうね、私のシールドは、ドラゴン以外は壊せないはずだから」


「大丈夫だと思う」私にしては慎重さを欠いた行動だったとこの後猛省することになる。


「師匠、空気が重いですね。息をするのが大変です」


「確かにそうね、このまま沼の反対側まで、何も出てこないことを祈るわ」


 沼に近づくと、呼吸が苦しい。空気を吸っても吸っても肺の中に入っていかない感じがする。そのため、歩くのが大変だ。アリスはふらふらしている。


「アリス、大丈夫」


「ここ、空気がとっても悪いです。おそらく、毒気が混じっています」


「ヒール」と私はアリスにヒールをかけた。


「師匠、やはり凄いです。元気が湧いてきました」


「アズサさん、沼に気泡が!」


 沼の中央から盛んに泡がブクブクと上がってきている。


「アズサさん、来ます」とヒロシが叫んだ。


 沼の中央から三つ首のヒドラが現れた。ここの空気がに毒気が含まれているのは、ヒドラの毒だろう。獲物を毒で弱らせてから沼に引きずり込むのか。しまった。シールドではヒドラの毒は完全には防げない。即死しない程度に弱めることしかできないない。私は私自身にヒールを常時かけられるので、問題はない。ただ、アリス、ヒロシ、見えないけどいるはずの影の薄い戦士の三人に繰り返し、ヒールを使うのは魔力的に無理だ。これは詰んだかもしれない。


「アリス、ヒロシ、いるなら戦士さんも、森に逃げて、沼から離れて!」


「師匠は?」


「私なら大丈夫。ごめん、私の判断ミスで、ちゃんと責任は取るから、私から離れて、お願い」


「アリス、森に逃げこもう。アズサさんにとって俺たちはお荷物なんだよ」


「ヒロシ君、師匠、ご武運を!」


「任せなさい。頭が三つの蛇になんか負けないんだから」


 アリスとヒロシたちは森に逃げ込んだ。ヒドラは私だけを警戒していたのが幸いした。


 ヒドラが毒を吐き出した。


「ウオール、トリア」ヒドラを取り巻くように三層の壁が現れた。ヒドラの毒は壁で遮られたけれど、空気中の毒の濃度が増した。私は自分自身にヒールをかけた。


 ヒドラがその三つ首を振り回して壁を破壊して再度、私に向かって三つの首から一斉に毒を吐こうとしている。


「ウオール、オクト、ハードソリッド、ライトニング」


 ヒドラを取り囲むようにして八層の壁が立ち上がり、土壁を鋼鉄化させた。私の場合、ライトニングにせよ、サンダーボルトにせよ、どこに落ちるか定かではない。また、威力もどうなるのかわからない。十三階層でワイバーンに当たったのは実はマグレだったりする。


 想定通り、沼に落雷が数発落ちた。ヒドラに当たらなければ倒すほどの効果はない。でも水の中を雷が広がるので、沼に落せばヒドラは感電するはず。死にはしないけれど。私が森に逃げ込めるだけの時間を稼ぐことが今回の勝利条件なので、これで十分だ。


 私は無事森に逃げ込み、アリスたちと合流できた。


「皆んな、危ない目にあわしてごめんなさい。油断があったと思う。シールドさえ張れば大丈夫だと驕りがあった。次はこんなヘマはしない。ごめんなさい」


「皆んな、生きてるから。でも、ちゃんと安全マージンはとってくださいね。アズサさん」


「そうするよ、ヒロシ」


「俺も何がいるのかって、興味に負けてしまって、お互い様ですけどね。俺も反省してます」


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